警官とつるぎ
今から9年前の夏・・・
当時東京都府中市に住んでいた私は18歳の時から
関東方面の海水浴場で泳いだことが無かったせいもあって
非常に海に飢えていた・・・
当時車を所有してはいたものの
週末に一度乗るか乗らないか程度の
完全なオブジェと化しており
勿体無い気持ちで一杯だった
そこへちょうど私が東京での社会人時代に
最もつきあいの会った友人から電話があった
明日どこか遊びに行こうという内容だったのだが
勿論
海へ行く
ということで即決してしまった
最初友人は近場の江の島辺りで泳ぐのだろうな・・・と思っていたらしいのだが
よもや
白浜(静岡の伊豆半島の先端)
まで足を運ぶとは夢にも思わなかったらしく
また私も
白浜が府中からどれだけの距離が
有るのかも知らずにいたのだから
おめでたい奴である
友人から
遠いよ!!
と何度も念を押されるので仕方なく電話の掛かってきた
その日の夜(22時くらい)に府中を出発する
初めて長距離ドライブをすることもあって
最初はちょっとどきどきしながらだったが
慣れてくるに従って元来あまり夜に強くない体質が応えてか
徐々に睡魔に襲われて来る・・・
やばいなぁ・・・と思いつつも気力をふりしぼって
ひたすら運転していると事件は起こった
国道一号線を走行中にとある交差点にさしかかったのだが
ちょうど交差点を渡る寸前で信号が黄色→赤色に変わりそうだったものの
急停車する方が危険だと判断した私は
そのまま交差点をつっきってしまった
その直後・・・
ウーッ
とどこかで聞いたことのあるサイレンが鳴っているではないか
ふとルームミラーで後方を確認すると
赤いランプを点灯させた
白と黒の色に
桜の紋所が入った
特殊車両がいるではないか!!
始めはどこかで事件でも起きたんかいな?
くらいにしか思っていなかったのだが
そこの ○○−○○(車のナンバー)
止まりなさい!!
と言われてから初めて私の車が対象になっていたことに気付いた
車を路肩に寄せて警官を待っている間
なんでこの程度のことでつかまらなあかんのじゃ!
今の場合は止まる方が危ないだろうに!!
と動揺するよりもむしろ激怒していたのだが
警官は意外な反応をしてきた・・・
「今のは十分止まれたはずだよ
最近事故が多いから
この先十分注意して走行してね」
とたったこの一言だけで
違反切符を切るどころか
免許証提示も
求められなかったのだ
唖然とする私と友人
しかも決して喧嘩腰で話してくるでもなく実に
温和で紳士的な態度で話してくるのだ
「はい、分かりました
どうもすみませんでした」
と自然に素直な回答をしてしまったのだ
言い方一つでこうも違うのか・・・と今まで抱いていた
横柄=警官 ってイメージが吹き飛んでしまった
サイレンを鳴らされた経験は今にも後にもこれ一回だけだが
非常に印象に残っている・・・
世の中の警官があの時のような人ばかりだったら
もっと平和なのになぁ・・・
と思うのであった
実はこの話にはまだ続きがある
パトカーは我々に注意した後
我々よりも先に路肩から離れて車を発進させたのだが
しばらくしてから我々も車を走らせると
約5分ほど走った先で再び別の車を止めていた
同じパトカー&警官の姿があった
しかしながら、今度は悪質なドライバーだったらしく
運転者と思われる人物がパトカーの後部座席に座っていたので
おそらく違反切符を切られているのだろう・・・
誰にでも甘いのではない・・・
この光景は見ていて実に爽やかだった
このような事件があったおかげで睡魔は完全に消え
我々は白浜の白い砂浜目指して車を走らせるわけだが・・・
この先もこのまま平穏無事に
過ぎたわけではなかった・・・
白浜へ へ続く・・・
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