箆付け
輪島のように分業体制が確立している産地の技術を身に付けようとしても、無理がある。
少しでも近づけるようにしながらも、研ぎで直すしかない。
ここで扱おうとするのは、下地の刷毛付けと下地の箆付けの違いである。
箆の持ち方には、輪島のように、親指と人差し指の間の付け根で、箆の細くなっているところを支え、手首の腰を使う方法と、人差し指と中指で上から持ち、下から親指で支える方法と、二通りがある。
どちらでも良いが、前者は力が入るから、きちんとした平面を作るのに向いている。
後者は、細工的な作業に向いている。
刷毛付けは、面の形に沿って下地が付いていく。角は薄くなる。
箆付けは、当然、面の形と無関係ではありえないが、厚さの調整がしやすい・・・穴を埋めたり、形を作ったり、、、
平面への箆付け・・・平面の作り方
修理品などの場合、長い年月で木地自体が歪んでしまっていることが多い。
これを下地を一回付けたり、大きい砥石で研いだだけで直せると思ったら、大間違いである。
下地を箆付けすることで、少しは歪みを直すことになる。
大き目の砥石で研ぐことで、歪みの谷に当たるところに下地が残る・・・少しは歪みが直る。
下地の箆付けと大きめの砥石での研ぎの繰り返しを五回ほどすることで、何とか平面を作ることができる。
ここで問題となるのは、そうして作られた平面に、果たして耐久性があるのかということだ。
リグロインで薄めた生漆を吸わせることで、かなり強くなるだろうが、それで良いのだろうか?
丸物への箆付け・・・棗のような形の底付近(地ずり)の直し方
キチンとした砥石で、出ている所を研いでかかる。
轆轤にキチンと中心を合わせ、両面テープなどで固定する。
箆を立て気味に、錆を地ずり付近にわたす。
箆を寝かしぎみに、轆轤を回して錆下地を均す。
底側から、はみ出た錆を切る。腰側の境もさらえ取っておく。
裏底への箆付けも、同じ要領でする。
腰あたりは、地ずりから少しずつ回りながら下りてくる感じにすればよい。狂いがひどい場合は、空研ぎし、箆付けを繰り返す。
たいしたことがない場合は、キチンとした研ぎをし、状態に合わせて直していく。