私が生まれて初めてバイトをしたのは、中学校2年生の冬休みだった。
私の通っていた中学校は、バイトの類は一切禁止であり、
もしも先生達に見つかったら職員室でお説教&反省文&下手すりゃ謹慎という
極々普通?の学校だった。
本来臆病者の私だが、この時は悪友(そう君だよK&Kくん)が
誘ってきたこともあり、自分1人だけやるんじゃないという勝手な理由で
自分を正当化し、禁断の果実とも言えるバイトをすることを決めたのだ。
さてバイトの内容だが、普段は清掃業を営んでいる人の家に伺い、
年末の棚卸&大掃除といった別に大人がわざわざ手を出すまでもないという
しょーもないものである。
最初に、掃除道具が山積みされている倉庫(っていうか、納屋かな?)の中で、
不要な掃除道具の除去&片付けを行った。
文章で書けばたったこれだけなのだが、なかなかこれが大変なのだ。
なにせ、決して広いとは言えないスペースに、これでもかっ!!というくらい
ブラシやらモップやらワックスやらが押し込まれているのである。
おまけに、屋外での作業である。真冬の寒さが身にしみる(涙)。
とりあえず、寒さを紛らわすため、必死に頑張って仕事した(俺って真面目(爆))。
しかし所詮は中学生のやることである。
不要品の仕分けだけでも半日を要したのだった。
ここで一旦昼食休憩。持参してきた弁当を食し、しばしの歓談。
すっごいくだらない話をしていたはずだが、あの時から15年近く
経過してるので覚えてるわけない。
さて、午後からは午前中の肉体労働とはうってかわって
事務処理の手伝いだった。
言われたとおりに、帳簿に伝票の金額を記入していく。
何にもわからん中学2年生にこんな重要な帳簿なんて書かせていいんかい?
と当時子供ながらに思っていたものだ。
午前中寒い中での肉体労働、午後は暖かい部屋での事務処理手伝い。
当然お昼ご飯を食べているので寝るな!と言う方が拷問のはずである(爆)。
うとうとしかけた時、遠くの方で消防車のサイレンが聞こえてきた。
それも結構数が多そうだ。
(あーあ、こんな年末に火事なんか起こして可愛そうに・・・。)
消防車のサイレンが眠気覚ましになり、周りに声をかけてみた。
(つ:つるぎ、奥:バイト先の奥さん、K:つるぎの悪友K&K)
つ:「サイレン鳴ってますね。結構音が近いし、ここからそう離れていない
場所が現場なんでは?」
奥:「こんな年末に火事起こすって大変ねー。」
つ:「なんか、火事の現場を想像しちゃいましたよ。」
K:「(周りを見まわして)なんか、そういえばこの部屋暑くない?」
奥:「えっ?まさか、うちが火事!?」
つ:「まさかとは思いますが、念のため台所見てきてはどうでしょう・・・?」
ダダダッと階段を駆け下りていく奥さん。
つ:「そういえば、昼飯食ってた時より絶対暑いのぅ。なんか様子へんやのう。」
K:「そやろ?俺なんか気になってたんだ。」
奥:「(台所の方向から)つるぎさーん、別に火事になってなかったですよーっ。」
つ:「ああ、よかったよかった。」
しかし、私はこの瞬間、窓の外にあるものを見てしまった
奥:「よかったぁ(胸をなでおろしながら奥さんが帰ってきた。)」
つ:「奥さん!!、窓の外見て下さいよ。あれ何だとおもいます?」
奥:「ちょっとつるぎさん!!どうしよう!!ちょっと家中見まわってきます。」
再びジェット機並の速さで階段を駆け下りていく奥さん。
K:「げっ!?あれ煙じゃねぇのか?
まさか、ほんとにこの家火事なんじゃ!?」
煙が気になり、窓に駆け寄って行く中学生2人。
そこで見た光景は、想像を絶するものだった。
つ:「なんだこりゃ?なんで
隣の家燃えてるんだぁ!!」
K:「おぇ、見なよ、消防車でかいと
(富山弁でたくさんの意)止まっとるじゃ!!」
つ:「これって、さっき遠くで聞こえとったサイレンの正体
じゃねぇの!?」
K:「ってことは、俺たち今まで
隣の家が火事だって気づかんと仕事してた
っていうことか!?」
ぼーぼー火は燃えている。
我々は火事の現場を10mと離れていない距離という特等席で
一部始終を観察していた(爆)。もう、仕事どころではない。
今になって思えば、何故消防署のオッサンたちは我々に
非難勧告
を出さなかったのだろうか(爆)?
いや、やっぱり全く火事に気づかなかった我々がオマヌケだったのだろう。
それより、
何故逃げなかったのだろう(爆)?
燃え移るとは考えなかったのだろうか?
結局、20分ほどで火災は鎮火し、怪我人も無かったようでほっとした。
その後は全て火災談義となり、
仕事を全くしなかったのは言うまでもない・・・。
半日ほどしか仕事してなかったのに、ギャラは5,000円ももらった。
中学生にしては大金であろう。
そして、今度もまた来てほしいと言う。
来てどうなるのだろう?また火事が起こるのでも
見たいのだろうか?(←不謹慎な奴)
何とも奇妙な体験したものだ。こんな体験、
しようと思っていてもできるものではあるまい。
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