塗 り

塗りは、地研ぎの終わった物に中塗りをするのが最初である。
木地固めに生漆を摺り込む・・・切り出した刷毛や下塗り用の安い刷毛。
下地固めにリグロインで薄めた生漆を塗り、拭き取る・・・絵画用筆や筋交い刷毛。
蒔き地をするためにリグロインで薄めた生漆を塗る・・・同上

◎「漆の技法(泉清吉 1寸刷毛)」のページから
 「塗りに関する事」、「朱の上塗り」、「内側の塗り立て」へと進んで下さい。

習ったことをそのまま、何百回、何千回と練習すれば、一流の塗師になれるのだろうが、、、
どうしても少しずつ手抜きするようになる。
アクリル板で周囲を囲った中で、一回だけ垂れ漉しする、、、
どうせ空気中のゴミが付くだろうと、刷毛洗いも3〜5回ほどで済ませてしまう、、、
反省すべきだが、日本伝統工芸展に出品する作品で、
朱を3、4種のグラデーションに塗り分ける場合、
身だけ塗るにも2〜3時間かかるのでので、塗る準備の方を手抜きしてしまう。
塗る色の数の刷毛、それぞれの間をボカス刷毛、必要なら混ぜる刷毛、ゴミを拭き取る刷毛。

中塗り

地研ぎをして形が出来た後、中塗りをする。
形が決まらない場合は、中塗りと中研ぎを繰り返す。
研いだ形を崩さないように塗るのが、塗りの基本である。
出来るだけ薄く塗る・・・質の悪い漆を薄く塗ると刷毛筋だらけになり、よくない。
ゴミが付きすぎると、それも形を崩していることになる。大きなゴミだと、研いだときそれが取れてしまい穴になることがある・・・節抜け。

黒漆を灯油やテレピン油などで希釈して塗ることが多い。
どれ位の固さの漆を塗るかは、漆や塗る人の好みによって違うだろう。
箆から垂れる(10センチ高ぐらいから)漆で、茶碗の中の漆面に1秒あまりで径3cmほどの円を書くとして、垂れた時にできる盛り上がりが1.5cmほどで消えていくぐらいを目安にしている。気温によっても違ってくるが、、、

自分が持っている黒漆でも、佐藤喜代松商店MR漆はかなり湿度がないと乾かないし、余り湿度がなくても乾くのもある。

塗ることで見える形に注目しながら研ぎの作業をする。
適宜中錆びを見る。

研ぎできちんと合わせておいても、塗りを何度か重ねるうちに何時の間にか、どこかで合わなくなっていることがある。合わせるところは、研ぎ毎にチェックし直しておくべきである。

小中塗り

中塗りよりは少し厚めに塗る。
仕上げが朱の場合は、同じ色を塗る・・・塗り分ける場合は一番面積の広い面の色。
仕上げの感じが大体見えるようになる。

*朱の練り方は、漆の技法のページの見出し「朱練」をクリックして下さい。

*普通なら朱の流れ具合や乾き具合は、手板に少し付け、湿り風呂の中で確かめるだろう。
 ほとんどぶっつけ本番というやり方でする私は、3回程する小中塗りで、古い朱を混ぜたり、新しく練った朱を混ぜたりして、上塗りに適した朱を見つけ出すようにしている。

*合い口となる端、その付近の外脇は、垂れたり、ゴミが付いたりしたら狂いのもとになるから、厚く塗らないように十分注意すること。

上塗り

塗る前に生漆を摺り込み、拭き切っておくと、ゴミが付き難くなる。
多少の研ぎムラを直すことができる。

漆を塗る場合、高岡での塩多先生の講習会や赤地先生のビデオを見ていると、刷毛をかなり立ち気味に使っている。流れのよい漆を薄めに塗っていることを示している・・・増村一門よりは厚めではあるが。

*同じ刷毛で塗る場合でも、使う漆によって塗り上がりに違いがある。
 同じ漆を使っても、塗る刷毛によって綺麗に塗れたり、刷毛筋だらけになったりする。
 温度と湿度を同じにするとして、刷毛の状態で塗り上がりに大きな違いが出てくる。
 さらに塗る腕によって差が出てくる。

*塗る漆を粗渡ししながら、同時に厚さを平均に均すように延ばしていく。
 全体に渡ったなら、それを面ごとに均し、仕上げていく。

◎48回本展「乾漆水指」の、朱の塗り分け方(硫化水銀朱)

明るい朱は、黄口と淡口を混ぜた。
暗い朱は、本朱と赤口を混ぜた。
その中間は、上の二つを混ぜたが、暗い朱は重く沈みやすいので、暗い朱を倍くらいにしないと中間色にはならない・・・同量ぐらいだと、明るい朱とほとんど変わらないままである。

レリーフ状の線に沿ってどう塗るかが問題になる。狭い側の塗りは2分刷毛でし、ぼかしは3分刷毛でする。明るい朱は5分刷毛を使った。
蒔絵で線を描くばあいでも、一度に長く引くことはあまりないことをヒントに、1〜2センチぐらいずつレリーフに沿って塗りのばす感じで境を決めていくようにし、最後に一気にその線を塗り切るようにした。ぼかしも同じ感じでやり、さらに塗りで直す場合もあった。
余り塗り直すと、色が混じってしまうので、何度もやり直すことは出来ない・・・小中塗りの時に失敗しながら、感覚を身に付けておく。

漆刷毛・・・ほとんど広重 大極上 本通し、半通し、1/3通し(一部「藤井」印、一部作り変え)

右端 棗合口用
2分刷毛 3分刷毛

左端 泉清吉仕様(製作番号00789)
5分刷毛


8分刷毛 右端は6分刷毛

左端 泉清吉仕様(製作番号00788)
1寸刷毛


2寸刷毛を少し小さくする   1寸5分刷毛   1寸2分刷毛


内脇塗り用

刷毛

坂下先生の1寸刷毛

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