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平成21年12月22日

 −三千大世界−

 NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」を観(み)た。本木雅弘君が秋山真之を好演しているのを見ながら今年の3月、本木君と東京で食事をした時のことを思い出していた。このドラマの撮影の最中であったらしく「天気晴朗なれど波高しです」と心境を語っていた。

 以前松山へ行った時、子規記念博物館を訪れたことがあった。館内には秋山真之と正岡子規が交わした書簡が何通か展示されてあった。その中に海軍軍人として米国へ留学していた真之から脊椎(せきつい)カリエスの病床に伏せる子規宛(あて)の写真入りの年賀状があった。その賀状にはいかにも無二の親友を思う気持ちが込められた句が添えられていた。

 〈遠くても五十歩百歩小世界〉

 病床にあって動けなくとも、友よ、米国へ来ている僕などより君が住んでいる世界はずっと大きいよ、と力づけている。友を思う優しさが伝わってくる。良寛に〈淡雪のたちたる三千大世界、またその中にあわ雪ぞふる〉という句があるが、良寛も五合庵にあって三千大世界を見渡していた。今日世界の情報が一瞬のうちに伝えられる時代にあって、なぜか人々は小世界に安住しているように思えてならない。

 「坂の上の雲」を観ていて、明治の軍人であれ詩人であれ政治家であれ、小世界と大世界の双方を見渡していたような気がしてくるのだった。

 作家・詩人 青木 新門


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