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富山縣西砺波郡正得村七社      大谷元様   軍事郵便
           満州国チチハル停車場指令部   大谷辰男

お便り二通共受取りました 皆お達者の様子何よりです 僕も至極元気です 間々便りを切らすは無精のせいですから腹は立てゝも心配は無用 弘子の件先方もあれまで懇請せらるゝは身に過ぎたる知遇僕は別に異存はありません 唯今だとお祖母さん母さん大変ですね 僕が帰ったら本気に働きます 出来るだけはしてやって下さい 今度の便りには日本晴が続いて安心しました それに稲扱も目鼻がつき増産挺身隊の方や村の方々のお蔭で麦蒔も終った故安心しました 挺身隊の奉仕なんか今年が初でせう 丁度僕が来たあと、さうなってすまないですね まして僕が満州で鍋の蓋の如く肥えているんですからね 米の供出は大分沢山割当ありましたか? こちらは寒いです 朝なんか道行く人がふうっふうっとはく息が白く丁度を吸いながら歩いているみたいです 此の間馬をぶつとばして行くのを見ましたが、馬のはく息が丁度発動機前のたんこぶから煙を吹き出す様でした 日陰の溝なんかは十一月へ入ってから氷ったまゝです しかし人間は案外外環境になれるものです まして入るには尺余の壁、二重の硝子戸にかためた家に赤くペチカのもゆるあり 出るに全身毛皮の外タウ帽長靴手袋あり 全く話に聞いた以上で少しも寒いこと知らずです 何卒御安心 そちらこそ皆大事にして下さい            では又
                                      辰男より
  皆へ

草冠に、良・・・たばこ

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