お医者さん
一部の方はもうご存知だと思うが、私つるぎは東京にて
1998年の大晦日にその日のディナーの下ごしらえ中に
かぼちゃを切ろうとしたところ
勢い良く自分の親指の肉をスライサーで
カットしてしまうという大間抜けなことをしてしまっている
大したことないだろうとタカをくくって
最初の内はバンソウコウでも貼っておけば血は止まるだろうと
思っていたものの、一向に止血する兆し無し・・・
結局友人たちに病院に連れていってもらい
結果3針も縫う羽目になってしまった・・・
当然しばらくは医者通いしなければならなくなり
東京の病院から地元の病院へ蔵替えを余儀なくされた
普通のお医者さんは、威厳が有ってどこか
近寄りがたいようなところがあったのだが、今回出会った
お医者さんは、今まで抱いていたイメージを一蹴する
強烈なインパクト持った人だった
ちょっと緊張した面持ちでお医者さんに傷を見せると
おおー、オラ(私)も同じような傷があるんだよ
と言って私にそのお医者さんが過去に怪我をした個所を
ここだと言いながら、縫った傷を見せてくれたのだ
この傷は痛いんだよなぁ・・・
指先は最も痛みを感じる場所だから痛いでしょ?
と、思わず笑ってしまうような台詞を連発!!
緊張していた私を一気に和ませてくれた
これ飲まれ(飲みなさい)、痛み止めの薬だから
と、そのお医者さん自ら薬をもってきて私に差し出してきた
抜糸はなるべく遅い方が良いと思いますよ
痛くて申し訳ないですけど、なんとか我慢して下さい
どうもすみません
と、まるで私が患者とは思えない言葉にちょっと感動したものだ
この時点で私はこのお医者さんが大好きになり
これからの通院生活が楽しみにさえ思えたものだった
時は流れ・・・1週間後、ついに抜糸の日がやってきた
友人達からは抜糸は縫合ほど辛くないから安心して
とアドバイスが事前に有ったため、それほど緊張していない
するとお医者さんが登場すると・・・
いやぁ、今日は嫌だなぁ
僕、抜糸が一番嫌なんだよなぁ
また痛い顔を見なきゃいけないんだからなぁ・・・
えっ!? 痛くないんとちゃうの?
(私の心の叫び) )
じゃあね、これからやりますけど痛いですからね
半端じゃなく痛いですからね
歯食いしばって頑張るんだよ、いいね!
は・はい・・・
何時の間にか私は2人の看護婦サンに肩を押さえつけられていた
一体今から何が始まるというのだ・・・
いくよっ!
次の瞬間、脳天に突き上げる感覚がつるぎを襲う
はううううううっ!!
(声にならない叫び)
いやはや、額にはびっしりと脂汗が浮かぶ
激痛に顔を歪めうずくまっていると
良く頑張った、偉いぞぉっ
と私の親指をしっかりと握るお医者さんがいた・・
(あの・・・結構痛いんですけど・・・)
その後、キシロカインゼリー(表面麻酔薬)を塗ってもらったため
暫くすると痛みも引いてきた
さ、これで僕の仕事は終わったよ
今日はお金いらないからね
餞別としてこれもって行くと良いよ
これからもきっと痛むだろうからさ
といつもの鎮痛剤を私に渡してくれた
痛みは有ったものの、心は晴れやかな気分だった
そして今度から、何か怪我した時は迷わず
このお医者さんのお世話になろうと思ったものだ
しかし、別れ際に言われた言葉が今でも忘れられない・・・
痛い思いしたくなかったら
怪我しちゃ駄目だよ
・・・はい その通りです・・・
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