モラルハザード
 
 
 

  月の陰る夜更け。

  何かから逃げるように走る、赤いワンピースの女性。セミロングの髪を振り乱し、
 片方が脱げたハイヒールにも構わず逃げる。

  追う男。荒い息づかいながらも口元は笑っている。

  薄明かりの街灯の下、女性の悲鳴。
 
 
 

  金城(ドルネロ)所有のビルの一室。

ドルネロ「う〜ん、こいつらはムダな奴だったなあ・・・」

  解凍した囚人からの入金データを見ながら、唸るドルネロ。

リラ  「ドルネロ〜。どしたの〜ん?」

ドルネロ「何の役にも立たねぇ奴も、何人か解凍しちまったってことだよ。
     こいつなんざ、まだ一銭も稼いでねぇし、こいつも上手いこと言ってたが・・
     ま、アテにゃあ出来ねぇなぁ」

  リラ、データを覗き込む。

リラ  「はぁ〜ん、こいつね〜」
 
 
 
 

  昼下がり。トゥモローリサーチ前。

  出張修理の帰り、軽い足取りで階段を駆け上がろうとするシオン。そこへ、女性二人
 が階段から降りてくる。ひとりはうつむいて、ハンカチで涙を拭っており、もうひとり
 はそれをいたわるように肩を抱いている。

女性A 「大丈夫よ。なんでも屋さんが、なんとかしてくれるわよ」

女性B 「うん・・・」

  女性A、シオンに気付き、軽く会釈する。シオンも会釈を返すが、泣いている女性が
 気になり、去っていく二人をしばらく目で追う。
 
 
 

  トゥモローリサーチ事務室。

  ユウリが難しい顔をして、応接ソファに座っている。竜也、アヤセ、ドモンは、寝室
 に続くドアのそばに立っており、竜也が今にもユウリに話し掛けようとしていた・・。
 そこへ、

シオン 「ただいま」

竜也  「あ、お帰り、シオン。ごくろうさん」

シオン 「・・・あの女の人たち・・・どうしたんですか?」

竜也  「いや、俺たちも・・・」

ユウリ 「男性がいたら話せないことだからって、竜也たちには席をはずしてもらってた
     のよ」

  ユウリの話を聞こうと、竜也はユウリの後ろに立ち、アヤセ、ドモンは向いに座る。
  シオンは空いているユウリの隣に座る。

ユウリ 「あの女性の言うことには・・・。ロンダーズにレイプされたそうなの」

竜也・アヤセ・ドモン  「ええっ!?」

  竜也たちは驚くが、シオンはきょとんとしている。

シオン 「・・・レイプって・・・何ですか?」

  「うっ」とばかりにひいてしまう男三人。気を取り直したドモンがアヤセに言う。

ドモン 「おまえ、詳しいだろ、教えてやれよ」

アヤセ 「なんで俺が詳しいんだよ。おまえじゃあるまいし」

  竜也はまだ、ひいている。
  ユウリは、そんな男たちを一べつし、シオンに問う。

ユウリ 「じゃあ、シオン。セックスってわかる?」

  「うっ」と再びひいてしまう三人。ドモンとアヤセがささやき合う。

ドモン 「ろこつに言うねぇー」

アヤセ 「犯罪、絡むとデリカシーってやつがな・・・」

  竜也はユウリを見ることができず、うつむき加減に視線をそらせている。
  そんな三人を見つつ、平然と答えるシオン。

シオン 「それなら知ってますよ。
     愛し合ってる男の人と女の人が、身も心も、ひとつにすることでしょ」

ドモン 「当たらずとも遠からじ・・・」

アヤセ 「だな」

  ユウリ、きつい口調で、

ユウリ 「当たってるわよ!」

  そして、座る位置を直し、シオンに説明する。

ユウリ 「レイプっていうのはね、そんな愛し合う者同士の行為を汚す犯罪なの。
     男の欲望だけの行為で、愛なんてない。
     愛してもいない男からそんなことをされたら、女性はひどく傷つくのよ」

シオン 「はい、さっきの女の人、泣いてました」

  依頼人の女性のことに話が戻ったので、竜也がすかさず、仕事の話題にする。

竜也  「で、ロンダーズに、って言ったよな」

ユウリ 「ええ、襲われた時は人間の姿をしていたけど、去って行く時の姿は、間違いな
     くロンダーズだったって。
     シティガーディアンズに通報しようとも思ったらしいんだけど・・・詳しく話
     を聞かれでもしたら、きっと耐えられないって。でも、また襲われるかもって
     思うと恐いって・・・。
     彼女の依頼は、私が襲われたことにして、シティガーディアンズに通報して欲
     しいってことだったんだけどね」

  竜也、それを聞き、少々ムッとくるが、その場をタックの声が遮る。

タック 「彼女の話した内容からすると、犯人はこいつだ」

  皆、タックの周りに集まり、パソコン画面を覗き込む。

タック 「囚人番号30195、連続婦女暴行で圧縮冷凍19年のザックだ」

 ユウリ 「19年?たったの?」

タック 「まあ、妥当なところだろう。
     こいつは地球人の女性が好みのようで、自分の姿も地球人型に変えて襲ってい
     たんだ。そして、だいたいパターンが似通っている」

アヤセ 「パターン?」

タック 「ああ。被害者の女性は、ほどんどが髪はセミロングで、赤系の服を着ていた。
     そして状況的には、恋人とのデートの後、ひとりになったところを襲われてい
     るんだ。つまり、ザックはデート中の女性を物色するんだろうな」

竜也  「デート中の女性をね・・・。
     ドモン、こいつを捕まえるまで、ホナミちゃんとは会わないほうがいいかも」

  ドモン、不満げに竜也を見る。

タック 「そうだな。
     容貌が当てはまらないからといって、絶対安全とは言えないからな」

ドモン 「う〜ん、ホナミちゃん、可愛いからなぁ〜」

  ユウリ、ちらっとドモンをにらむが、

ユウリ 「パターンがあるっていうなら、おびき出しやすいわね。
     私が囮になるわ。誰か、私の恋人役になってデートのふりを・・・」

竜也  「それ、反対!
     ユウリ、自分の判断で勝手に行動するし、それでもし、俺たちがフォローでき
     なかったら・・・」

ユウリ 「勝手って、何よ!
     相手の出方に合わせて行動を変えるのは当然でしょ!
     だいたい、囮作戦の他にいい方法があるっていうの!?」

竜也  「だから、ひとりで決めるなって!
     俺は、相手が相手だから、最悪の事態を考えろって言ってんの!
     囮になるってのなら、別に俺がスカート履いたっていいわけだし・・・」

  向き合って、喧嘩腰になっている二人を、周囲は「またか・・・」という思いで見て
 いたが、竜也の提案に、アヤセがあきれ顔で突っ込みを入れる。

アヤセ 「おまえみたいなでかい女が、そうそういるかよ。
     ユウリを囮にしないってのはいいとしても、もう少しマシな人材を考えたらど 
     うだ?」

  その言葉に、思い当たった一同の視線が、そろそろ〜っと一点に集まる。

シオン 「え・・・。どうしてみなさん、僕を見るんですか・・・?」
 
 
 

ロボター「シオーン、可愛いターイム!」

  ほめられると、悪い気がしないシオン、鏡の前で自分の姿を見て首を傾げていたが、
 「まあ、いいか」という感じで振り返る。ふわっとした、小花柄の赤いツーピースがゆ
 れる。ダークブラウンのセミロングのウィッグに色白メイク、パールピンクの口紅で、
 遠慮がちに微笑んでみせる。

  片や、ぶつぶつ言いながら、ワイシャツに着替えているドモン。

ドモン 「で、何で、俺が恋人役なんだよ・・・」

アヤセ 「適材適所って言うだろ。
     おまえと並んでりゃ、シオンもそれなりに女っぽく見えるってもんだぜ」

  シオンは、クロノチェンジャーをスカートのポケットに入れ、ドモンの横に寄り添っ
 てみせる。

シオン 「どうですか?」

竜也  「あ、ああ、けっこう可愛いぜ、シオン」

  アヤセが軽くうなずく。ユウリはじろっと竜也をにらむ。
 
 
 
 

  依頼人の女性のデートコースだった、夜の公園。
  シオンがドモンにしがみつくような、ぎこちない感はあるが、腕を組んで歩く二人。

シオン 「さっきのレストランの食事、おいしかったですねぇ」

  心なしか、声を高めにしているシオン。ドモンは、それに答えずつぶやく。

ドモン 「なんで俺のおごりなんだよ、おまえのほうが金、持ってんのに・・・。
     あ〜あ、これ一回で、ザックの奴、ひっかかってくんねぇかなぁ。こんなこと
     何度もやってられねぇよ」

  シオン、小声でたしなめる。

シオン 「ドモンさん、さっきから文句が多いですよ。
     犯人逮捕のためなんですから、もう少しまじめに・・・」

  言葉の途中で、ドモンが立ち止まり、前に進んでいたシオンは、引き戻されるように
 よろめく。

シオン 「あ・・っとと、どうしたんですか?」

  真剣な面持ちのドモン。

ドモン 「視線を感じる・・・。なんか、強い視線を・・・」

シオン 「ザックでしょうか・・・?」

  二人は慎重に振り返る。斜め後ろの位置に立ちつくしていたのは・・・

ドモン 「ホ・・・ホナっ・・・
     ホナミちゃん・・・。どうして、ここに・・・」

ホナミ 「き、急に予定が空いたから、映画のレイトショーでも見ようかと思って・・・。
     ドモンさんこそ、どうして?
     仕事でしばらく会えないって、言ったはずだよね?」

  ホナミはドモンに問いながらも、視線は、自分と違って華やかな装いのシオンに釘付
 けになっている。
 
  ドモンはシオンとホナミをきょろきょろと見比べ、あせって叫ぶ。

ドモン 「いやっ、これは、ロンダーズを・・・」

シオン 「ドモンさんっ!!」

  シオンは、ドモンに言わせまいと遮り、腕をひっぱって耳元にささやく。

シオン 「もし、ザックが見てたらどうするんですか。
     説明はまた今度にして、ここは何とかやりすごしてくださいよ」

  ホナミ、ドモンにべったりくっついて話しかけているシオンの行為を、自分への挑発
 と受け取り、乗ってたまるかとばかりに、かえって冷静を装う。

ホナミ 「ふ・・ふう〜ん、そっかぁ。
     ドモンさんが優しいのは、私にだけじゃないんだよね。
     あたしやそのコの他にも、いっぱい、いるんでしょうね。
     じゃ、あたし、映画の時間、あるから」

  駆け出すホナミ。

ドモン 「あ、ホナミちゃん」

シオン 「ドモンさん!」

  手を上げてホナミを呼び止めようとするドモンを、シオンはいさめる。
  ホナミの姿はすぐに見えなくなる。

ドモン 「あ、あ・・・。あ〜あ。」

  ホナミに向けて伸ばした手をむなしくおろし、握りこぶしをつくるドモン。

ドモン 「ええ〜い!こうなりゃヤケだ!!」

シオン 「ぅえっ!?」

  ドモン、突然にシオンの肩をつかみ、街灯の柱に身体ごと押し付けて勢いよくキスを
 する。

シオン 「んーーっ!んん〜〜〜っ!!」

ドモン (しっかり見てろよぉ〜、ロンダーズ野郎・・・。そして、ひっかかって来い!
     さっさとケリをつけてやる・・・!!)

  シオンはあせって抵抗するが、ドモンの力にはかなわない。

  そのうち、観念したのか、ドモンの意図がわかったのか、それとも、他に理由がある
 のか・・・は、ともかく、じたばたしていた手をドモンの身体にゆっくりとまわす。

シオン 「ん・・・」

  そんな二人を暗闇からじっと見つめる、光る眼・・・。

  やがて、ドモンはシオンから身を離し、口をぬぐいながら周囲を意識する。

ドモン 「これでどうだ・・・」

  シオンは街灯の柱に背中をつけたまま、ずるずると尻もちをつくようにへたり込む。

ドモン 「ん?どうした」

シオン 「なんか・・・力が抜けちゃって・・・」

  両手で口をおおいながら、力なくつぶやくシオン。
 
 
 

  街の電光掲示板の時計が9時55分を表示する。

ドモン 「こんなもんで、いいだろ。そろそろ別れるってことにするか。
     俺は、離れてみんなと待機しているから、ザックがひっかかったら、クロノチ
     ェンジして知らせろよ」

シオン 「はい、わかりました」

  小声で打ち合わせた二人は、別れをアピールする言葉を交わす。

ドモン 「じゃあ、送っていくよ」

シオン 「いいです。ひとりで帰れますから。それじゃあ、また」

 ドモン 「気をつけてねー」

  歩き出すシオンに微笑みながら手を振るが、すぐに表情を変え、俯き加減に反対方向
 へと歩くドモン。

ドモン (早くホナミちゃんの誤解、解きてぇーな〜)
 
 
 
 

  人気のない道を選んで歩くシオン。

  自分のヒールの音だけが響く暗がりの道は心細く、いつロンダーズが現れるかと心構
 えしつつも、足取りは重くなる。そして、つい、あたりを伺うように見回してしまう。

  と、そこへ背後から・・・。

ザック 「お嬢さん・・・彼氏と楽しそうだったねぇ」

  びくっとして振り返るシオン。

  立っていたのは、大柄な男。にやにやしながら近付いてくる。

  威圧感を感じたシオンは思わず後ずさりし、ポケットの中のクロノチェンジャーを取
 ろうとするが、一足遅く、人間体のザックに飛び掛かられ押し倒されてしまう。

シオン 「わあっ」

  ザックに押さえ込まれ、シオンは抵抗するが、顔を殴られ一瞬ひるんでしまう。
   
  ザックはシオンの両手を大振りの左手で掴んで押さえ、赤いスカートを膝上までたく
 し上げた右手を中に突っ込み、纏うものを除け、そして・・・。

シオン 「あ!」

  シオンの声と同時に、ザックも「!?」。そして右手を、がばっと広げて見る。

ザック 「なんだっ、今、気色悪いもんを触ったよーな・・・。
     ・・・まさか、おまえ」

  ダークブラウンのウイッグを鷲掴みにして取り、シオンをまじまじと見る。

  思わず苦笑いするシオン。

ザック 「こいつ・・・ばかにしやがって!」

  馬乗りになり、シオンの肩をさらなる力で押さえつけ、本来の姿を現わすザック。

シオン 「うあ・・あ・・」

ザック 「フン!驚いたか?まあ、お互い様ってとこだな・・・。
     ・・へへ・・それにしてもよぉ、
     やっぱ、おまえ、けっこう俺好みじゃねぇかよ・・・」

  ザック、シオンのあごをぐいっと掴み、顔を近付ける。

ザック 「顔だけ見てやりゃあ、悪かねぇかもな」

シオン 「えっ!?あっ、ちょ、ちょっと待ってくださいっ!!・・ひ・・っ!」

  首筋を這う生暖かい感触に、悪寒が走るシオン。

シオン 「・・ぃやっ、いやです!やめてくださいっ!」

  必死でザックの下から逃れようとするが、

ザック 「ええいっ!おとなしくしてろ!!」

  と、数発の平手打ちをくらう。だが、抵抗を止めるわけにはいかない。

ザック 「へっ、女と変わんねえな。
     よけーなもんさえなけりゃあなっ」 

  ザックはひざを使って、赤いスカートから伸びる足の間に割って入り、曲げた足で器
 用にシオンの腰をすくい上げる。そして、片手でシオンの腰骨を、もう片手で太ももを
 力強く掴んで手前に引き寄せる。

シオン 「はあっ、はっ・・、痛っ・・
     やめ・・っ、離してくださ・・・」

  とりあえず上半身が自由になったシオンは、身体に食い込む指の痛みにおぞましさを
 つのらせながら、手の届くかぎりにザックを叩いたり、身体をよじったりして逃れよう
 とするが、もはやザックは構うことなく、荒い息づかいで侵入行為を果たそうとする。

  が、そこへ、

直人  「そこまでだ!ロンダーズ!!」

ザック 「!?」

シオン 「あ・・・!」

  二人の視線の先には、銃を構えた滝沢直人が立っている。

ザック 「てめえ・・・」

シオン 「直人さん・・っ!」

  直人に気を取られたザックから逃れ、直人に駆け寄るシオン。そしてザックに乱され
 た身を、それなりに整える。

  そんなシオンを一べつする直人。

直人  「契約者の娘がロンダーズに犯されたっていうんでな、内密にことを運んでいた
     んだが・・・。おまえたちも嗅ぎ付けてたんだな」

ザック 「きっさまー!! うわぁっ!」

  怒るザックに、直人の銃が命中する。

シオン 「直人さん・・・」

直人  「フン、それにしても、ひどい有り様だな・・・」

  直人、シオンの顔に浮かぶ青アザを二本指でつつく。

直人  「・・ははーん・・浅見の女の身代わりにされたか」

  助けられて礼を言うつもりだったシオンだが、直人の言葉に表情がくもる。

シオン 「そんな言い方しないでください。竜也さんは・・・」

  そこへ、銃の音を聞きつけたタイムレンジャー四人が駆けつける。

竜也  「シオン!」

シオン 「みなさん・・・!」

  仲間たちの姿を見て、ほっとするシオン。

ザック 「ちっ!タイムレンジャーだったのか!!ひっかけやがったな!」

  シオン、ポケットから取り出したクロノチェンジャーを腕につけ身構えるが・・・

直人  「おまえたち、遅かったなぁ。
     こいつ、女も知らないだろうに、こんな奴にやられちまって・・・。
     もう、生きていけないってよ」

竜也・ドモン 「なに!?」

アヤセ 「最悪の事態に・・なっちまったのか・・!?」

シオン 「直人さんっ!!
     違いますっ、みなさん、未遂です!未遂っ!」

ユウリ 「ザック・・・!どこまで見下げ果てた奴なの!!節操のない!!」

  タイムピンク、ダブルベクターを構える。

ザック 「うるせぇっ、おさまりがつかなかったから、魔が差しただけだ!
     それに、おまえみたいなきつそーな女よりゃ、こっちのほうがなんぼか
     マシだからな!」

ユウリ 「言ってくれるわねぇ〜!」

アヤセ 「ユ、ユウリ、気にするなよ・・・」

ドモン 「そ、そうそう。おまえみたいなのがいいって奴も、この世にはいるからな」

  タイムイエロー、レッドをひじで小突く。

竜也  「うっ・・・」

ユウリ 「そんな問題じゃないの!
     シオン!さっさとクロノチェンジするっ!」

シオン 「はっ、はい!クロノチェンジャー!!」

  直人、やれやれという表情だが、自分も装着することに。

直人  「タイムファイヤー!!」

  ザック、ゼニットのネジをまき散らし、次々にゼニットが現れて闘いが始まると、ど
 さくさに紛れてこっそり逃げようとする。

ユウリ 「待ちなさい!」

ザック 「げっ・・・
     くそ〜、女に追われるってのは、俺のシュミじゃねぇんだよっ」

  ザック、タイムピンクに襲い掛かろうとするが、

ユウリ 「ベクターエンド!ビートシックス!!」

ザック 「ぐぇ〜〜っ」

  か弱い女性専門のせいか、てんで弱い。

ユウリ 「みんな!圧縮冷凍よ!」

四人  「おうっ」

  それぞれ、ボルユニットをクロノアクセスし、合体させる。

五人  「ボルテックバズーカー!!」

竜也  「ターゲット、ロック・オン!プレスリフレイザー!!」

ザック 「ひえ〜〜」

  ザック、抑制シールをはがすヒマもなく圧縮冷凍され、ころんところがる。

  ブイレックスを呼ぶまでもなかったタイムファイヤー。

直人  「フン・・ほてった身体が冷めて、よかったな」
 
 
 

  ザックをカプセルに封じるユウリ。直人はすでに立ち去っている。

  竜也は、ユウリとそのそばにいるシオンを見つめる。ザックに傷つけられたのが、ユ
 ウリでなかったことに安堵しながらも、そう思ったことで、自分自身がシオンを傷つけ
 たような気分になってしまう。

竜也  「あの・・さ、シオン。
     ずいぶん、がんばったからさ、今度、おまえの好きなものおごってやるよ」

シオン 「ホントですか!? ぁ・・」

  竜也が目をそらしていることに気付き、なんとなく竜也の気持ちを察するシオン。

シオン 「気にしないでください、竜也さん。これも仕事なんですから!
     ・・・でも・・・」

  と、ユウリに向き合い、

シオン 「ユウリさん、僕・・・こいつに押さえつけられた時、ちょっと怖かったし・・
     こんな奴とひとつになっちゃうのかと思うと・・ものすごく嫌でした・・。
     こいつは、女の人たちに、ほんとにひどいことをしてたんですね」

ユウリ 「そうね。19年の圧縮冷凍なんて短いくらいよね」

シオン 「はい!」

  シオン、ユウリの持つ囚人入りカプセルを取り上げ、

シオン 「天にかわって、おしおきです!」

  自分のスカートの中に突っ込んで、ザックの嫌うものに押し付ける。

ユウリ 「シオン!」

竜也  「お、お〜い!!なにやってんだよ、シオン!」

  あわてる二人とシオンを見て、苦笑するアヤセ。
  ドモンは複雑な表情。

ドモン 「あ〜あ・・・俺ァ、ザックに同情するねェ・・・と、おいっ、シオン!
     そんなことやってるヒマないぞっ!!」

  シオンからカプセルを奪い、ユウリに投げ返すドモン。

ドモン 「早いとこ、ホナミちゃんの誤解を解かなきゃならないんだっ!
     おまえも来いっ!!」

  と、シオンの腕をつかみ、走り出す。

シオン 「わぁ・・っ」

ドモン 「あ〜あ、ホナミちゃん、怒ってるかなぁ〜」

シオン 「大丈夫ですよ、ホナミさんならきっと・・・ぁあんっ、
     そんなに引っぱらないでくださいよ、ドモンさぁん!」

  遠ざかるドモンとシオンを見送る竜也、ユウリ、アヤセ。
  そして、お互いの顔を見合わせ、笑う。
 
 

No Case of File
2000. Dec. 20.



 
 

  

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