【軍における女性上官の敬称は Ma'am】


はじめに:Sir/Ma'am問題の調査結果の公開にあたって

皆様はじめまして、無銘と申します。「軍における女性上官の敬称は Sir と Ma'am のどちらが正しいか?」という問題につきまして、yonetch様のご好意により、私の調査した全内容をここに公開していただけることになりました。下記の文章は、最初にyonetch様にお送りした指摘メールを増補・改定して、論文形式にまとめ直したものです。調査の全容に興味がおありの方は、続けて下の文章をお読みください。

要約

「軍では女性上官に対する敬称として Sir を用いる」との主張は、おそらく誤りです。各種資料によると、「軍の慣習も一般社会と同様であり、女性の上官に対しては Sir でなく Ma'am を用いている」という主張が、より事実に即していると思われます。

(根拠1)軍公式の儀礼では、女性上官に呼びかけるときは Ma'am または rank + last name を用いるよう定めている。
(根拠2)軍人・元軍人の発言によると、女性上官は日常的に Ma'am と呼ばれており、Sir と呼ばれることはない。
(根拠3)「女性上官は Sir と呼ぶ」との主張については、それを裏付ける根拠の信頼性が、(根拠1・2)と比べて相対的に低いように思われる。


序論

「一般的に女性に対する敬称は Ma'am であるが、軍には独自の慣習があり、性別にかかわらず上官は Sir と呼ぶ」という話をときどき耳にします。ネット上でも見ますし、そう書いてある文献もあるようです。しかし、筆者が個人的に調査を行った結果、「軍でも女性上官は Ma'am と呼んでいる」との結論に達しました。本論1章では、筆者の主張を裏付ける資料を報告します(根拠1・2)。本論2章では、筆者の主張に反する資料を報告するとともに、その内容の信頼性を評価します(根拠3)。本論3章は余談であり、一般社会における Sir/Ma'am の用法について、少々ご紹介いたします。


本論・第1章「軍でも女性上官は Ma'am と呼ぶ」

(1-1)軍公式サイトの情報 :

下の(1.1.a - 1.1.c)では、明確に女性には Ma'am を用いるよう教えています。また、(1.1.a - 1.1.j)の全てで、上官に対する敬称として Sir/Ma'am を併記しています。女性も Sir と呼ぶルールならば、Ma'am を併記する必要はありません。つまり、女性は Ma'am と呼ぶ規則と理解すべきです。逆に、「女性上官は Sir と呼ぶべきである(または、Sir と呼んでも良い)」と記載する軍公式サイトは、筆者の調べた限りでは在りませんでした。
(1.1.a) ぺンシルヴァニア大学 陸軍ROTC(アメリカ陸軍公式)
Male officers are address by "Sir", female officers by "Ma'am",, or you may address either by their rank and last name; i.e., "Major Smith".
【筆者訳】男性士官は"Sir"、女性士官は"Ma'am"と呼ぶ。もしくは、階級とラストネームを使用する(例:"Smith少佐")。

出典:http://www.psu.edu/dept/armyrotc/customs.htm

【注】ROTC(Reserve Officer Training Corps; 士官候補生課程)とは、一般大学に設立された士官教育コースを指します。解説がこちらにありましたので、以下に抜粋します。
(前略)ROTCは日本語で陸軍士官候補生課程のようなことを意味します。アメリカには大きな州立大学や私立大学にROTCが軍事機関として存在します。一般の大学内に所在しながらその雰囲気は全く別物です。通常構内では一般の学生を目にするのに対し、ROTCの敷地内に一度入ると、その光景は私服から軍服にガラッと変わります。(中略)ROTCの士官候補生たちは、軍事科学と呼ばれる45の軍事教育教科からなるジャンルを4年間で全て終わらせることを義務付けられています。(中略)ROTCにはこれらの授業に加え、週3回と週末に、実技訓練、演習があります。(中略)そして見事に第4学年時を終了し、大学卒業資格であるBachelor Degreeを修めると陸軍少尉に任官します。
(1.1.b)マサチューセッツ大学 陸軍ROTC(アメリカ陸軍公式)
Use of Sir or Ma'am: A soldier in addressing a military superior uses the word “Sir or Ma’am” manner as does a well bred civilian speaking to a person whom he wishes to show respect.
【筆者訳】Sir および Ma'amの使用:軍で上官に話しかける兵士は、"Sir" または "Ma'am" という単語を用いる。その使い方は、育ちの良い市民が人様に話しかけるとき、尊敬の意を示すのに用いるやり方と同様である。

出典:http://www.umass.edu/armyrotc/pages/section3a.htm

(1.1.c)シル基地(Ft. Sill)下士官アカデミー(アメリカ陸軍公式)
When speaking with a female officer, the term "Ma'am" instead of "Sir" is used.
【筆者訳】女性士官に話しかけるときは、"Sir" の代わりに "Ma'am" という用語を使う。

出典:http://www.geocities.com/Pentagon/Quarters/9283/page4.html

(1.1.d)ペンシルヴァニア大学 海軍ROTC(アメリカ海軍公式)
C. Military courtesy.

Responses to senior officers

"Yes, sir/ma’am."
"No, sir/ma’am."
"Aye, aye sir/ma’am." (I understand and will carry out your order, sir/ma’am.)
"I do not know, but I will find out, sir/ma’am."
"No excuse, sir/ma’am." (Accept responsibility, don't blame others.)
【筆者訳】軍における儀礼 ―上官への答え方―

「はい、Sir/Ma’am」、「いいえ、Sir/Ma’am」、「了解しました、Sir/Ma’am」(=ご命令を理解いたしました。これより実行します、Sir/Ma’am)、「わかりません。調べてまいります、Sir/Ma’am」、「弁解はいたしません、Sir/Ma’am」(他者を責めずに責任を受け入れる)

出典:http://dolphin.upenn.edu/~nrotc/ns101/LESSON04.html

(1.1.e)サンノゼ州立大学 空軍ROTC(アメリカ空軍公式)
REPORTING IN/OUT PROCEDURES

7 RESPONSES

Yes Sir/Ma'am
No Sir/Ma'am
Sir/Ma'am, I do not know
Sir/Ma'am, May I ask a question
No excuse, Sir/Ma'am
Sir/Ma'am, May I make a statement
Sir/Ma'am, I do not understand

【筆者訳】報告の仕方 ―7つの返答―

「はい、Sir/Ma’am」、「いいえ、Sir/Ma’am」、「Sir/Ma’am、私は知りません」、「Sir/Ma’am、質問してよろしいですか」、「弁解はいたしません、Sir/Ma’am」、「Sir/Ma’am、ご説明させていただきます」、「Sir/Ma’am、仰る事がわかりません」

出典:http://www2.sjsu.edu/depts/AFROTC/cadet/reporting.html

(1.1.f)アメリカ沿岸警備隊公式
It is also appropriate to accompany your salute with "Good Morning Sir or Ma'am" depending on the situation. In the Navy and Coast Guard, Officers below the rank of Commander (0-5) are usually addressed as "Mister" or "Miss" depending on the situation. Officers who are at the rank of Commander or above are usually addressed by their rank i.e.. "Good Morning Commander Jones" or "Good afternoon General Smith". You can never go wrong by using "Sir" or "Ma'am", but it is a nice touch if you can properly address a senior officer.

【筆者訳】敬礼するとき、"おはようございます、Sir/Ma'am" などの言葉を添えるのも適切なことである(状況による)。海軍および沿岸警備隊において、階級が中佐より低い士官は、通常 "Mister" または "Miss" と呼ばれる(状況による)。中佐かそれ以上の階級の士官は、「おはようございます、Jones中佐」「こんばんは、Smith大将」のように、階級で呼ばれる。"Sir" または "Ma'am" を使っておけば、決して間違いは起こらない。しかし、上官に適切に呼びかけることができれば、その方がセンスがよい。

出典:http://www.dirauxwest.org/saluting.html

(1.1.g)イギリス海軍兵学校(イギリス海軍公式)
Military and Social Manners

Forms of Address

Courtesy applies to all, regardless of rank or status, whether civilian or military. Officers of senior rank are addressed by their juniors as "Sir" or "Ma'am", as are lecturers at BRNC.

【筆者訳】軍および社会における儀礼 ―他人への呼びかけ方―
礼儀作法はあらゆる人に対して適用可能である。それは階級・地位にかかわらず、軍人か市民かによらない。イギリス海軍兵学校の教官のように、話しかける者よりも高い階級にある士官は、"Sir" または "Ma'am" と呼ばれる。

出典:http://www.britannia.ac.uk/britannia%20guide%20for%20young%20officers.htm

(1.1.h)イギリス空軍公式
Any officer (and all non-commissioned ranks) address a senior officer as "Sir" or "Ma'am".
【筆者訳】全ての士官(および准尉・下士官)は、より上位の士官を "Sir" または "Ma'am" と呼ぶ。

出典:http://www.raf.mod.uk/info/faqs_1.html

(1.1.i)カナダ学生海軍教練隊
When you address an officer, you call them by their rank and name, or ma'am or sir.
【筆者訳】士官に話しかけるときは、"階級+名前"、"Sir"、または "Ma'am" と呼ぶ。
【注】学生海軍(陸軍・空軍)教練隊とは、12歳から18歳の生徒を対象に行われる軍事教練プログラムです。組織的にはカナダ軍と無関係ですが、教育プログラム・教官・訓練費用などは軍が提供しており、その目的の1つは「カナダ軍についてより良く学ぶこと」となっています。これらのことから、その教育内容は、本物の軍に準ずるものだと思われます。

出典:http://www.cadets.ca/seacad/resources-ressources/phase1/1_e.asp

(1.1.j)カナダ学生空軍教練隊
ADDRESSING AN OFFICER OR NCO

Air cadets shall address officers by their rank followed by the officer's sirname, eg, Lieutenant Brown. In speaking to an officer, it is common practice to use the expression “Sir” or “Ma'am”, and not the rank and sirname.
【筆者訳】空軍教練生は士官に対し、"士官の姓+階級"(例:Brown中尉)のように呼びかけるべきである。士官と会話するときには、"姓+階級" ではなく "Sir" または "Ma'am" を用いるのが普通である。

出典:http://www.cadets.ca/_docs/air/hdbk1_e.pdf (Chapter2-25参照)

【補記】イギリス陸軍、カナダ陸軍、オーストラリア軍については、今のところ公式情報を見つけられておりません。

(1-2)イギリス国防省からの公式回答:

情報自由法(Freedom of Information Act)に基づき、イギリス国防省は質問を受け付けています。 そこで Sir/Ma'am 問題について直接問い合わせたところ、下の回答を頂きました。要約すれば、イギリス陸軍・海軍・空軍の全てで Ma'am を用いるそうです。
Q1: How do you address a female superior officer in armed forces? "Sir" or "Ma'am"?

Female officers in the armed forces are addressed as Ma’am.
【筆者訳】Q1: イギリス軍では女性の上官をどのように呼びますか? Sir ですか Ma'am ですか?
(回答)軍では女性士官は Ma'am と呼ばれます。

Q2: Are there any differences among the British Army, the Royal Navy, and the Royal Air Force as for Q1?

No. All of the Armed Forces use the same way of addressing male and female officers.
【筆者訳】Q2: Q1に関して、陸軍・海軍・空軍で違いはありますか?
(回答)いいえ。全ての軍において、男性士官および女性士官への呼びかけ方は同じです。

Q3: If the answer of Q1 is "ma'am", is it out of the question that a subordinate say "Yes, sir!" to his female superior officer just to emphasize "Yes"?

Male officers are addressed by "Sir", female officers by "Ma'am",, or you may address either by their rank and last name; i.e., "Major Smith". “Yes, sir”, should not be used when addressing a female officer.
【筆者訳】Q3: Q1の回答が Ma'am だった場合、部下が女性の上官に対して、単に "Yes" を強調するために "Yes, sir!" と発言するのは、とんでもなく失礼なことなのでしょうか?
(回答)男性士官は "Sir"、女性士官は"Ma'am" と呼ぶべきであり、あるいは階級+ラストネーム(例:Smith少佐)で呼んでも構いません。女性士官に話しかけるときは "Yes, sir" は用いるべきでありません。

質問フォームアドレス:http://www.mod.uk/publications/foi/foirequest.htm


(1-3) 軍人・元軍人による解説・スピーチ・投稿記事 :

(1.3.a - 1.3.b)は身元の明確な軍人による発言です。(1.3.c - 1.3.f)は自称軍人による発言ですが、民間人がわざわざ軍人を騙る理由はないと思われますので、本物と見なしました。これら全てにおいて、「女性上官は Ma'am と呼ぶ」ことになっています。
(1.3.a)元アメリカ空軍上級曹長による解説記事
U.S. Military Salute

"Reporting Indoors"

(前略)He approaches within two steps of the officer’s desk, halts, salutes, and reports, "Sir (Ma’am), Private Jones reports."

"Saluting Upon Boarding Naval Ships"

When military personnel (of any service) board U.S. Navy ships, either as an individual or as a unit leader, they salute according to naval procedures. (中略)When saluting the officer of the deck, request permission to board, "Sir (or Ma'am), Request permission to come aboard." The officer of the deck will return the salute. When leaving the ship, (中略)request permission to leave, "Sir" (or Ma'am), Request permission to go ashore."

【筆者訳】アメリカ軍における敬礼 

―室内で報告を行うとき―
(前略)士官の机から2歩の距離まで近づき、立ち止まって敬礼し、「Sir (Ma’am)、Jones二等兵が報告いたします」のように述べてから報告を行う。

―海軍の艦船上での敬礼―
軍人がアメリカ海軍の艦船に乗るときは、その乗船が個人としてのものであれ、部隊長としてのものであれ、海軍の形式にしたがって敬礼を行う。(中略)(乗船時には)甲板上の士官に敬礼し、「Sir (または Ma'am)、乗船許可を願います」のように述べる。船を去るときには、(中略)「Sir (または Ma'am)、退艦許可を願います」と述べる。

出典:http://usmilitary.about.com/cs/generalinfo/a/salute_2.htm
http://usmilitary.about.com/cs/generalinfo/a/salute_3.htm

(1.3.b)アメリカ空軍最先任特務曹長によるスピーチ
(前略)Chief Master Sgt. Daniel Keane, Air Combat Command's command chief master sergeant, said something to the effect of the importance of knowing the 10 most important words to know to be successful in the Air Force. (中略)

He said the most important words for a military member to use to be successful are: "Yes sir," "No sir," "Yes ma'am," "No ma'am," "Please" and "Thank you."

【筆者訳】(前略)航空戦闘軍団付の最先任特務曹長である Daniel Keane は、空軍で成功するために知るべき10の単語の重要性について話した。(中略)彼は、軍人が成功するために最も重要な言葉は次のものであると述べた:「はい、sir」「いいえ、sir」「はい、ma'am」「いいえ、ma'am」「お願いします」「ありがとう」

出典:http://www.findarticles.com/p/articles/mi_prfr/is_200207/ai_1752585910

(1.3.c)元アメリカ陸軍士官による投稿記事(SF Webサイト"SCIFI.COM" )
"Officers Aren't Always Sirs "

(前略)Unless you are trying to insult the officer, you never call a female officer "sir." (中略)
While sci-fi, specifically Battlestar Galactica and Star Trek, does not represent the modern military, they clearly borrow the rank structure and chain of command from today's military, why not borrow the correct form of address as well?
【筆者訳】「士官、必ずしも"Sir"ならず」 (前略)敢て侮辱したい意図がないのであれば、女性士官を"sir"と呼ぶことがあってはならない。(中略)SF、特に宇宙空母ギャラクティカとスタートレックにおいては、現代の軍のやり方を反映していない。しかしそれでも階級構造や指揮系統は明らかに今日の軍のそれに倣っている。なぜ、女性士官の呼び方は正しく引用しないのだろうか?

出典:http://www.scifi.com/sfw/issue349/letters.html

(1.3.d)アメリカ海兵隊員による投稿記事(SF Webサイト"SCIFI.COM" )
"Military Females Deserve Respect"

(前略) During my six year in the Marines, you never addressed a woman officer as "sir." They were always addressed as "ma'am." Only male officers were addressed as "sir." In my encounters with Navy personnel, it was the same way.
【筆者訳】「軍の女性にも当然の敬意を」 (前略)私は海兵隊に6年いたが、女性士官が"sir"と呼ばれたことは一度もなかった。必ず"ma'am"と呼ばれていた。"sir"と呼ばれるのは男性士官だけである。海軍士官と会ったときも、それは同じだった。

出典:http://www.scifi.com/sfw/issue409/letters.html

(1.3.e)アメリカ海軍軍人(MIDN Moore)による投稿記事
MIDN Moore writes:

We in the modern Navy refer to female officers of higher rank as "ma'am" and male officers of higher rank as "sir." However, Janeway alludes to current Starfleet protocol in 'Caretaker' where it is appropriate to refer to seniors as "sir" regardless of gender. She tells Paris and Kim that she prefers "Captain," and "ma'am" "in a crunch." Some of my female superiors would be a little annoyed if that were the case today, but I guess it works in the 24th century.
【筆者訳】MIDN Moore の発言: 私は海軍におりますが、女性の上官には "ma'am" 、男性の上官には "sir" と呼びかけます。 しかしながら、Janeway は 'Caretaker' において艦隊の規約について言及しており、そこでは性別にかかわらず上官を 'sir' と呼ぶのが適切な行為とされています。彼女はパリスやキムに「自分は艦長と呼ばれるほうが好みであるが、緊急時には "ma'am" でもかまわない」と述べています。このようなやり方を現代の軍がとっていたとしたら、私の女性上官の中には少しばかり戸惑う人もいると思います。しかし、24世紀においては、それで上手くいくのでしょう。

出典:http://www.slipups.com/items/5670.html

(1.3.f)ベトナム帰還兵(nachtengel)による投稿記事
Viet Era Vet here (yes, I'm THAT old) if I called a female officer "Sir" she'd thrust her breasts in my face and scream "Do I look like a "Sir" to you?!?!" proper reply to that was full attention and yelling "Ma'am, No Ma'am!"
【筆者訳】ここにベトナム帰還兵(そう、私はそんな年寄りです)がいます。もし私が女性士官のことを "Sir" と呼んだら、彼女は私の顔を自分の胸に押し付けて、「あなたには私が "Sir" に見えるの!? 」と金切り声を上げたことでしょう。それに対する適切な返事は、精一杯気をつけの姿勢を取って「Ma'am、いいえ、Ma'am!」と叫ぶことだったはずです。

出典:http://forums.kingdomofloathing.com/viewtopic.php?p=
663572&highlight=&sid=34ce2c6eef4db12f11f3895a964b2004


(1-4) 一般の解説サイト:

軍による公式な保障は受けていませんので、内容に誤りが含まれている可能性はあります。
(1.4.a)Military-net.com における解説
Q. When addressing a female officer, what term is used other than rank?
A. Ma'am.
【筆者訳】質問:女性士官に呼びかけるとき、階級以外に使える言葉はなんですか?
回答:Ma'am です。

出典:http://www.military-net.com/education/mpdcustoms.html

(1.4.b) Military.com における解説
<Military Career Tips>
Never offer an excuse. Your commanding officer or NCO doesn't want to hear your excuse unless they ask for it. Any reason you may offer will be treated as an excuse. Yes Sir/Yes Ma'am (or Sir yes Sir / Sir yes Ma'am) is always the best response.
【筆者訳】<軍での成功の秘訣>
決して士官に対して弁解してはならない。司令官や下士官は、彼ら自身が釈明を求めた場合を除いて、言い訳されるのを好まない。あなたが提示するいかなる理由も、言い訳と見なされる。「Yes Sir/Yes Ma'am」(または「Sir yes Sir / Sir yes Ma'am」)が常に最良の返答である。

出典:http://www.military.com/Recruiting/Content/0,13898,rec_step10_after_tips,,00.html


(1-5)軍人のご友人・ご家族からの情報:

2箇所の英語勉強掲示板で質問(それぞれ別の内容)したところ、現役軍人の関係者の方から情報を頂きました。(1.5.a)の回答者はアメリカ海軍士官の奥様、(1.5.b)の回答者はアメリカ海軍軍人のご友人です。どちらも「現役軍人の方に直接確認したところ、女性上官には Ma'am を用いると言われました」という内容でした。
(1.5.a) 「"Sir"の用法に関する質問」、投稿者「無銘」、記事番号10310
Q. 初めまして。"Sir"の使い方について質問させていただきます。女性に対して "Yes, sir."と言うのは大変失礼なことだと思っていましたが("Yes, ma'am."を用いるべき)、辞書には下の用例が載っております。

goo辞書:〔米話〕(…)ですとも ((Yes 又は No を強める))
講談社英和中辞典:〔話〕性別とは無関係に肯定または否定の強調語。Yes, sir! そうですとも No, sir! とんでもない

そこで、以下の質問にお答えいただけないでしょうか。

1) Native speakerの方が会話するとき、上の用例は一般的なものなのでしょうか?
2) 女性に対して強調の意味で"Yes, sir!"と答えた場合、失礼な発言だとはみなされないのでしょうか?
3) アメリカ海軍では、女性の上官に呼びかけるときも伝統的に"Sir"を用いるそうです。 (アメリカ陸軍では"Ma'am"を用いる)。このような事例は、他の組織でもあるのでしょうか?
A1. うちの主人は海軍ですが、未だかつて女性に対して(例えそれがCaptain以上の人であっても)海軍人がSirと言っているのを聞いたことがないです。それから、間違っても怒鳴られることもないと思いますよ。アメリカ生活長いですが、間違って言うのは多々見たことありますが、それに対して気分を悪くする人というのも見たことないです。陸軍人の友人も多いですが…
A2. 私の思い過ごしだと申し訳ないと思い、Naval Academy出身で今でも現役で軍人をしている主人にこの件について聞いてみましたが、やはり女性にはSirは使用しないそうです。
【注1】 A1, A2 は、同一の回答者(Julie様)によるものです
【注2】 この質問をした時点では、(2.a)の情報に基づき、「アメリカ海軍では、女性の上官に呼びかけるときも伝統的に Sir を用いる」と思っていました。現在では、アメリカ海軍も基本的に Ma'am を用いると考えています。

出典:http://bbs3.sekkaku.net/bbs/eikaiwa.html(現在、ログは流れており、確認不能です)

(1.5.b)「"Sir yes Ma'am"の文法的解釈」、投稿者「nemo」、記事番号18387 
Q. Military.com(軍人向けキャリア・教育情報サイト)というところに、下記の文章があります。

<Military Career Tips>
Never offer an excuse. Your commanding officer or NCO doesn't want to hear your excuse unless they ask for it. Any reason you may offer will be treated as an excuse. Yes Sir/Yes Ma'am (or Sir yes Sir / Sir yes Ma'am) is always the best response.

ここで返答の模範例として "Sir yes Ma'am" が挙げられておりますが、この "Sir" は文法的にどう解釈すべきでしょうか?自分としては、下の2つくらいしか思いつきません。

(可能性1) yesの強調語 (了解の意思を特に強調したいとき、"Sir yes Ma'am"を用いる)
(可能性2) 単に注意を引くための呼びかけ ("Ma'am yes Ma'am"にすべきようにも思えますが)
A1. 答えの前と後ろ両方に"Sir"をつけるのは軍の習慣なので、特に一番目の"Sir"と二番目の"Sir"に違いはないのでは? 強いて言えば呼びかけ(可能性2)に近いと思います。"Sir yes Ma'am"になっているのは、昔女性が上ランクの軍人に少なかったため女性であれ"Sir"と呼ばれていたののなごりでしょう。でも、アメリカ生活は長くとも軍隊の文化にそれほど詳しくないので間違っていたらごめんなさい! レスが付いていなかったようなのでできる範囲でお答えしました。
A2. 海軍出の友達がいたのを思い出し、その人の経験はどうだったのか聞いてみました。 ―"Sir, yes, Sir!" は"boot camp"と言われる基礎訓練(体を徹底的に鍛える、又、軍隊精神をたたきこまれるハードな訓練です)の時と、あとは何か失敗しておこられている時くらいしか使わない。"Sir"を二回言うのは相手が自分より上のランクだということを強調している。 ―"Sir, yes, Ma'am" は聞いたことがない。"Ma'am, yes, Ma'am"もぎこちないから言わない。 ―普通は"Yes, Sir."か、"Yes, (ランク名)." を使う。女性に向かって"Yes, Sir."と言うと叱られる可能性があるが、"Yes, Ma'am."ならそれはない。 ―細かい規律は軍の部門(海軍、空軍など)によって違う。 とのことでした。女性のオフィサーはやはりMa'amかランクでよばれるみたいです。でも、昔、女性も"Sir"と呼ばれているというのをどこかで読んだ覚えがあるんですよね。友達はそんなことないって言ってましたが。あまり答えになっていなくて恐縮です。
【注1】 A1, A2 は、同一の回答者(さくらさく様)によるものです
【注2】nemo は、筆者(無銘)の別ハンドルです。

出典:http://otdi1.jbbs.livedoor.jp/137589/bbs_tree(記事番号検索により、該当記事が出ます)


(1-6) フィクションにおける事例:

映画 『空軍大戦略』("Battle of Britain"。1969年製作(英))の作中で、女性軍人(英空軍)が Ma'am と呼ばれているシーンがあるそうです(ミリタリーファンサイト「T−KEYのみりたり〜なぺーじ」掲示板で、Takeahero様に教えていただいた情報)。ただ、この映画は未見で、実際に確認していません。また、yonetch様によると、『トップ・ガン』『ア・フユー・グッドメン』では、女性軍人は Ma'am と呼ばれているそうです。


本論・第2章 「軍でも女性上官は Sir と呼ぶ??」 :

本論・第1章に反し、「女性上官は Sir と呼ぶ」ことを支持する資料もあります。(2.a)(2.b)はそれなりに信頼できそうなソースですので、アメリカ海軍についてのみ「女性上官は Sir と呼ぶ」ケースがあるかもしれません。ただし、1章の資料((1.1.d)(1.3.d)(1.3.e)(1.5.a)(1.5.b))の方がより信頼性が高いように思われます(海軍公式サイト、もしくは海軍軍人からの直接情報)ので、飽くまでもレアケースであろうと推測します。(2.c)は情報源が明示されていないため信頼が置けず、(2.d)は例外的事例のように思われます。これらのことから、原則的には女性上官の敬称は Ma'am だと、筆者は考えます。
(2.a)アメリカ陸軍軍人による情報
<945> ちな
(前略)アメリカ陸軍に所属する元ルームメートに回答してもらいました。 彼の答えによると、陸軍の中での女性への敬称は"ma'am"だそうです。 しかしながら、彼がいうことには、海軍では女性の上官に対しても"sir"を使うとのことでした。 star trekではたぶんこの海軍の制度をそのまま適応したのでは? というのが彼の答えでした。 軍は軍でも海軍のみの制度のようです。 ちなみに警官数人と、Nasaにいる知人にも同じ質問をしてみましたが、女性に"sir"を使う組織はのは海軍以外にはないようです。
【私見】 上のちな様のご友人はアメリカ陸軍所属とのことなので、海軍に関する情報については、信頼性が劣る可能性があります。

出典:http://www.script1.sakura.ne.jp/cgi/kbbsold/bbs.cgi?function=log&logno=19 (レス939, 940, 945, 946参照)

(2.b) 海軍小説作家のインタビュー中の発言
Here is something most people don't realize. It is just as proper to call a female officer, sir, as it is to call her, ma'am. I didn't even want to try using that. I was sure if I did I would sooner or later have some little old guy in Tulsa emailing me complaining: “On page 59, line 6, so & so called Commander such & such, sir.”
【筆者訳】ここにほとんどの人が気づいていないことがある。女性士官を sir と呼ぶのは、彼女を ma'am と呼ぶのと全く同様に適切なことなのである。私は、sir を使ってみたいと思いさえしなかった。もしそんなことをしたら、遅かれ早かれタルサ(筆者註:オクラホマ州北東部の都市)あたりのご老人が電子メールを送りつけて、「59ページの6行目で○○氏が△△中佐のことを sir と呼んでいるのは変じゃないか」と不満を述べるだろうと思い込んでいたのだ。

【私見】 プロの作家ですから、海軍への取材や資料集めはしていると思いますので、ある程度の信頼は置けます。ただし、情報源が明示されていないので、誤った資料に基づく発言の可能性は排除できません。

出典:http://rebeccasreads.com/interviews/authors/090901_harris_interview.html  

(2.c)各種掲示板の投稿記事
1.GraphX 氏, Pi 氏の発言

GraphX writes:
In the military (present & future) officers are called "Sir" no matter the gender. Just as with Ensigns being called "Mister"

Pi writes:
It really doesn't matter if they get called Sir or Ma'am, Because some Captains are sirs and others are Ma'ams, and on a ship, they are interchangeable. In real life, some female army captains and such are called sir.
【筆者訳】GraphX 氏の発言:
軍では(今日でも未来でも)、性別にかかわらず士官は sir と呼ばれます。少尉が "Mister" と呼ばれるのと全く同じです。

Pi 氏の発言:
Sir と呼ぼうが Ma'am と呼ぼうが、全く問題になりません。なぜなら、船上では sir と呼ばれる艦長もいれば ma'am と呼ばれる艦長もおり、それらは相互交換可能だからです。現実世界においても、sir と呼ばれる女性艦長(あるいはそれに類する人)が一部に存在します。

出典:http://www.slipups.com/items/5670.html


2.Methuselah Jones 氏の発言
In the Navy, both traditionally and by regs, female officers are to be addressed as "Sir". It's rarely done, though; most of the time they are addressed as "Ma'am". I tried addressing a female officer as "Sir" once and got a nasty look.
【筆者訳】海軍では、伝統と規定の双方により、女性士官は "Sir" と呼ばれることになっています。しかしながら、実際に "Sir" を用いるのは稀であり、ほとんどの場合 "Ma'am" を使用します。私は以前、試しに女性士官を "Sir" と呼んでみましたが、険悪な視線を向けられました。

出典:http://www2.usenetarchive.org/dir72/File292.html


3.正体不明氏の発言
概要:「個人的に Sir と呼ばれるほうを好む女性軍人もいる」 (記録不備により、原文不明)

出典:どこかの掲示板(英文)。記録不備により、現在は出典不明。  


【私見】GraphX 氏、Pi 氏、Methuselah Jones 氏、正体不明氏による発言のいずれも情報源が明示されていません。信頼性は評価不能です。
(2.d) 映画 「愛と青春の旅立ち」(原題 "An Officer and a Gentleman")のラストシーン
Foley: Congratulations Ensign Seeger.
Seeger: Thank you, Sir.
Foley: Gunnery Sgt, Ensign Seeger...
Foley: ...Sir.
・海軍士官学校の卒業式のシーン。
・Foley軍曹(男性)は訓練教官で、Seeger新任少尉(女性)は教え子。
・教育課程では、SeegerがFoleyを"Sir"と呼んでいた。卒業したので、ここではSeegerの方が上官。
【私見】最後のセリフで、Seeger(女性)が"Sir"と呼ばれています。ここでFoleyが言いたいのは、「学校では私が上の立場だったが、今は貴女が上官です。"Sir"と呼ばれるべきは、貴女なのです」ということです。ここで"Ma'am"でなく"Sir"にしているのは、"Thank you, Sir."という発言を踏まえて、「貴女に"Sir"を返す」という意味合いを示すためと思います。つまり、このシーンはあくまでも例外的事例と見なすべきであり、「軍では女性上官を Sir と呼ぶ」ことの根拠にはならないと、筆者は判断しました。

【筆者註】このシーンについては、「赤松健作品総合研究所」管理人のぴえろ様から情報提供いただきました。


本論・第3章 「一般女性に "No/Yes, sir!" と言うとどうなるか??」(余談)

(3-1) Sir の特殊用法:肯定・否定の強調としての Sir :

アメリカ口語限定の用法として、「No/Yesの後に Sir をつけて、否定/肯定を強調する」というものがあるようです(辞書によっては書いてありませんが、いくつかの英和辞典とオンライン辞書に載っています)。「No/Yes, sirree!」と書いても同じ意味になります。これは性別無関係に使用可能とのことなので、女性に対してアメリカ人が「No/Yes, sir!」と発言した場合、この用法である可能性もあります。ただし、辞書には "US Informal" とあるので、軍人が上官と公式に話すときには、原則的に使用しないと思います。


(3-2) 女性に Sir というと怒られるかも…… :

一般には、女性に対して「Yes, sir!」と発言した場合、叱られる可能性があります。(1.5.a)のJulie様は、「アメリカ生活長いですが、間違って言うのは多々見たことありますが、それに対して気分を悪くする人というのも見たことないです」と書いておられますが、ネット検索すると、「間違って言って怒られた」体験談がいくつか見つかります。気難しい方の場合、「私が男に見えるのか!」とお怒りになるのでしょう。
(3.a) ネットで見かけた経験談
女性の先生に対して”Yes,sir”と言ってしまい、厳しく(やや感情的に?)叱られた友人がいます・・・。

出典:http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=1202934


昔英語の女性教師にYes, sir!と言って、そういう時は「イエスマム」だと諭されましたw。そのマムはずっとmomだと思っていたのですが、Madamの省略形Ma'amなんですね・・・。

出典:http://www.tokkou.com/modules/pukiwiki/index.php?cmd=
diff&page=%5B%5BIlarien%2F2004-12-20%5D%5D


とあるMMORPG(懐かしい響き)で、アメリカかイギリス(忘れてしまった)の方と一緒にプレイしたときの話です。ある会話の流れで、"Yes, sir!"と言われたのですが、私は女キャラ(装備とかでわかりにくくなっていた)を使っていたので、「男じゃないよ!」(英語)と言ったのです。そしたら、普段日本人以外からはなかなか聞けない"sorry"を使った、もの凄い丁寧な謝り方をされた思い出があります。 つまり、女性に対して"sir"(男性への敬称)を使うということは、あちらの人にとってもの凄く失礼なことのようです。

出典:http://blog.livedoor.jp/iruris/archives/25484807.html


謝辞

まず最初に、調査資料を提供してくださいましたサイトの運営者の方々にお礼申し上げます。また、筆者のささいな疑問に親切にお答えくださいました Steve Jackson 氏(イギリス国防省の担当者の方)にも感謝の意を捧げます。さらに、Julie様、さくらさく様には、貴重な情報を提供してくださいましたことに厚く感謝いたします。映画「空軍大戦略」についてお教えくださいましたTakeahero様、「愛と青春の旅立ち」のラストシーンについて情報提供してくださった「赤松健作品総合研究所」管理人のぴえろ様にもお礼申し上げます。そして何より、私の調査結果を発表する場を与えてくださいましたyonetch様に、最大の感謝を捧げたく思います。皆様、本当にありがとうございました。