刷毛

刷毛を作るのに適した毛髪に関しては、泉清吉さんに任せます。
刷毛を使う立場での思いを書き出してみます。

厚みが薄く、長さが短いのが理想です。それで上塗りができるということは、毛が細く、弾力があることを示します。
余り良くない刷毛は、毛を厚めにし、長くすることで、漆への当たりかたを柔らかくします。しかし、それでは漆の塗りが厚めになってしまいます。芯まで十分に乾くには漆を出来るかぎり薄く塗ることが必要です。
安い刷毛は、使っていくうちにすぐに擦り減ってしまう。長い目で見れば、かえって高いともいえる。

毛が短く、柔らかいのに腰がある。塗り面と対立するのではなく、漆の厚さと対立するのでもなく、塗り面になじむように漆を残していくのが刷毛の役割です。
使う立場から言えば、それぞれの刷毛に合う微妙な長さや厚みの差を、実際に使ってみて感じ取り、手直しして使いやすいように直していくしかないだろう。
冬は漆に熱を加えて柔らかくするのでないかぎり、夏よりは腰の強い刷毛を使う必要がある。
流れの悪い漆を塗る場合は、毛が長めの刷毛を使う必要がある。
高岡漆器の彫刻塗りの場合は、彫りの隅まで漆を渡すためには、さらに毛の長い刷毛が必要になる。短い毛で無理に隅まで渡そうとすると、毛先が痛んでしまう。凸凹したものを塗ると、刷毛先の減り方がどうしても歪になる。

刷毛を傷める扱い方

◎切り出す時・・・斜めに削る時、刃物で慎重に削らない⇒#700ほどのペーパーや砥石で仕上げるようにする。
◎叩く時・・・最初から力を入れて叩く⇒欠けないように毛先が柔らかくなるまで慎重に
◎刷毛を洗う時・・・毛先に力を入れすぎる⇒大きく、ゆったりと動かしながら洗う。
◎固すぎる漆を無理に展ばしながら塗る・・・古くなった漆は粘りを持ちすぎる。
◎隅など、塗りにくいところに無理に漆を持っていく⇒粗渡しに少し多めの漆を持っていくor毛の長めの刷毛を使う
◎塗る場所と使う刷毛の形が違いすぎる・・・必要な刷毛の形を知り、いろいろ作っておく。
◎半年ほど使わない場合、刷毛に染み込ませている種油が古くなる⇒新しい種油で時々洗う。
◎使った後、根元付近を十分に洗ったり、拭いたりしない。

2001.10.16 久しぶりに泉清吉一寸刷毛を使おうとして、手で触ると根元が固くなりかけていた。十分に洗わないでしまっておいた為だ。木槌で叩くと、何とか使えそうになった。毎日使うなら、少しぐらい洗うのに手抜きしても問題ないが、、、 洗う時、45°くらいの角度で、とんとんと軽く叩く感じで漆が出てくるようにすることも必要だ。
この刷毛は、実際のところ、切り出すのが余りうまく行ってない。他にも、うまく切り出してないのがあるのだが、このままでも使えないことはないので、そのままにしている。

刷毛の切り出し方

「漆の技法⇒塗りに関する事」を見て下さい。
毛先となる部分を切り出し、水平になるように研ぐ・・・ペーパー#700ほど⇒砥石キング#1000ほど
、木から10mm毛を出すとして、その半分が毛先に斜めになるようにする・・・両側より対称を見ながら、塗師屋刀で削る・・・最終的に毛先幅が0.3〜0.5mm残るとして、少し余裕をもったところでやめ、ペーパーや砥石を利用した方が良い・・・斜めに落とし始めたところにできる角を丸く下ろす。
 *刷毛によって、砥石などで研ぐと、毛がぼろぼろになることがあるから、様子を見て縦に研ぐか横に研ぐか決める
 *泉さんの説明
毛先から10mmを測り、鉛筆で線を書く。塗師屋刀で線に沿って、少しずつ余分の木を削る。
 (慣れれば目測で十分である)⇒必要な長さの毛が切り出されたことになるから、斜めになる角を滑らかにし、きちんとした形にする。⇒細い部分の木も慎重に削り取る・・・切り出された毛の角を三方向より丸く落とす(面の交差する角を少し丸める)。
、下に硬い木(ケヤキなど)をおき、木槌や金槌(面や角がガタガタしていないこと)で毛先から慎重に叩き始める。手で触って少し柔らかくなったら、全体を平均的に叩くようにする・・・糊漆で固めてあるから、水を付けながら叩く方がよい。
、石鹸で洗ってゴミを出した後、毛を囲っている木の部分の刷毛付近を斜めに落とす・・・刷毛塗りで木の部分が塗り面に触れないようにするため。斜めの面に生漆を吸い込ませておく。

2002.1.18(金)追加
四に関して、どれぐらい叩けば柔らかくなるかは、刷毛によって異なります。
1987、8年頃、広重の大極上(1寸刷毛)を、金沢の高野漆行で買い、スクールで習った方法で刷毛を切り出していた。
 ノートが焼失して正確ではないが、1時間15分〜1時間30分叩き続けていた記憶がある。
たぶん1988年(1989年春かもしれない)、金沢の能作うるし店で、古いのがあると18,000円で「泉清吉一寸刷毛」(8世作)を売ってもらった。
 これも正確ではないが、15分程叩いて柔らかくなってしまったような記憶がある・・・少し余計にと30分程叩いたかもしれないが、、、「なんだ、これは」と、驚いてしまった。
 残念ながら、この刷毛も1989年の火事で焼失してしまったし、その頃の腕では、刷毛の違いは分からなかったと言える。
現在使っている刷毛など、ほとんどのものは1989年の秋以降に買ったものである。
 すぐ忘れてしまうので、これもあまり正確ではないが、20分〜30分叩いて、使えるようになる。
 余りに長時間叩くと、せっかくの毛が痛むような気がするので、今ぐらいが丁度良いのではないのでしょうか。
 塗りに使って、今の刷毛で不都合は別に無いですし、、、

刷毛切り出しの画像(2004.8.13)

刷毛の洗い方

漆を塗る前、刷毛に染み込ませてある種油をしぼり出す。
長方形の形で、厚み1mmほどのチシャの柾目の箆(ツゲが一番良いらしい−坂下先生)、先を丸い形にしておく。それを使えば、力は入るし、刷毛に柔らかくあたる。
増村先生や坂下先生は、そのまま漆をつけて、洗っていた。
輪島の漆芸研修所出身の越橋さんは、ホワイトガソリンか何かで種油分を抜き取ってから、漆をつけて洗っていた。
どちらにしても種油を十分、漆と混ぜることが必要である。
大きく動かし、刷毛の中からゴミを出す。出なくなるまで、漉した漆を換えながら、洗う。

使い終わった後、漆をしぼり出す。
種油をつけ、大きく動かして洗う。
余り漆が出てこなくなったら、刷毛同士で互いに根元を洗うようにする。
もう少し洗ったら、きれいな種油を根元まで十分つけておく。
木部(布貼り部)の種油をぼろで拭いておく−毛先に布をつけないように(ゴミをつけないため)

乾漆刷毛

増村紀一郎先生の研修会の時、参加者全員が買った。
乾漆用 半通し 壱寸

泉さんの説明のページにリンクさせておきます
  漆刷毛の紹介・・・いろいろな刷毛の説明。乾漆刷毛についてもスクロールすると出てきます。
  乾漆刷毛について・・・漆刷毛 徒然記
  漆刷毛の製作・仕事紹介・・・漆刷毛師 九世泉清吉

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