3時間も眠っただろうか。完全に寝不足。頭が痺れてる。カーテンを開けると陽がさす。晴れてるから美幌峠を回ってカムイワッカに向かおうと決めた。父子ライダーは摩周湖を回ってから行くのだという。温泉の人に美幌峠と津別峠と野上峠ではどこが展望が良いか訪ねられる。晴れてるなら美幌峠の一人勝ちだ、自分もこれから行くつもりだと答える。朝食は斜里かどこかで食べよう。外で荷造りをしていると猫が寄ってきた。なついてるな、可愛がられてる証拠だ。7時すぎ出発。
R243パイロット国道を駆け登る。気持ちのいい高速コーナーが続くワインディングロード。知床横断道路のウトロ側に匹敵するな。いや、コーナリングの爽快感はダントツにこっちのほうが上だ。高度が上るにつれ屈斜路湖の形が見えてくる。美幌峠の展望台は駐車場から徒歩10分、石の階段もまったく気にならない。嘘だろ、こんな景色が日本に存在するなんて信じられない。360度視界が開け、屈斜路湖の全容が見渡せた。これで青空であったなら文句のつけようがないのだが斜里側が好天だから許す。風が強い。早朝であるため観光客はまばら、というか展望台に自分ひとりしか居ないんすけど…。あと3時間もすればあの広い駐車場が人でごったがえすのだろうな。パノラマ写真を撮っているときデジカメの電池残量警告が点いた。おかしい、まだ200枚ぐらいしか撮ってないのに。昨日充電しとけばよかった。まいーや、アナログカメラがあるし。駐車場に戻ってくると温泉の人がちょうど上ってきたところ。「すごい景色ですよ」とか二言三言喋って別れを告げる。
美幌峠から屈斜路湖 デジカメ画像3枚を合成
R243美幌側はだんだら坂、自動操縦で十分だ。美幌峠から斜里へ向かうのに美幌市街を通っていたのではひどく遠回りになるため、どこかをショートカットする必要がある。道道995東藻琴豊富線で道道102網走川湯線に出て南下、東藻琴からR334に合流するか。東藻琴豊富線はパイロット国道に匹敵するくらい良い道だったが展望が悪くていまいち。東藻琴から小清水までのR334はところどころ工事グラベルでバイクがきちゃなくなりますた。右手に斜里岳を見ながらR334の直線を走る。北海道的風景。R244斜里国道へ入る交差点にセイコマとセブンイレブンとローソンが立ち並んでいる。セブンイレブンへ入る。ビッグおにぎりと牛乳と水を買う。おにぎりをほお張っていると、緑装束の忍者が話しかけてきた。「これからどこへ?」「もしゃもしゃ…カムイワッカ」「ぼくは昨日行ってきましたよ今日は晴れてるから気持ちいいですよ」などと定番トーク。「じゃ、ぼくはこれから網走です」「気をつけて」きっと誰かと喋りたかったのだろう。ソロで走ってるとよくあることだ。
斜里を過ぎ海岸線に出る。海の色が黝い。オシンコシンの滝は今年も通過。たかが滝、されど滝。ウトロの街をくぐり抜け知床自然センター横を左折、知床五湖に行くようにして途中からダートへ入る。フラットダート。オフ経験があれば楽勝。心配することもない。走る分に関しては。ただ穴ぼこが多いので轍に沿って走ると泣きを見る。端にオフセットライン、必要に応じてスタンディング。あ、鹿だ、鹿がいるよう(/_)びっくりして繁みに逃げていった。11km程走ると縦列駐車の車が見えてきた。停めるところを探して奥まで行った。道幅のあるうちにUターン、一度切り返して転回完了。今年は狭いグラベルでのUターンを3回やったが、カムイワッカでやった時が一番しんどかった。でもコイツなんかまだマシなほうでYZF-R1が停まってるのを見たときはさすがに戦慄した。勇者に違いない。バイクしか停められないようなスペースを見つけてセンタースタンドを立てる。
昨年、ライダーハウスで得た情報、カムイワッカの沢登りに最適な装備、古びした厚手のくつ下を装着。革パンを半ズボンに着替える。ちなみにほとんどの人は登り口で一足500円のワラジを買うらしい。山道を30m程歩いて沢へ下りる。裸足は足の裏を切る危険性が高いので止めといたほうがいい。サンダルは滑るから論外。あと両手を空けとくのは必須。でも片手にトートバッグ持って裸足で登っているナメてる人とかいたけどね。何かあってからでは手遅れなので、監視員とはいかないまでも警告文は出しといたほうがいいと思った。
湯船になりそうな滝つぼは4つある。慣例で一番下が女湯、一番上が男湯なんだと後日斜里YHのヘルパーをしていた人から聞いた。けれども現在の慣例は一番下が温水プールになっていた。女性ならず男性までほぼ全員が水着着用。若い女性は1億歩譲って黙認するとしても、男が水着はまずいんじゃないの。衣服のまま風呂に入るだけで言語道断なのに、もしてやここはアイヌ語で神の湯だよ。(邪神らしいけど)おれが正しい風呂の入り方を教えてやる!衣服を脱いでパンツ一丁になった。そばにいたおっさんが怪訝そうな顔をする。「ここは裸で入っちゃいけないんですか」おっさんに問うた。「いや、君、いくらなんでも裸はいけないでしょ」「でも風呂ですよ、風呂には裸で入るものです」「そうだが、ここは…」と言葉を濁す。決心がついた。最後の一枚に手をかけ下ろす。
カムイワッカ湯の滝・女湯?
フルチン
でたたずむ漢が一人。速攻で湯船に滑り込む。いま幼児以外で風呂に入ってるのはおれだけだ。他の奴はここを温水プールか何かと勘違いしている。早急に規制してほしいものだ。無論、水着着用禁止に。
あー落ち着かない。というかぬるい。上へ行こう。あがって身体を拭き服を着る。写真を撮っていた女性が気を遣って後ろを向く。すんませんねぇ。本来滝つぼ左側の斜面を登るのが易しいが、数日前そこを登っていた人が不注意で石を落とし、下にいた人の頭に当たって怪我をした事故があったと聞いた。ならば右からアプローチするしかないな。両手両足を駆使すれば難なく登れる。沢登りすること約10分、男湯に到着。先客がひとり。「さっき滝の上に子連れの熊がいましたよ」と。アナログカメラで撮ってもらった証拠画像。一緒に写ってるのは知らない人。滝の左半分が熱湯。右半分は水。カムイワッカ湯の滝は温泉が流れてるのではなく、川の途中の岩肌から湯が湧き、水とまざってちょうどいい湯加減のところを人間が温泉と呼んでいるのである。まさに野湯と呼ぶにふさわしい。泉質はたぶん強硫黄泉。5分もつかっていると粘膜がヒリヒリし始める。殺菌作用を通り越して毒の領域に入っている。往復40分の沢登りで水虫が全滅したほどだ(本当)。湯当たりしやすい人は入らないほうが無難であろ。
カムイワッカ湯の滝・男湯
登山は下りるほうが難しい。それはカムイワッカにも当てはまる。だが下山家(下りるために山を登る人)のおれにとってはさして苦でもなかった。バイクのところまで戻り、くつ下とタオルを隔離。ライディングルックに着替え来た道を戻る。「帰りのほうが楽ちんですよ」昨日のスティードさんの言葉を思い出す。最初、下りだからかなと思ったがそれだけではなかった。明らかに山側のほうが路面状態が良い。穴ぼこはある。でも使える道幅が海側より広い。その分だけライディングにゆとりが生まれるのだ。ま、どうでもいいことでつね。
国道に出た。今年も知床横断道路を攻めよう。気分爽快。峠付近で霧に覆われたため引き返してウトロで昼食。「郷土料理 磯地」でウニ・イクラ丼2100円をオーダー。昨年、羅臼のウニ丼は2500円だったもんな。待つこと30分、来ました。2層のイクラとウニがびっちり敷き詰められたハーフ&ハーフ。いただきまーす。うまい!これが本物なのか、いったい今までのは何だったのかと小一時間(略)。あとで聞いた話によるとウトロは「一休食堂」がデフォらしい。
R334を斜里まで戻りバイクにも飯食わせる。道道1115〜1034線と繋ぐ。意外とすれ違うバイクがいる。神の子池に入る手前で初めてパトカーを見た。道北にいる斧さんのメールではパトカーだらけらしいが、道東においてはとても交通安全週間とは思えない遭遇率である。(すみません嘘です。帯広市街で見てますた)ダートを1.5km程走る。カムイワッカより路面が荒れているけど距離が短いから我慢できる。
ベルビア100Fの見た目より派手な発色とはいえオーヴァーでなく実際こんな感じなのだ。湖底に沈んだ倒木と水面に写る樹木のコントラストが奇跡的確率で調和した聖域。都会の雑踏を忘れてずっと眺めていたい色彩。。。
神の子池 (撮影リコーGR1v+PLフィルター+RVP F)
確かにいきなりココだけを見たら感動するだろう。神秘的なカラーは一角だけであって大部分は普通の池であった。個人的にはこの色をアナログフィルムに収められただけで大満足だからいいのだ。再訪はないと思うが…あ、いやオフ車ならまた来てもいいかな。
清里峠から裏摩周展望台へ。どうせ湖面なんか見えないんだろーなと思いつつ展望台のほうを見ると写真を撮ってる人が!まさか、見えてるのか?足早に階段を登る。
摩周湖キタ━(゚∀゚ )━!!!!
すっきりくっきりとまでもいかないがカムイシュ島まで確認。2回目にして見られるとは運がいい。婚期3年遅くなったけどね。
裏摩周湖展望台から
さて、そろそろ宿を決めなくては。ぽんと連泊ってのも芸が無いし、釧路まで行っちゃう?道道150〜885〜1040と繋いでR391を南下、地元車のスリップストリームに引っ張ってもらい50分程で釧路入り。R44からR38に入って1km程で左側に黄色い建物。バイクウェア&ギフト「History」がライダーハウスも経営している。ここを選んだ最大の理由は、旅風ツーリングガイドが買えることだ。店に入る。「こんにちは〜、今日は泊まれますか」奥から女性の方が「泊まれますよ、ここに名前と住所を」カキカキ「わぁ、富山ですね〜」と妙に嬉しそう。今度は店長がライダーハウスの場所まで案内してくださった。店から150mぐらい離れた民家の2階。奥さんが富山県中新川郡立山町出身で、富山県の人が来ると喜ぶのだそうだ。炊事場、水洗トイレ、コインランドリー、自販機、予約優先でシャッター付き車庫あり。3部屋でキャパシティ15名、徒歩で行ける距離に銭湯とコンビニ(酒あり)と和商市場がある最高の立地条件。着替えて、まずは銭湯「福寿湯」へ。370円、すさまじく熱くて長湯は無理。その足でHistoryに寄って旅風ツーリングガイド「道東・道北編」「道央・道南編」2冊ともゲット。各1500部しか刷ってないので早い者勝ちである。旅風ツーリングガイドは8月3日をもって販売中止になりました。詳細はココ。
部屋に戻り米を研ぐ。白髪まじりのおじさんが入ってきた。「さっき銭湯に居ましたよね」そーでーす。「キャンプ道具も持ってきたけど長いこと居ると疲れが溜まっちゃって、ライダーハウスの味を覚えるとキャンプには戻れませんね」「9日からいるけど天気悪いよ」「日勝峠で霧雨に遭った他はいい天気ですよ、カムイワッカなんか快晴でしたし」「あーそりゃ運がいいねぇ」「来てからツーリングマップル買ったけど、お、これは?」と旅風が気になるようなのでひととおりレクチュアしたら早速買いに行かれた。入れ替わりで初北海道CBR900RR&5回目黄色い忍者のコンビが入室。ご飯を炊いて戻ると人が増えていた。店長からすじこの醤油漬けの差し入れがっ。爆ウマー!!! 黄色い忍者の人が去年も来たのでということだった。この瞬間、来年も来ようと思ったおれ。20時頃、めちゃめちゃハイな山口の人が来て場が最高潮に達した。濃い分野の同士が集うライダーハウスならではの一夜を愉しんだ。