縄 胎 杯(じょうたいはい)
砂 田 正 博
10年ほど前に、内側に麻布を1枚貼り、荷造り用麻紐を巻いて素地を作る「縄胎コップ」を作った事があり、現在も使っています。
「中尊寺金色堂と平安時代漆芸技法の研究」という書物に、仁和寺の「宝相華迦陵頻伽蒔絵塞冊子箱」(国宝)が、x線検査の結果、麻布2枚で出来ている可能性があると書いてあるを読み、麻布2枚で乾漆素地を作る事に挑戦しました。
乾漆(麻布5〜8枚ほどを貼り重ねて素地を作る技法)では、素地の狂い(動き)を止めるため、私は6,70度ぐらいに加熱する熱処理(約100時間)をします。
麻布2枚で作った素地を熱処理したとき、亀裂が走りました(熱源のランプに近い所と離れた所との温度差が大き過ぎた為)が、高台を作るために巻いていたラミー糸(魚網に使われている。苧麻)のところには何の変化もありませんでした。
内側に麻布を1枚貼り、その周りにラミー糸を巻いて素地を作るのは、紐の垂直方向の接着が弱いのを、麻布をバイアス(斜め)に貼る事で補強し、漆と結びついたときに脆くなる麻布を紐で補強しようという考えからです。
(木綿などは、漆を芯まで吸いこみ、非常に脆くなります。麻布は、芯までは漆が吸いこまれない分、繊維の柔らかさ・強さをかなり残します)
麻で出来ている素地は、熱の伝わり方が遅いので、手に持つときに持ち易いはずです。
テレビでソムリエの田崎さんが、ビールは上が狭い方が泡立ちがよいと言っていたのをヒントに「縄胎杯」をまた作る事にしました。熱いお茶を飲む事も出来ます。
かなり自由な形を作る事が出来るのが、木地の漆器との違いだと思います。
作 家 歴
☆ 日本伝統工芸展(人間国宝を頂点とする展覧会。文化庁が主催に加わる、唯一の公募展)
1993年(平成5年)「乾漆食籠」初出品初入選
1998年(平成10年)日本工芸会正会員認定(入選4回という規定により)
2007年(平成19年)10回目の入選
☆ 日本伝統漆芸展(日本工芸会の漆芸部会展)
1993年(平成5年)「乾漆食籠」初入選
2001年(平成13年)第18回展「乾漆食籠」
☆ 日本伝統工芸富山展(日本工芸会の富山支部展)
1991年(平成3年)「乾漆盛器 朱と黒」奨励賞
1992年(平成4年)「乾漆朱漆食籠」日本工芸会賞
1993年(平成5年)「乾漆食籠」日本工芸会富山支部賞
1994年(平成6年)「乾漆盛器」富山美術館賞
1995年(平成7年)「乾漆食籠」奨励賞
1998年(平成10年)「乾漆食籠」日本工芸会賞 (
1999年(平成11年)「乾漆盛器」
☆ その他の展覧会
となみ野美術展 出品委嘱
小矢部の作家展 招待
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