留学生



高校1年生の夏
いつもの如く、授業が終わってからの清掃時間であった
当時の担任

あだ名:くまやん

なんだかニヤニヤしながら生徒たちに
何か言いたそうな顔をしているのである

私は正直、気持ち悪いと思った

40過ぎのオッサンである
私の高校は男女共学である
当然女子生徒もくまやんの表情を見ているのである
引いているのがはっきり感じ取れる

多分、後でくまやんの悪口が
叩かれたのは確実だろう


それはさておき、誰も相手にしなかったためか
くまやんの方から勝手にべらべら喋り出したのである

「世の中国際化が推し進められて
いるが、ついにその世論の波が

私のクラスにもやってきたのだ」

私には、ちょっと逝ってしまった
おっさんの戯言にしか聞こえなかった


「来るんだよ・・・留学生が・・・
しかも、パツキンのナオン!」

解説すると、金髪の女性という意味である
はっきり言って
死語(っていうより化石語)である!!

シカトしていた生徒たちも、流石に留学生という言葉を聞いて
視線をくまやんに投げかける

「年は18歳、父親は弁護士
母親はファッションデザイナーという
超お嬢様だ

名前は
ジャーマン・キラーっていうんだぞ!」


なんじゃそりゃ?ほんとにそれが女の子の名前なのか?
まるで、殺し屋みたいな名前じゃないか(爆)?
それにしても、なんとハイカラな家庭に生まれた人なんだろう・・・

留学生がやって来ると言う話は全校生徒の間で瞬く間に流れた
そして、緊急対策会議!?が開かれ
留学生の登下校の相手とか
どうやったら早く日本になじんでもらえるのかということを話し合った

そして・・・
留学生はやってきた

身長は180cmくらいはある長身で
割とがっしりした体格をしていた(デブではない)
髪はブロンドで、ちょっと天然パーマがかかっている
もちろん、日本語はほとんど喋れない・・・
でも、笑顔がキュートな女の子だった

彼女の自己紹介で彼女の正確な名前が判明した
キラ・ガーマンである

ジャーマン・キラーとは
エライ違いである!


キラは芸術の時間、私と同じ美術を専攻していた
その時の題材は、兎のスケッチである
生きた兎がモデルとして我々の前に置かれ
みんなから結構可愛がられていた
ちょうどオス、メスが一匹ずつ籠の中に入れられていた

動物である

オスとメスが一緒の場所に
入れられている時に行う行為は

一つしかあるまい・・・
その行為を我々の面前で
惜しげも無く2頭のウサギは
見せてくれた


爆笑する生徒一同
その中には、顔を真っ赤にしてその行為を見ていたキラの姿もあった
その姿を見て、ああ人間のリアクションって万国共通だったんだなって
間抜けなことを思ったりしたものだ・・・

その後、誰かと恋のロマンスに発展したという浮いた話も無く
キラは1年間の留学生活を終えてカナダへ帰国して行った

結局キラと話をしたのはほんの一言二言程度であったが
私の心に思い出として残っている
つるぎが生まれて初めて接した外国人
今頃は何をしてるんだろうか・・・
母親の手伝いと称してモデルにでもなっているのだろうか・・・?






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