木魚の修理 (2003.5.6 - 10.19)

下へ

5.6(火)

*木魚の修理…昨日、近所の人に頼まれました。

和紙が貼ってあり、それが剥がれてきているし、砥粉下地。どうする?

5.18(日)

*木魚の修理…浮いているところを切り出しで削り取る。
和紙が貼ってあるが、全てが浮いているわけではない。
塗膜はかなり浮いているが、砥の粉下地から剥がれてきている感じ−これが所謂、仏師(仏壇塗師)下地なのか?
漆の通常の下地をした場合、木魚の音が変わってしまうのだろうか?
持ち手のような部分が取れたのをくっつけてあり、小さい釘で打ちつけてあった−どう見てもズレている。
彫刻の彫りが合わないので、左右反対についているのではないかと見ると、その通りだった。
釘をバリで抜いたが、完全には抜けず。
貼り合せてある隙間に切り出しの刃を挟み、金槌で叩いて分離する。
今までと逆にあわせると、彫刻も丁度合う−接着剤を削り取る。
セメダインのスーパーXで貼り合せる−10分ほど放置し、合わせ、力をいれてくっ付け、ズレが無いよう調整する。

5.19(月)

〔木魚の修理〕接ぎなおしたところに刻苧。

彫刻が合ってない。
彫刻が合っている。

5.20(火)

〔木魚の修理〕接ぎ直した部分の刻苧を空研ぎ−乾き不十分。

5.21(水)

〔木魚の修理〕接ぎ直した部分の刻苧を金箆で擦る−大体硬化しているようだ。
仏師下地が、代わりに剥がれてくる事がある。

5.25(日)

〔木魚の修理〕接ぎ直したところに刻苧。

5.26(月)

〔木魚の修理〕全体を空研ぎ。刻苧も乾いている気がするが、、、

5.27(火)

〔木魚の修理〕リグロインで薄めた生漆を吸わせる。内側にも十分渡るように筆で流し込む。
余分の生漆を拭き取る。

刃物を少し研ぐ。
刻苧綿を少し作る。

5.28(水)

〔木魚の修理〕#180で空研ぎすると、緑・黒色で多くの部分が剥がれてくる。
本朱部分は、そんなにも剥がれてこない。#500で水研ぎしてみる。
浮きが見え出す−特に砥の粉の厚みが厚すぎるところで。

薄く湿らせると、浮き上がる。
乾くと、見えにくくなる。

結局、金箆で削りまくる。 まだ足りない?
上下の黒っぽく見えるところが、リグロインで薄めた生漆が吸い込まれている木部。

*職人でも作家でも、これだけの仕事をしておけば大丈夫と言う人が多いが、何を根拠にしているのだろう。
これを作った人も、大丈夫と考えたのだろうが、叩くという実用には不十分だったことを結果として示した。
*昔、仏壇の修理の一部を委託されたことがあったが、木に直接漆が塗ってあることが多かった。
生漆で固めるとか、布を貼るとか、基本的なことが省略してあった。
全ての塗膜を剥がす事ができるわけではないし、まともな修理さえ出来ない仕事がしてあっただけだ。
*木に直接漆を塗って、「・人」と自称している人物がいたが、その自信はどこから来ているのだろう。
*今回の修理にしても、刻苧をどこまで使ってもいいか、自分の経験では分からない。
音が変わってしまうのではないか、との恐れである。丈夫さだけなら、使うに如くはない。
暫く漆を塗ることがないようなので、漆を漉す機会はもう少し後になります。

5.29(木)

〔木魚の修理〕凹みの目立つところに刻苧。
叩く場所には、使用せず。

5.30(金)

〔木魚の修理〕刻苧を空研ぎ。
リグロインで薄めた生漆を吸わせ、余分な漆を拭き取る。

5.31(土)

〔木魚の修理〕軽く空研ぎ。
刻苧+錆(透き漆を少々混ぜる)で、削ったところなどを埋める。

6.1(日)

〔木魚の修理〕かなり空研ぎ。
凹みに錆。全面的にではない。
*刻苧綿を混ぜた辺りは、音が少し鈍くなったような、、、

6.2(月)

〔木魚の修理〕錆を荒砥で水研ぎ。
また朱が浮いてくる。研いで、剥がす。
リグロインで薄めた生漆を吸わせる。

6.3(火)

〔木魚の修理〕6.1の残していた部分を中心に、目立つ凹みや穴に錆を見る。

6.4(水)

〔木魚の修理〕錆と頭の形に見えるところを荒砥で水研ぎ。
朱が浮いてきたので、砥石で取ろうとしたが、十分に取れなかったので、刃物の先で削る。
リグロインで薄めた生漆を吸わせる。
砥粉に十分吸わせているつもりだが、砥ぐと水を吸い込む。
*木に十分漆が吸い込まれていれば(その前提として、木が十分に涸れていることが必要である)、木に漆を塗ることも許されるとは思う。しかし、なかなかうまく吸い込まれない。剥離の原因になる。

6.5(木)

〔木魚の修理〕錆を見る。

6.6(金)

〔木魚の修理〕錆を荒砥で水研ぎ。
また朱が浮いてくる。研いで、剥がす。刃物でも削る。
リグロインで薄めた生漆を吸わせる。
*同じ作業を繰り返すことの意味は、どこにあるのだろう?生漆が思うほど吸い込まれていかない。

6.7(土)

〔木魚の修理〕塗膜が浮いているのが分かる部分を削る。

6.8(日)

〔木魚の修理〕砥の粉は、浮きの原因!
ノミで少し削るが、疲れたので、休止。

6.10(火)

〔木魚の修理〕砥の粉を取り除く為に荒砥やペーパー#180で水研ぎ。
砥粉はなかなか取れてくれない。水でぬれているとき、荒砥で削るとすぐ取れる。

6.11(水)

〔木魚の修理〕砥の粉を取り除く為に荒砥やペーパー#180で水研ぎ。

6.13(金)

〔木魚の修理〕ペーパー#180で水研ぎするも、なかなか砥粉が取れてくれない。

6.15(日)

〔木魚の修理〕ペーパー#80で空研ぎする。頭蓋骨の感じのところの木を出す。

*空研ぎしたところにリグロインで薄めた生漆を吸わせる−乾漆、木魚とも。

6.16(月)

〔木魚の修理〕ペーパー#80で空研ぎする。彫刻刀で削ったムラの部分の木が顔を出す。
リグロインで薄めた生漆を吸わせる。

6.17(火)

〔木魚の修理〕ペーパー#180で空研ぎする。
凸凹になっているので、錆を箆付けする。

6.18(水)

〔木魚の修理〕布砥#40で空研ぎする。まだ木が顔を出す部分があった。
リグロインで薄めた生漆を吸わせる。布で拭き取る。

6.19(木)

〔木魚の修理〕#180で空研ぎする。
彫り傷が目立つところに錆。

6.20(金)

〔木魚の修理〕#180で空研ぎする。
凹みの目立つところに錆。

6.21(土)

 

〔木魚の修理〕#80で空研ぎする。
凹みの目立つところや木が出たところに錆。

6.22(日)

〔木魚の修理〕#80で空研ぎする。
凹みの目立つところや木が出たところに錆。

6.23(月)

〔木魚の修理〕荒砥で水研ぎ。
木が出たところを中心に、触ってでこぼこしているところに錆。
錆を合わせる。

6.24(火)

〔木魚の修理〕余った錆を木の出たあたりにつけておく。

6.26(木)

〔木魚の修理〕荒砥で水研ぎ。 錆を見る。

6.27(金)

〔木魚の修理〕荒砥で水研ぎ。 リグロインで薄めた生漆を吸わせる。
*梅雨のように漆がよく乾く時は、溶剤が何であろうが、乾くのに大きな差は出てこない。
 湿気の少ない時に、リグロインとの乾きの時間差は、非常に大きい。

6.28(土)

〔木魚の修理〕#80で空研ぎ。切り子地を本体部分に刷毛付け。

6.29(日)

〔木魚の修理〕荒砥で研いで、リグロインで薄めた生漆を吸わせる−下地固め。

6.30(月)

〔木魚の修理〕持ち手側に少し錆。ガタガタの所を空研ぎすると、またも砥粉。

7.7(月)

〔木魚の修理〕#280ほどの人工砥(小)で、生漆で固めた面などを水研ぎ。

7.9(水)

〔木魚の修理〕研いであったところに、リグロインで薄めた生漆を吸わせる。

7.20(日)

〔木魚の修理〕静岡炭で生漆固めのところを研ぐ。
〔木魚の修理〕木魚の本体に黒漆塗り。29.5℃、58%。
*除湿機を使ったが、あまり湿度が落ちない。工芸高校の時並みに、漆はすぐ締まった。
中塗りなので、出来るだけ早く乾いてほしい=エアコンは使わない。

7.21(月)

〔木魚の修理〕少し縮み(彫刻のところはかなり)。少し錆をみる。

7.23(水)

〔木魚の修理〕木魚の本体を#360ペーパーで研ぐ。荒砥の研ぎ目がなかなか潰れない。
木魚の本体に透き漆塗り。28℃、60%。塗り2回目。

8.7(木)

〔木魚の修理〕木魚の本体を#500ペーパーで研ぐ。
赤口で小中塗り。32℃、62%をエアコン除湿で26℃、46%(風呂の戸を閉めて、50%・・・)

8.8(金)

〔木魚の修理〕朝27℃、57%、光ったまま。下のスポンジに水を含ませると、暫くして60%。
     夕30℃、67%、しまっていた。2ヶ所に縮み、削り、朱を薄くわたしておく。

8.9(土)

〔木魚の修理〕薄く朱を渡し、ツヅクリしておいたところを研ぎ、生正味漆をめすっておく。
*上塗りには返しをとらざるを得ないので、上向きに支える事が出来るような道具を作る。
板に棒を二本取り付け、その間で支えるだけのものです。

8.10(日)

〔木魚の修理〕*盆の間、木魚を使いたいというので、暫くの間、近所の家に戻しました。

8.27(水)

〔木魚〕*盆の間戻していたのを、今朝持ってこられました。

8.28(木)

〔木魚〕一部、垂れて、縮み。

8.31(日)

〔木魚〕持ち手の感じのところを砥石で研ぐ。

9.6(土)

〔木魚〕黒漆で持ち手の感じのところに中塗り。

9.8(月)

〔木魚〕黒塗りのところを砥石で研ぐ−隅はかなり縮んでいた。

9.11(木)

〔木魚〕もう少し研いでから、持ち手の感じのところに黒塗り。

9.16(火)

〔木魚〕持ち手の感じのところを静岡炭で研ぐ。
錆をみる。

9.19(金)

〔木魚〕持ち手の感じのところの錆を砥石で研ぐ。
黒漆塗り。

9.21(日)

〔木魚〕朱塗り(本体部分)を静岡炭で研ぐ。
8.31に練った漆とそれまでの漆を混ぜ、漉す。
朱の上塗り。返しを取る。22℃、65%。
*乾かない感じがしたので、下のスポンジに水分。68%に。

9.22(月)

〔木魚〕朱塗り・・・朝20.5℃、69%光ったまま(上向きに置く)
夕24℃、73%光ったまま(下向きに吊るす)
*時々加湿し、80%ぐらいになるようにする、、、11pm頃まで。

9.23(火)

〔木魚〕朱塗り・・・朝70%光ったまま。加湿シートに電気を通し、80%。
9am頃やっと艶が落ち始める。一日、80%前後になるよう、電気を入れたり、消したり。

9.24(水)

〔木魚〕朱塗り・・・夕、取り出し、手に取ってみると、持ち手付近に大きな垂れ、縮み。
全体的に黒っぽく、厚めのところが少し黒い。
乾く前に返しを取っている時に、板か何かに触れたのか、漆が5センチほどえぐられていた。
縮み 

*がっくりと来た。返しも戸を開けないでする工夫が必要だ。
*アリ溝に棒を通し、それと今までの返し用支えを固定するべきだ−アリ溝に通す棒を1本にするか2本にするか?
*湿度も75%ほどに維持して乾かすべきだ。
*塗りは、もう少し薄くてもよいようだ−下の色が透けて見えるので不安になって少し厚くしてしまうのだ、朱の場合。

9.25(木)

〔木魚〕朱塗り・・・昨日に続いて、ちぢみのところを軽く研いでおく。
返し用台の裏にアリ溝に引っかかる棒をつける(ネジとボンド)。
上向きのアリ溝の右の溝、その3つ左の溝に対応している。

9.26(金)

〔木魚〕朱塗り・・・縮みのところを軽く研いでおく。
返し用台に生漆を吸わせ、拭き取る。

9.27(土)

〔木魚〕朱塗り・・・静岡炭で研ぐ。#1200ペーパーで滑らかにする。

9.28(日)

〔木魚〕拭き掃除、掃除機。返し用台に木魚を紐で固定etc
朱に木地呂漆を少し足して、垂れ漉し。
朱の上塗り−八分刷毛、五分刷毛、2分刷毛。
30℃、60%から徐々に湿度が上がり、70%(3時間後)。
*下のスポンジには、たっぷりと水分を含ませてある。
(7時間後)27℃、70%余り(湿度を落とすため、隙間をあけている)。

 今回はどうなりますか?

 

9.29(月)

〔木魚〕*昨晩は11:40頃まで返しを取る。
*今朝は22℃、73%ほど。色が落ち始めている感じ。
*夕、25℃、72%ほど。かなりしまっている感じ。
失敗しているかどうか分からないが、80%ほどまで加湿。

9.30(火)

〔木魚〕*割合上手く塗り上がったようだ。

10.4(土)

〔木魚〕返し用板から外す。
持ち手の感じの黒塗り部分を研ぐ−名倉砥、静岡炭。

10.5(日)

〔木魚〕掃除をする(掃除機、水拭)、シートを吊るす。
朱以外のところに黒漆(能作日本産)で上塗り。
26℃、45%。戸を閉めると55%。(昼過ぎ)
(7pm)23℃、62%で、もうしまっていた。
目のところは塗ってない(金箔を貼る)。

 

10.6(月)

〔木魚〕*黒に僅かの垂れ縮み一ヶ所。愛嬌か?→CDに保存した写真を見ると、金箔を貼る場所だった。

10.8(水)

〔木魚〕彫刻部分で朱だったところに、蒔絵筆で朱を塗る。一部、つづくり。
*黒塗りの別のところにも縮み−研いでおく−これもつづくりで大丈夫か?

10.9(木)

〔木魚〕朱が乾いていない−25℃、67%ほど。
*夜、下のスポンジにまた水をたっぷりと吸わせておくも、24℃、68%、、、

10.10(金)

24℃、70%、まだ湿っぽい感じで、乾き悪い。
少し加湿してみる。

 

10.12(日)

〔木魚〕透き箔下漆を黄軸で塗り、金箔を貼る。

10.13(月)

〔木魚〕一ヶ所触ってしまっていたので、金箔貼り直し。
砥石を滑らせて傷つけていた部分を研ぎ、黒漆塗り(黄軸)。

10.15(水)

凹みを研ぎ、黒でつづくり。
これで作業は完了の予定。

10.16(木)

まだ凹みが残ったので、もう一度つづくり。

10.18(土)

修理が完了したので写真を撮りました。

 

10.19(日)

朝、近所のお宅に届けました。
これでこのページは完了です。

上へ

仕事Vへ(2003.8.7まで)  仕事Wへ(2003.8.7−)

修理の記録

分岐図へ

ホームへ