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読売新聞研究。(「流通」の視点で。)

* お詫び: 作図作業が間に合わず、記述と図示との差異が見られ
ます。予めご了承下さい。記述の方が最新の情報を反映しています。
又、現在読売新聞東京本社管内では管轄の県庁所在地に限って
12版地域でも13版を頒布すると言う「13版化政策」を行っていますが、
現在の所筆者の確認した範囲内のみ記述していますので、この点も
ご承知置き下さい。

1. 始めに

日本国内には様々な特色を持った新聞社が多数ありますが、その中でも全国に展開している
「全国紙」は朝日・毎日・読売・日経の4紙です。(「産経」も全国紙に含める統計もありますが、
「産経」は北海道では発行されておらず、「中日」天下の東海地方でも殆ど読まれていないので
全国紙の定義には沿わないと判断しました。)

その中で「読売」は最も部数が多く、他社にはない「北陸支社」を持っているので本編に最初に取り
上げる事にしました。その他の新聞についても順次紹介していく予定です。

* 「区分け」とは?
  新聞は生き物です。時々刻々と新しいニュースが入ってくるに従って新聞にも新しい記事が掲載
  されていきます。しかし、朝刊・夕刊共に配達時間が限定されていますので、配達先によって締切を
  設定せざるを得ません。そこで「版」と言う呼称で配達先によって締切時間を設定しています。原則と
  して数字が大きくなる程締切時間が遅くなります。現在の所「14版」が最終版です。但し選挙速報など
  が入る場合は特別に締切を遅くし、15版以降が出る場合もあります。これは筆者が全国各地を旅行
  中に駅の売店などで新聞を購入して調べたものですが、一部日本新聞協会の「新聞年鑑」及び
  「データブック 日本の新聞2002」、「全国新聞ガイド2002年版」を参考にさせて頂きました。また、
  これまでのフィールドワークの経験から幾つかの面白い現象を発見しましたので、最後に「エピソード
  ・豆知識」として紹介します。

2. 読売新聞の本社・支社構成(印刷所の所在地、下線付は他社委託印刷)

@ 東京本社(東京都千代田区)
(東京都港区・東京都江東区・東京都北区・東京都世田谷区・東京都府中市・神奈川県横浜市鶴見区・
神奈川県横浜市瀬谷区・埼玉県川越市・茨城県水戸市・茨城県東茨城郡茨城町・群馬県藤岡市・栃木県
栃木市・青森県弘前市・福島県郡山市・宮城県仙台市宮城野区・新潟県新潟市西区・愛知県清須市)
@-1 北海道支社(北海道札幌市中央区)
(北海道北広島市・北海道帯広市)
@-2 北陸支社(富山県高岡市)
(富山県富山市)
@-3 中部支社(愛知県名古屋市中区)
(愛知県清須市)

A 大阪本社(大阪府大阪市北区)
(大阪府大阪市北区・大阪府茨木市・大阪府高石市・京都府八幡市・兵庫県神戸市北区・香川県坂出市・
岡山県岡山市南区・広島県尾道市)

B 西部本社(福岡県福岡市中央区)
(福岡県北九州市小倉南区・佐賀県鳥栖市)

図1.読売新聞本社・支社別区分け図


3. 東京本社の「区分け」
朝刊・夕刊セット発行地域
(*下の「版」は朝刊の版であり、夕刊の「版」は朝刊の「版」から10を引いた数です。これは本支社を
問わず共通です。但し下線が引いてある地域は夕刊の「版」は朝刊の「版」から11を引いた数になり
ます。)
14版(最終版) 東京都(多摩地域の一部・伊豆諸島・小笠原を除く)、神奈川県川崎市・横浜市の
          一部、東京都伊豆諸島(朝刊のみ配達若しくは翌朝朝刊に夕刊を挟んで配達)
13S 東京都多摩地域の一部、神奈川県(川崎市・横浜市の一部を除く)、千葉県中西部、
    千葉県南部・東部、埼玉県(北部・秩父地方を除く)、埼玉県北部・秩父地方、茨城県南部
    常磐線沿線、茨城県北部常磐線沿線常磐線沿線以外の茨城県南部群馬県高崎市・
    前橋市周辺栃木県南部・宇都宮市周辺静岡県山梨県大月市・甲府市周辺
統合版地域(朝刊のみ)
13版(最終版) 青森県、秋田県秋田市街地、岩手県盛岡市街地、宮城県仙台市周辺、福島県全域、
          山形県山形市周辺、茨城県西部、常磐線沿線を除く茨城県北部、新潟県新潟市街
          地、長野県長野市街地、高崎市・前橋市周辺を除く群馬県全域、南部・宇都宮市
          周辺を除く栃木県全域
12版 岩手県(盛岡市街地を除く)、秋田県(秋田市街地を除く)、山形県(山形市周辺を除く)、宮城県
    (仙台市周辺を除く)、山梨県(甲府市・大月市周辺を除く)、長野県(長野市街地を除く)、新潟県
    (新潟市街地を除く)

4. 北海道支社の「区分け」
朝刊・夕刊セット発行地域
14版(最終版) 北海道札幌市、小樽市
13S 北海道石狩地方、後志地方(小樽市を除く)の一部、胆振地方の一部、空知地方の一部、旭川
市街地
統合版地域(朝刊のみ)
12版 以上の地域を除いた北海道全域

5. 北陸支社の「区分け」
(北陸支社の場合はセット地域でも統合版の購読が可能です。)
朝刊・夕刊セット地域
13S(最終版) 富山県高岡市・富山市周辺、石川県金沢市内
統合版地域(朝刊のみ)
13版(最終版) 富山県全域(冬季の山間部を除く)、石川県(能登・加賀地方南部地方を除く)
12版 富山県山間部(冬季に限る)、石川県能登地方・加賀地方南部

6. 中部支社の「区分け」
統合版(朝刊)のみ
14版(最終版) 愛知県名古屋市
13版 愛知県(名古屋市・東部を除く)、岐阜県美濃地方、三重県北部(伊賀地方を除く)
12版 愛知県東部、岐阜県飛騨地方、三重県南部

7. 大阪本社の「区分け」
朝刊・夕刊セット地域
14版(最終版) 大阪府大阪市周辺、兵庫県阪神間・神戸市・三田市の一部、京都府京都市内・南部の
         一部
13S 大阪府(大阪市周辺を除く)、兵庫県阪神間・神戸市・三田市の一部を除く山陽本線沿い(姫路市
    以遠を除く)、京都府京都市周辺(京都市内・南部を除く)・福知山市周辺、滋賀県(北部を除く)、
    奈良県北部、和歌山県北部
統合版地域(朝刊のみ)
14版(最終版) 岡山県岡山市・倉敷市周辺、広島県東部・広島市内(一部を除く)、香川県、愛媛県松山市
          周辺
13版 兵庫県姫路市以遠の山陽本線沿い、福井県福井市周辺、滋賀県北部、岡山市・倉敷市周辺を除く
    岡山県、広島県北部・西部(広島市内を除く)、徳島県、愛媛県東部(松山市内を除く)、和歌山県
    中部
12版 三重県伊賀地方、兵庫県北部、和歌山県南部、奈良県南部、京都府北部、福井県(福井市街地を
    除く)、鳥取県、島根県(石見地方を除く)、愛媛県西部、高知県

8. 西部本社の「区分け」
朝刊・夕刊セット区域
14版(最終版) 福岡県福岡市・久留米市・北九州市周辺、山口県下関市の一部、沖縄県(空輸の為
          配達は発行日の午後以降)
13S 福岡県(福岡市・久留米市・北九州市周辺を除く)、山口県(東部・北部・下関市の一部を除く)、
    佐賀県佐賀市・鳥栖市・唐津市周辺、大分県北部
統合版区域(朝刊のみ)
12版 山口県東部・北部、島根県石見地方、セット版地域を除く佐賀県、大分県西部・南部、宮崎県、
    長崎県、熊本県、鹿児島県

9. まとめ
以上は筆者のフィールドワークに基づくものですが、記憶の違いや印刷所の新設などにより情勢が変化
している可能性もありますので、若し相違点があれば指摘を頂けると大いに助かります。又、これは宅配
の場合の「版」であり、駅売店などの即売に関しては異なる場合があります。(特に東京本社管内)
最後にこれはあくまでも個人の研究結果であり、この件に関し読売新聞社に直接問合せをするのはご
遠慮頂きたいと思います。

エピソード・豆知識

@ 同じ駅でも違う「版」

宅配では同一地域は同一の「版」の新聞が配達されますが、同じ駅でも鉄道会社によって新聞
の「版」が違う場合があります。これは新聞の流通ルートの違いで生じるものです。これは特に
配送に一刻を争う夕刊に顕著な現象です。

現在新聞の流通ルートは以下の通り主に3種類あります。
T 宅配ルート
U キヨスクルート(旧「弘済会ルート」、JR東日本は「キオスク」)…JRの売店の販売網
V 即売ルート…主にコンビニ、私鉄・地下鉄駅売店で展開されている即売卸業者を通したルート

例えば、読売新聞夕刊を例にとってみれば、このような例があります。
T 東京駅・有楽町駅・神田駅…JRキオスクは4版、地下鉄駅売店は3版(但し有楽町駅周辺の
  新聞売店で4版を扱っている所もある。)
U 新橋駅・上野駅…JRキオスクは4版、地下鉄・私鉄駅売店は3版
V 品川駅…JRキオスクは4版、私鉄売店は3版
W 登戸駅…JRキオスクは4版、私鉄売店は3版
X 武蔵小杉駅…改札外JRキオスクは4版、改札内JRキオスクと私鉄売店は2版
どうせ買うのであれば、締切時間の遅いほうがいいですよね。

A 時間差攻撃

大規模な駅では、早めに夕刊を流通させる為に締切時間の最も早い版を最初に出して、次いで
暫くして段々と締切時間の遅い版が入る場合もあります。これは「夕刊フジ」「日刊ゲンダイ」等の
夕刊娯楽紙が都心部の駅でよくやっている方法ですが、読売新聞でも稀にあります。特に大阪
本社管内で顕著な現象です。
例: 地下鉄霞ヶ関駅(午後1時頃2版が入荷、午後3時頃3版が入荷)

B 逆転現象

通常印刷所から遠い地域に行けば行くほど締切時間の早い「版」が出回りますが、駅売店では遠い
駅の筈なのに締切時間の遅い「版」の新聞を売っていると言った現象が見られます。これは流通
ルートの分かれ目等で見られる現象です。これはJRキヨスク・即売卸業者独自の配送ルートを
使った場合と宅配ルートに便乗して運んだ場合との違いであると思われます。
またまた夕刊を例にとって恐縮ですが、
T 横浜駅…2版、大船駅…3版(朝刊では横浜駅は14版、大船駅は13S)
U 日暮里駅…3版、北千住駅…4版、王子駅…4版(朝刊では全て14版)

C 宅配は統合版(朝刊)のみ、でも駅で手に入る夕刊

読売新聞では特に大阪本社管内、西部本社管内で夕刊の宅配を行っていない地域(「統合版
地域」)でもJR駅のキヨスクに限って夕刊の販売を行っている駅があります。
T 大阪本社管内…岡山駅(3版)、これは岡山市の印刷所を使って印刷されたものではなく、
  大阪からわざわざ電車で配送員が持ってきたものです。
U 西部本社管内…長崎駅(3版)、熊本駅(3版)

D 夕刊にこだわる静岡県民、夕刊を読まない愛知県民

両県は隣同士ですが、こと新聞の夕刊に関しては顕著な違いが現れます。
T 静岡県…地元で発行され、シェアNo. 1の「静岡新聞」も夕刊を発行しており、部数は朝刊夕刊
        共にほぼ同じで、県内全域で朝夕刊セット体制が整っています。読売新聞も同じく
        県内のほぼ全域で朝夕刊セット体制を整備しており、東京本社管内で最も近い横浜
        の印刷所から遠い浜松周辺ではわざわざ夕刊を発行していない中部支社の印刷
        設備を使って夕刊を印刷し、配送しています。セット購読率は約40%ですが、他の
        全国紙には半分を超えている新聞もあります。
U 愛知県…静岡県と同様、全世帯の7割強が購読していると言われる「名古屋の怪物」「中日
        新聞」が夕刊を発行し、県内全域で朝夕刊セット体制を整えていますが、セットの
        購読率は僅か50%強です。同じく名古屋に発行・印刷拠点を構える「朝日」「毎日」
        「日経」も同様で、他のセット地域に比べセット購読率が極端に低くなっています。
        この為か名古屋進出が1976年と最後発の読売新聞は、最初は「中部読売新聞」
        と称し購読料を極端に低く抑えていました。しかしながら普及は進まず、珍しく全国
        紙の中でシェアが最も低くなっています。こうした状況で夕刊を発行しても部数が
        増えないとの判断から中部本社では読売新聞の発行拠点の中では唯一夕刊を発行
        していません。

E 何故読売だけ「北陸支社」が存在するのか?

読売新聞は富山県高岡市に「北陸支社」を有し、富山県と石川県を管轄しています。又、部数は
僅か5,000部足らずながら夕刊を発行し、朝夕刊セット体制を整えています。朝刊の発行部数は
約15万部で、地元新聞が圧倒的に強い両県の中では健闘しています。
実は、長年読売新聞のオーナーである正力家の故郷は富山県なのです。それで「故郷に錦を
飾る」為に1959年と言う比較的早い時期に「北陸支社」を設立したのではないかと言われて
います。