店頭アンケート

つるぎがまだ東京で社会人している頃の話だが、その日は初めて愛車(トレノ)を購入し、
契約書に捺印してきた楽しいある日の出来事
夕方になったので食事にでも行こうと友人と2人で府中の町を徘徊していた時の話である
何を食べたいわけでもなく、ブラブラと歩いていると前方からスーツでビシっとキメた女性2人がこちらに声を掛けてきた

すみませーん、今キャンペーンを行っておりまして今アンケートに
ご協力頂けると記念品を差し上げております
簡単で短時間にて終了しますのでご協力願えませんか?


と質問が書かれた下敷を見せてきた
この時点で完全に
キャッチセールスとは見抜いていたが、時間が有って暇だったし、
友人とも目が合ってお互いに暇つぶしでもしようかという意思の疎通が出来たので、ついていく事にした

案内されたのはアンケート依頼していた道に隣接するビルで雑貨屋が多く、人の入りはソコソコ有ったと思われる
その一角に宝石店があり、そこに通された

さてキャッチセールスのお約束だが必ず友達と離れた席に座らせ
一対一の状態に持ち込もうとするのだが、今回も
例外に漏れずその通りだったのは言うまでもない

さて、最初につるぎと相手してきたのはやる気の無さそうなおねーちゃんだった
つるぎが適当に質問に答えていると、途中で店の奥に引っ込んでしまった
しばらく一人でボーっと友人の方に目をやると、店員がショーケースから宝石を取り出して友人に見せているところだった
やっぱりキャッチかと思っていたら、最初の人よりもっと若いねーちゃんが相手してきた
このおねーちゃんは商売っけが無いのか、下手なのかは不明だが世間話ばかりして、全然宝石の話をしてこない
当然
これも手口だってことをつるぎは重々承知しているので適当にあしらっていたその頃、
ちょっと年老いた店長らしきおばちゃんが話にからんできた
するとついに
「将来一緒になる人のために今のうちからダイヤを勝って置けば
それがお守りになる」


だの

「昔、ダイヤは自分の一番大切な人に送る形見だった」

だのオセンチ系で責めてくるのだが、つるぎにはそんな手は全く通用しない
そしてとどめに

「今ならこのダイヤが月々僅か5万で手に入る」

と、最初のアンケートからは程遠い話の内容になったきた
しかしつるぎは

「今日車買ったばかりだから、これからローン組まないといけないんで、そんなもん買う余裕なんかないよ、
なんだったらここで、車の契約書見せてあげようか?」


というと
一変に商売っけがなくなったのか、店長らしき人はそそくさといなくなってしまった
残されたおねーちゃんと、友人の話が終わるまで世間話をしていいたのだが、その時に出るわ出るわお店の裏話

・自分はこの店に勤めてまだ3日目
・先日お店に強盗が入って高価な宝石を盗まれ、犯人はまだ捕まってない
・仕事かったるいので辞めようと考えている


それらの話はみんな面白かったので退屈しなかったが、
ふと友人の方に目を向けると何時の間にかさっきの店長らしき人と押し問答を始めていた

「(店)じゃあ、いくらなら買う???」
「(友)この程度ダイヤモンドじゃ精々30万!!」
「(店)ふん、馬鹿言わないでよ、どう見積っても120万よ」
「(友)俺はここまでなら買ってやるって譲歩してやってるのに、そんな態度ならもういいよ」
「(店)こっちだって貴方には売れないわ。もっと安くしてあげることもできたのに!!」


お店には17時くらいに案内されたものの、外に出てきたのは19時30分をまわっていた
すっかりお腹が空いた二人は、さっきの店頭アンケートを肴に美味しく食事したのだった

後日談だが、そのキャッチセールスをした店は数ヶ月後に閉店していた・・・
当然だろう

キャッチの際に色褪せした下敷なんか見せたら
インチキキャッチしてることがバレバレやん






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