Castle

ウィザードリィ世界に於いて人々が生活する場所は様々である。中でも大きな規模を誇り、大多数の人口を保持しているのが、トレボー城塞リルガミン市に代表される城塞都市である。ここではその2大城塞都市の様相に迫ってみる。

参考文献…ウィザードリィのすべて(ベニー松山著 JICC出版)


トレボー城塞

castle1 近隣諸国の王家にしてみれば、まさに最悪の厄災に値する”狂君主”トレボーに支配された、世界でも最大級の規模を誇る城塞都市である。
 直径約2.5kmのほぼ円形の敷地は、ぐるりを堅固な城壁に囲まれており,その中央には地上高100m程のキングズタワーを備えたトレボー王の居城が、さらに高く堅牢な第2の城壁によって守護されている。
 その上、王城内部は四方の尖塔から放出される魔法障壁の力場によって、複合城壁の役目をする結界が張り巡らされ、マロール、もしくは魔法品よる転移を完全に弾き返してしまう、進入すらままならない難攻不落の砦なのである。
 さて、今でこそ列国最強とうたわれる軍隊を擁し、大国の中心となっているトレボー城塞であるが、城塞都市自体の歴史は比較的新しい。始めはトレボー王家領土内の一都市に過ぎなかったこの街の中心に王城が移されたのが約1世紀程前で、その際に大幅な区画整理がなされた。周囲8kmにも及ぶ外壁が完成してから半世紀も経っていない。そしてそれ以後、現在のトレボー王の時代、相次ぐ戦争により領土は大幅に拡大され、大量に流入してきた領民のお陰で都市は急速な発展を遂げた。
 構造上の特徴として、王城を中心に東西南北へと放射状に伸びる街路が揚げられる。これは四方に交易ルートが存在する為に計画的に造られた大通りであり、それぞれ外壁に設けられた城門を経て街道へと通じている。自然とこの4本のメインストリートは様々な商店、酒場、そして旅人目当ての宿が立ち並ぶようになり、特にギルガメッシュの酒場やボルタック商店のある南大路は道の両端に露天商が陣取る一種の市場として、最も活気溢れる通りとなっている。
 また、外壁が建造されて以降、目覚しい発展により膨れ上がった人口対策として、ほとんどの建物が増築を繰り返しているのもその特徴の一つである。市壁に囲まれて限られた土地を有効に利用する為の苦肉の策として、現在、平屋はほとんど存在しない。特にあまり裕福とはいえない階層の集まる北の住居区画は建物の密度が高く、元々区画整備が行き届いていなかったこともあり、狭い路地がまるで迷路のように入り組んでいる。土地拡張が困難な城塞都市の宿命と言うべき光景であろう。
 南大門の外側には一辺を城壁に預ける形で訓練場があり、そのすぐ側に”ワードナーの迷宮”への入口がある。入口付近には常時、見張りの一隊が置かれており、地下1階の妖魔が地上に出てくるのを防いでいる。また、ここには強力な魔法感知の結界が施されており、“魔除け”が地表に近づけばすぐに衛兵が駆けつけるよう準備が整えられている。これは間違っても“魔除け”が他国に渡らないようにする為で、持ち帰った冒険者は否が応にも“魔除け”を取り上げられることになる。

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リルガミン市

castle2 リルガミン王国の首都、リルガミン市は、数ある城塞都市の中で最も長い歴史を有している。旧時代、魔法文明の末期に成立し、文明終焉の際、破滅を免れた数少ない都市の一つであり、それ以後もあらゆる外敵の侵略を拒んできた。
 永きに渡り、街を守護し続けてきたのは、神話の時代に鍛造されたといわれる、『ニルダの杖(Staff of Gnilda)』の力である。精霊神ニルダを奉る寺院に安置されたそれは、あらゆる攻城兵器や呪文を避ける巨大な力場で都市を包み込み、あまつさえ、わずかでもリルガミンに害意を持つ者の侵入を阻む力をも有していた。戦争になっても攻められ負けることはありえない訳だが、この杖の力を悪用しようとすると効力を発揮しなくなるという特性があるため、自ずとリルガミンは無敵ながらも平和を愛する王国となり、その名声を高めていったのである。
 しかし溯ること数世代、闇の心を持って生まれた悪魔の化身−魔人ダバルプスにより、都市は内部から崩壊した。リルガミンで生まれた悪に対して、杖の効力は働かなかったのだ。ダバルプスは闇の軍勢の助力によりわずか一夜にして王位を簒奪したのである。その後、生き残った王家姉弟マルグダ王女、アラビク王子は、再び王都を取り戻すことになるのだが、ダバルプスの呪いは王城の地下に迷宮を造り上げ、己の最期に、王子の命、杖、そして王子が身につけていた伝説の武具をも道連れにした。そしてこれらの出来事は街から守護神の加護を失わせたのである。
 その後、”ワードナーの迷宮”で名を馳せた冒険者達の活躍により杖は取り戻され、ニルダ神の恩恵は再びリルガミンに注がれることになる…以上がリルガミン市に伝わる伝承の一部である。
 さて、この都市における構造上の特徴は、まず第一に計画性を持って建造された為、トレボー城塞等の後々都市化した街とは違い、極めて整然とした町並みであることだろう。旧文明の面影を残す建造物は古代を忍ばせる趣があり、旅人や行商人の間では一度は訪れるべき古都との評判が高い。また、街の北側に建てられているニルダ寺院も多くの参拝者を集めてきた。
 地勢的には海と山がすぐ側にあり、王城の南西の広場には山海の珍味等の特産品を集めた市が立つ。特にアルビシアの植民地から送られてくる品物を求めて、多くの商人がやって来る為、近隣では最大の市場となっているようである。
 新たに建て直された王城は、あまり尖塔等が目立たないおとなしい造りで、当時唯一の王族の生き残りとして王位にあったマルグダ王女の好みが反映されている。またこの王城の敷地の下には、ダバルプスの生み出した地下迷宮が残されているが、ニルダの杖が取り戻されてからは妖魔のたぐいも全て消え去り、冒険者の勇気を称える為に廃虚のまま保存されているようである。
 なお、神話の時代から宝珠を守り続けている、巨竜エル’ケブレスの山は、街の北に広がる荒野の中央にある。徒歩で2時間ほどの道程だが、当時、冒険者には特別に無料の送迎馬車が用意されていた。

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