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| 平成22年7月24日 |
身長はわずか10センチほどで正義の味方。でも、一寸法師ではない。ヒントは、目玉に体がついたユーモラスな風ぼうだ。「キタロ〜」という甲高い声で昭和の子どもたちに親しまれた。
水木しげるさんが描く妖怪は独創的だが、とりわけ不思議な存在がこの目玉おやじだ。かつて地上を支配した幽霊族の生き残り。いつもは茶わんのお風呂に漬かっているが、いざとなれば息子の鬼太郎たちの精神的な支えとなって悪の妖怪に立ち向かう。
県立近代美術館で開催中の「名画パレード展」を訪ね、ある作品に目が留まった。目玉おやじならぬ“目玉気球“。19世紀の画家、オディロン・ルドンの版画だ。天をじっと見つめる「一つ目」が気球となって空高く昇っていく。物質から解き放たれた精神を象徴しているのだろう。
通好みの作品だ。かつて絵描きを目指していたという水木さんも、やはり影響を受けていた。出合いは10代のころに見た美術全集。気球の絵は後に、目玉おやじを発想するのに役立ったとエッセー「ルドンと私」で明かす。
妖怪が出そうな暗い夜を見つめてきた漫画家は、ルドンが描く黒の微妙な変化にも感心する。「人間が晩年に感ずる絵なのかもしれない」と水木さん。厳しく孤独で、どことなく漂う寂しさが心に響くようだ。岐阜県美術館のコレクションを味わう同展は、水木漫画の源泉に触れる機会でもある。