Vol.560 12.Dec.2008
H
HDCPとHDMI
by fjk
HDMI(High Definition Multimedia Interface)端子とはデジタル接続端子(DVI端子)をベースに設計された規格で、1本のケーブルで映像・音声・著作権保護の制御信号を転送することができる。HDMI端子を使うと音声と映像を別々に接続しなくても済むので、とても便利である。
一方、DVDやデジタルテレビ放送などでは映像データは暗号技術によって保護され、単純にデータを抜き出してコピーを作成しても再生できないようになっているが、パソコンで再生しディスプレィに転送する場合はデータが無防備になることから、この防止技術としてHDCP(High-bandwidth Digital Content Protection)が考えられた。そして、HDCP非対応の機器ではSD画質でしか再生できないようになっている。ところが1990年代までに発売されたアナログハイビジョンテレビなどにはHDMI端子が搭載されていないため、これらの機器ではHDTV対応であるにも関わらずHDの高精細な映像では楽しめない事になってしまう(2011年までは認めるという話もある)。
最近、プレイステーション3のHDMI映像をHDCP非対応のDVI-D入力端子搭載ディスプレイに表示するための機器であるPS3-S201(三月兎、\21800)が話題となっている。このPS3-S201を使うとHDCPが解除されたHDMI映像を出力することが出来る。違法性も疑われているが、過去の例やこれからも解るように、いくらコピーガードを考えても、結局は無駄である。そして、これらの規格に対応するためのコストの上昇が結局ユーザに回されていることになる。また、HDCPに対応していない機器しかない場合は、新たに購入しなくてはならなくなる。
ところで、デジタル映像の視聴に欠かせないB-CASカードであるが、様々な問題が指摘されている。カードの運営会社であるB-CAS社は民間企業であり、一民間会社によってテレビの視聴の可・不可が握られている(独占禁止法の疑い)。コピーワンス(テン)の機能は著作権者が必ずしも願った物ではなく、コピーの失敗によりデータが失われるトラブルも多く発生している。B-CAS規格を満足するするための機器がコスト高となり、デジタル機器の普及の弊害となっている(デジタルチューナーはやっと1万円)。B-CASは日本のみの規格で海外では通用しない(マイクロソフトでさえ規格品が作れない)。・・等々。
ちまたでは、このようなB-CASの問題点を逆手にとるように、台湾製のフリーオ(\29800)などコピー制御が無効となる装置も出回っており、規格の存在そのものが危ぶまれている。総務省ではこれらの見直しを進めているとのことだが、B-CAS社や放送局など一部の企業のみの権益を守ろうという制度は、いずれ消費者から見放されるということだろう。
*)以前、ある速度以上出るとチャイムが鳴る機能が車に義務付けられたが、チャイムを切断する機器やユーザの不評によって、結局この法律は廃止された。車のシートベルト(警察庁の死亡者数を減らすためなら社保庁と同じ考え?、安全指導は必要ですが強制は必要?)、カーモニターの視聴禁止機能(画面を見るためのものなのに・・、脇見はテレビが無くても一緒)・・、政府が余計なお世話をしているように思えます(そのうちに自動事故防止装置がなかったと訴えられかねませんね)。
コピーは禁止されていても、コピーが自由に出来る機器が出回っているという現実、このように無駄な労力を要する規制は無くして欲しい物である。不正を行った人を罰すればよいのであって、それを始めから出来なくすることは、ユーザの権利の侵害ではないでしょうか?
P
ポメラ
by fjk
10月21日にキングジムから文庫本サイズで、折りたたみ式のフルキーボードを搭載した「メモ専用機」としてポメラ(27300円)が発表され、11月10日から発売された。モノクロ画像でテキストしか入力できないのに、あっという間に売り切れて在庫が無くなった。パソコンと違いポメラは文字入力までに2秒しかからない。入力したデータはUSBまたはSDメモリでパソコンに取り込める。
こんな単機能の機種に15人のキングジム社内の役員会議では賛成した役員が一人だった。ただ、その役員の「すばらしい。俺なら今すぐにでも買いたい…」という言葉を聞いた社長が、「15人に1人の割合でこんなに欲しがる人がいるなら、世の中全体ではかなりの数になるかもしれない」といことで、ゴーサインになったそうです。さらに、社長は「みんなが『何となくいいね』という製品は返って危ない。例え少数でも熱狂的な支持者がいる方が売れる可能性が高い」という。
そういえば、ロボットの開発でも「一人でも『ロボットができたら使います』というユーザがいたらそのプロジェクトは成功する」とあるロボット開発者が述べていた。「こんな技術があるから、作れば何となく売れるだろう、では大抵は失敗する」とも述べていた。
景気の良い時代には、大量に製品を作り、「我も我も」と思わせて消費者の購入意欲をもり立てて商品を捌いていたが、現在のような不景気な時には、ターゲットを絞って、少量でも確実に売れる商品の開発が良さそうである。これからの商品開発の方向を教えられたように思う。機能を絞って安くなったミニノートPCも同じかな・・。