作業の記録を付けながら、麻縄でお茶用の椀を作っていく。漆で作るのは邪道だといわれるが、欲しいと言う人もいる。デジカメを持っていないので、画像は写真をスキャナーで取り込んだときに載せることになる。
2001.10.8(月) 麻紐巻
漆桶(100匁)にビニール紐(径3mmほど)を巻く・・・離型剤と内脇の模様作り。
側面より少し大きめの蚊帳布を切り、盤上に糊漆をひろげ布を置き、その上にさらに糊漆を渡す。
それをビニール紐の上に貼り付ける。径5mmほどの麻紐に糊漆をまぶすように箆でつける。
蚊帳布の上に麻紐を上から巻いていく。底には少し膨らむような何かを当て、ガムテープで固定しておく。
側面から続いて底も順に巻いていく。
巻きながら糊漆を紐の上に万遍なくひろげていく。以前は素手でしていたが、今は薄手のビニールの手袋を嵌めて作業をしている。
15分程したら、底を下にして置き、ガタがでないようにする。
*古い蚊帳、荷造り用紐を利用して作る。
*古い蚊帳を内に貼るのは、補強用。
*手袋についた糊漆を拭うためのぼろを用意する。
*灯油できれいに拭き取る。
2001.10.11(木) 離型
ビニール紐を引っ張り、抜き取る。底は左右に揺すって素地と引き離す。
*時間を置くことで、糊漆が十分乾くようにする。
2001.10.13(土) 布による補強(内側)
内底部分に、両側から糊漆を渡した(10月8日の盤上での作業)蚊帳布を貼る・・・縄胎椀Aとする。
*側面と同時に底に麻布を貼っておいても、麻紐としっかりくっつかない。
*底に麻布を貼るのは、補強用。ビニール紐(径1mmほど)を漆桶に巻き、もう一つ縄胎椀の素地を作る・・・縄胎椀Bとする。
2001.10.17(水) 刻苧
縄胎椀B・・・離型用のビニール紐を引っ張り出すも、隙間が狭いせいか、なかなか型(漆桶)から引き剥がせなかった。
内底に麻布(蚊帳)を貼る・・・刷毛で糊漆を素地に渡し、布を置き、その上からまた刷毛で糊漆を渡す。
*側面から顔を出して浮いている布を切り取る、ガムテープについていた糊漆の皮を取ってかかる。
*口のあたりの布を切り取り、布砥#40で丸くしてかかる。全体も。
縄胎椀A・・・裏側(底)と外側に、糊漆に麻を綿状にした物を混ぜたもの(刻苧)を刷毛で摺り込むように渡す。
*布砥#40や金ブラシ(動物の毛を撫でる物など)で空研ぎしてかかる。
*麻縄(麻紐)の隙間を埋めながら、その間を繋ぐため。
2001.10.21(日) 布による補強(外側)
縄胎椀A・・・空研ぎをしてから、外側の底と腰にかけて蚊帳布を貼る(補強のため)。
内側に貼った布の境付近に刻苧を渡し、段を消す。
*外脇(外の側面)にも貼っても良いが、縄目を生かすには、そのままでも良いと思う。
縄胎椀B・・・裏側(底)と外側に、糊漆に麻を綿状にした物を混ぜたもの(刻苧)を刷毛で摺り込むように渡す。
*布砥#40や金ブラシ(動物の毛を撫でる物など)で空研ぎしてかかる。
2001.10.26(金) 刻苧
縄胎椀A・・・空研ぎ。内側、端、外側の上2/3ほどに刻苧を渡す。
*内側の底に白いカビが生えていた⇒りグロインをかけ、空研ぎで消す。
縄胎椀B・・・空研ぎ。内側に刻苧を渡す。裏底の縄目の凹みがひどいので、もう一度刻苧を渡す。
2001.10.29(月) 荒らす
どうも湿っぽい感じのままである。
布砥#40で空研ぎする。乾いていない部分が、取れてくる。
次に紙砥#80で更に空研ぎする。麻の刻苧綿も糊漆と共に取れてくる。
縄目の凹みや隅に刻苧が厚く残りすぎていたのだ。
かなり荒らしたので、数日すれば乾くだろう。
2001.11.1(木) 刻苧
もう一度空研ぎする。
縄胎椀A・・・内隅付近、外側の底と腰の麻布とその段−刻苧を渡す
縄胎椀B・・・内隅付近に刻苧を渡す。
外側の底と腰に糊漆で蚊帳布を貼る。
*麻の刻苧綿を糊漆と混ぜる時、綿を細かくほぐさないでしてしまった-固まりができてしまった。
2001.11.4(日) 刻苧
縄胎椀B・・・裏の蚊帳布とそれを貼った段を、刻苧で埋める・・・細く、腰のあるチシャ箆(先丸)で少しずつ付けていく。
刷毛で付けるより、ムラなく、薄く付ける事が出来た。
*両方とも、内側に残る、目立つ段を刻苧で埋める。
2001.11.5(月) 荒らす
前日の刻苧部分を#80で空研ぎすると、乾き不十分で厚めのところが取れてくる。
2001.11.8(木) 穴埋め(防水)
両方とも同時作業。 軽く空研ぎする。
生漆に同量ほどのリグロインを混ぜる。混ざったら、更に3−4倍ほどのリグロインを加え、混ぜる。
平筆で薄めた生漆を素地に渡し、染み込ませる。吸い込んでいったところに更に染み込ませる。
内、端と染み込ませ、外脇の上半分ほどまで吸わせる。少ししてから、外脇の残り、裏にも染み込ませる。
端を下にした状態で湿り風呂の中に置く。一回目は吸い込むので表面の生漆をぼろで拭く必要はないだろう。
*素地の小さな隙間を埋めるための作業。
2001.11.10(土) 穴埋め(防水)
#80にて空研ぎ。ボンスターで全体を擦る。金ブラシで縄目の凹みの艶を消す。
⇒表面に細かい傷をつけ、漆のくいつきを良くする。
リグロインで薄めた生漆を平筆で全体に塗る。
⇒吸い込まれない漆をぼろで軽く拭き取る。
*素地の小さな隙間を埋めるための作業・・・2回目。
2001.11.16(金) 穴埋め(防水) 高台作り
◎内側と端・・・#80空研ぎ、ボンスター、金ブラシでくいつきを良くする。
→リグロインで薄めた生漆を塗り、吸い込まれないのを拭き取る。
*素地の小さな隙間を埋めるための作業・・・3回目。◎裏底・・・#80空研ぎ、ボンスター、金ブラシでくいつきを良くする
→麻紐を二巻(二段)分、切り、糊漆をまぶし、高台を作る。
→15分程後、水平なところに高台が下になるように置く。
*型は作らず、手で巻き上げる。
*暫く作業をしなかったのは、他の作品を作っていて時間がなかったため。
2001.11.17(土) 糊漆を乾かす
〔朝〕水平なところから、縄胎椀を左右に揺するようにして引き離す→高台を上にして置く。
〔夜〕高台付近の糊漆を空研ぎで荒らし、乾いていない部分を表面に出す。
2001.11.19(月) 穴埋め(防水)
高台をつけた隅を#80で空研ぎすると、縄胎椀Aの方がまだ乾いていなかった。
内側、端、外脇を空研ぎをするなどして、艶を消す。
→リグロインで薄めた生漆を平筆で塗る。
*素地の小さな隙間を埋めるための作業・・・4回目。外脇は3回目。
2001.11.20(火) 刻苧
高台の隅、二段に巻いた境に、先の丸い小さな箆で刻苧を渡す。
*補強のためである。刻苧綿・・・こくそわた
1・・・余った麻布の屑等を鋏で切って細かくする。糊で固めて、刃物で削る方法もある。
2・・・麻屑を水の中に入れ、ミキサーにかける。砂田の場合は、イワタニのミルサー。
3・・・ざるなどで水を切って、新聞紙の上などで乾かす。
4・・・もう一度ミキサーにかける。*きょう、もう一度ミルサーにかけると、本当に細く、細かくなった。
糊漆に混ぜると、均一にすぐ混ざった。
2001.11.21(水)
高台につけた刻苧を空研ぎをする→乾き不十分。
2001.11.22(木) 穴埋め(防水)
#80にて空研ぎ。ボンスターで全体を擦る。金ブラシで縄目の凹みの艶を消す。
全体(内、端、外脇、裏底、高台)にリグロインで薄めた生漆を塗る・・・(5、5、4、3、1回目)となる。
2001.11.23(金)
高台付近を#80にて空研ぎ。
*昨日、縄胎椀に使った麻紐、蚊帳布にリグロインで薄めた生漆を吸わせておいた。
→芯まで漆が染み込んでいた。弾力性は残っていた。
希釈した生漆が乾かないうちに糊漆で貼っていった場合、芯の漆分が乾くのかどうか?
染み込ませたのが乾いた後貼るのは、弾力性が足りず、浮きの元だろう。
2001.11.24(土) 刻苧
刻苧綿をミルサーにかけてかかる。
高台付近に刻苧を、先の丸い、小さいチシャ箆でつける。
2001.11.25(日)
#80で刻苧部分を空研ぎ→乾き不十分。
2001.11.26(月)
全体を空研ぎ。
縄目の深すぎるところに錆。
高台付近に刻苧(余った錆を少し混ぜる)。
2001.11.28(水)
空研ぎすると、錆は厚すぎたのか、乾いていない→→→縄目に深すぎるところが残っている。
刻苧は乾いていた。
2001.11.29(木) 高台の補強
高台の内側に蚊帳布を貼る。
2001.12.4(火)
高台の内側を空研ぎ・・・糊漆が厚すぎたのか、縄胎B−乾いていない。
2001.12.5(水)
縄胎椀B−かなり乾いたが、まだ不十分。
内側の深い凹みに刻苧・・・錆で埋めるには深すぎるところ。
高台の外隅の凹みに刻苧。
2001.12.6(木)
空研ぎ・・・乾き不十分=糊漆厚すぎのところを薄くすることで、乾くようにする。
高台を#80の上で回し研ぎし、水平にする。
高台の1段目と2段目がずれ過ぎているところを切り出しで切り取る。
目立つ凹みに刻苧。
2001.12.8(土)
空研ぎし、高台裏の布の上などに刻苧。
2001.12.13(木)
空研ぎし、リグロインで薄めた生漆を全体に吸わせる。
2001.12.26(水)
全体を空研ぎする・・・縄目の凹んだところの艶が消えるように。
*高台付近や刻苧で埋めたところは、まだ生漆を吸い込みそうに見える。
2001.12.28(金)
全体にリグロインを吸わせる。