Q&A

2001年11月3日に高野漆行に車を預け、石川県立美術館へ「日本伝統工芸展金沢展」を見に行った。
戻るとお客さんがいて、Yさんだと紹介してもらう。今年の富山支部展に出品されていた乾漆盛器を思い出した。
仕事はコンピューター関係だそうで、倉嶋さんから私のホームページのことを聞き、見ているとのことだった。
その時何か説明不足があるようなことを言われたので、Eメールで質問して下さいと書いたわけです。
回答できたものだけをコピーして、掲載します。(2001.12.10開設)  
*は、後から補ったものです。

質問があればどうぞ

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〔ア〕

色漆の乾燥

〔カ〕

貝の貼り方
カシュ−塗り(漆との違い)
かたい漆について
乾漆彫刻について
乾漆の材料の手に入れ方
乾漆の布について
黒漆

〔サ〕

錆が乾かない
サフェーサーについて
下地の方法
漆芸キット
朱の混合比・練り方
砂田の本業は?

〔タ〕

溜め塗り
砥石について(古い漆についても)
研ぎにくいところの研ぎ
どんぶりの掃除

〔ナ〕

梨地塗り

〔ハ〕

刷毛直り(流れ)が悪い
刷毛のゴミ
箱物の塗りについて1
箱物の塗りについて2
ひび割れについて
節上げ

〔マ〕

〔ヤ〕

〔ラ〕

リグロイン
蝋色
蝋色の工程について

〔ワ〕

(2004年)

 

Q:内(風呂へ入れない;25℃、60%)だと色漆がいつまでも乾かず、   風呂に入れると今度は早く乾燥して色漆の色が濃くなりすぎるようです。   (ベージュの漆はチタニウムと黄色の顔料を朱合漆に入れて作っています)。   また上手く乾燥しても蝋色の工程で生漆の拭ききりが上手くいかず、   どうしても暗く濃い色になってしまうようです。

A:ご質問のことですが、かなり難しいことだと思います。 漆によって乾き方が違う=付けを取って乾き具合を知るしかない ということになります。  
湿り風呂でしている湿りをまずほとんど止めてみる。
密閉した空間の中では、普通の室内より湿度が高くなる
と言うより、湿度が安定するから、湿度が無い部屋よりは湿度が高くなる。 逆に、梅雨なんかは湿度が低く保たれる。 そのときの乾き具合を見る。   まだ乾きが悪い場合は、湿りの水分を普通にしている半分ぐらいにしてみる。 普通は、これぐらいで乾いてくれるはずです。 8時間から1日でほとんど乾くようになればよいと思います。 湿度の急激な変化は避けた方が良いです。  
付けの見方は、湿り風呂(高さに差があるなら、上と下の2箇所)、室内、できれば湿りをしてない湿り風呂で 色漆の乾き具合をチェックする。時間と色の変化。   乾燥が上手くいったかどうかは、なかなか難しい。 2日ぐらいまでに乾いたのなら大丈夫でしょうが、 それ以上かかると、完全乾燥にはなかなかならないと思います。  
色漆の蝋色の拭き切りに関しては、1回目は何倍かの灯油で薄めた生正味漆を渡し、 脱脂綿とかでだいぶ拭き取り、最後はティッシュを何度か変えて拭き切ります。 色漆の乾きが完全なら、同量ぐらいでも良いと思います。 それを完全に乾かしてから、次の摺り漆にかかります。 そのときは、前回より灯油の量を減らし、漆分を多くします。  
色漆を丁度1日ぐらいで乾かす or 摺り漆を灯油で薄めにする それを目指すことだと思います。

Q:呂色の工程に問題はないでしょうか?

A:基本的に、蝋色工程で直す凹凸は、ゴミか刷毛筋だけです。 地研ぎの段階で、基本となる面を作っておく必要があります。 中塗りをし、より滑らかな面にする為、#600ほどのペーパーで研ぎます。 (静岡炭で研ぐのが面を作りやすいので正しいのですが、ペーパーでも良いとは思います。) 中塗りを数回するつもりなら、#360、#500、#700、#1000などの順に塗り、研ぎを繰り返したりも出来ます。 上塗りが終わったら、蝋色工程です。   大き目のゴミがある場合は、ペーパー#1000ぐらいで軽く頭をはつり、湿りに入れ乾かします。
静岡炭でゴミを潰しながら、刷毛筋も、あまり力を入れないで消していきます。
ペーパーの場合は、#1000で、大体刷毛筋が消えるまで、あまり力を入れないで研ぎます。
その後、蝋色炭で静岡炭の研ぎ足を消すように研ぎます。 ペーパーの場合は、#1500とか#2000とかで研ぎます。 この後、生正味漆を摺り込んでおき、湿りの中で乾かした方が良いでしょう。
(朱の場合は、上手くいかないときもあるので、蝋色炭による研ぎの前の方が良い)
 
胴擦りのコンパウンドは、極細を使います。 普通は、油砥粉(砥粉を潰したのと種油を混ぜ、練る感じにする―コンパウンドのように。 磨くのは、モスリン、脱脂綿、フェルトなど、深い傷がつかなければ、使いやすいものでよいと思います。 粗めの布から、最後にフェルトと、傷を浅くするようにするときれいになりやすいです。 極細コンパウンドには、シリコンが入っていて、良くないので、超微粒子コンパウンドで磨き重ねます。 油砥粉の場合は、台所洗剤で洗います。超微粒子コンパウンドで磨き重ねても良いです。
超微粒子は、洗わなくても良いです。(ノンシリコン)
  摺りをし、乾いた後、摺り落としです。 角粉、歯磨き粉、三和胴擦り粉(緑、白)、チタン白などを使います。私は三和胴擦り粉(緑)を使います―高野漆行。 種油をつけ、摺りを落としますが、粉によって、油との比率、力の加え方が少しずつ違います。  
傷が目立つとすれば、一番多いのが、静岡炭の研ぎが面にピタリと合っていなかった、傾いて研いでいた場合です
蝋色炭による傷もあります。#1500ペーパーも、どんなに注意しても傷が残り、胴擦りによる磨きこみが必要になります。
更に胴擦りに力が入りすぎたり、何らかのゴミが絡んできて傷になることもありえます。 摺り落としでも、力の具合、磨き過ぎなどで傷を残すこともあります。

Q:貝について

A:高岡漆器で、カシュ―ではなく、漆の仕事の場合、厚貝は糊漆で貼ります。 貝の隅が縮みやすいので、錆で隅を埋めてかかります。
高岡は
薄貝がほとんどで、貝屋さんは膠で貼ります。 漆で貼るのは、実際には、かなり難しいのです。 漆を塗ってすぐ貼ると、貝の周囲の空気に触れる場所しか漆は乾きません。 貝の下はいつまでたっても湿ったままです。 大きい貝の場合は、割貝にする必要があります。 時間が無いとか、沢山貼るとかの都合で、そういう貼り方になります。 正しくは、漆を塗り、湿りなどにおき、かなり粘ってきた時、
更に乾いてもう少し遅れるとくっ付かなくなる時です。
曲面の場合、漆で貼るときはそのタイミングしか上手くいきません。

Q:本堅地法の全ての過程を行おうとは思っていないのですが・・・

A:下地仕事でどれが正しいか。多分、人や産地によって言うことが違うと思います。
できるだけ薄く痩せこまない層を作るのが下地仕事の理想だと思います。 生漆の比を強くすると、膿みやすくなりますから、一度に付ける厚さはかなり薄くする必要があります。 私は布目摺りの上には、目の粗めの(2辺地ぐらい)地の粉と糊漆を混ぜた下地を付けることが多いです。 空研ぎし、細かめの(3辺地)地の粉と糊漆を混ぜた下地と錆地を混ぜて切り子地を作り、切り子地付けをします。
*最初の2辺地での下地が残っていれば、それも混ぜたりします。
*切り子の語源は分かりません。刻苧に混ぜる木の粉(語源的には、木を切って出てくる粉―切り粉―だとおもいます)からの誤用?
布目が埋まったどうかで、判断します。 埋まった時は、荒砥(中砥でもよいと思いますが)で水研ぎし、平面を作ります。 多分布が顔を出すと思いますので、生漆を吸わせます。
錆下地付けをして、研いで・・・下地だけの薄い膜が出来れば完了となります。
*水研ぎした後は、生漆を摺りこみ拭きとって、下地固めをしたほうが強い下地になります。

Q:ひびわれが生じてしまいました

A:私もスーパーで安く買った竹網の皿に漆を塗ったことがあります。
編み目のところや縁周りの竹と組んであるところに亀裂が走りました。
竹網が動く所為だと気付き、麻紐で素地が動かないように補強しました。
一般的に断定することは出来ませんが、 ひび割れ素地と呼びうる本体が動く状態で、 固い漆(下地、漆に関わらず)との間にズレが生じた為ではないかと思います。 素地と関係ないほど漆だけで出来た層が強くなっているなら大丈夫でしょうが、 なかなか難しいでしょう。  
麻布と漆の組み合わせが、予想外に脆いと今年気付きました。 布目摺りをしたり、リグロインで薄めた生漆を吸わせると (強くなると思っていたのに)、尚脆くなってしまう傾向にあるようです。 てこの原理のように、脆くなったものとくっ付く麻布は破れやすくなるようです。 脆くなったものとくっ付いた場合と、くっ付かない場合を比較すると、 同じ布では、前者の場合、より破り易くなる感じがします。  
素地がゆるゆるしている場合も、漆だけの層に、より悪影響を与える気がします。 麻布をバイアスに貼ることで竹網の揺らぎをある程度押さえることが出来る気がします。 漆は強いという考えが工芸の世界では支配的ですが、 漆の適正を生かしたときにのみそう言えるのだと思います。 自然素材を活かすというのは、口で言うほど簡単なことではないと思います。 先の長い世界です。

ひび割れがいつまでも出てくるのは、下のほうに亀裂が残っているからかもしれません。 地震の被害が大きくなる断層のようなものが下にあるのかもしれません。 乾漆で素地の仕事が終わり、強い熱処理をすると、下地の層が割れてくることがあります。 これは熱による動きが違う為、断裂ができるのですが、これはリグロインで薄めた生漆を何回か吸わせると直ります。 以前は、下地を剥ぎ取ったり、割れたところの溝を彫って太くし、刻苧をしたりしていましたが、そこまでしなくてもよかったようです。  

Q:漆屋さんに、素人は蝋色うるしで艶をつけるのは難しいから、塗りたて漆を研いで、磨いて仕上げた方がいいよと言われました。   なぜなのかさっぱりわかりません。 蝋色漆って、蝋色する為の漆なのになぜなんでしょう?教えてください。

A:素グロメ漆を除いて、呼び名はどうあれ、漆屋さんによって、いろいろ何かを混ぜているそうです。
蝋色漆といっても、やはり少量の油(具体的にどういうものか、分かりませんが)が混ざっているそうです。
油入りの塗り立て漆は、最大3割の油が混ざっているそうです。
 
油入りの塗り立て漆というのを使ったことがないので、蝋色が上がるかどうか分かりません。 桂宮杯の修理をしたとき、光って柔らかい不思議な朱が塗ってありました。 割合楽に蝋色が上がったような記憶があります。
自分で塗り直した部分は、なかなか蝋色が上がらなかったという気がします。

違いは、蝋色漆として売られている漆は固く、強い 油入りは柔らかいまま(弾力性があるかどうかは調べていません)で仕上がることだと思います。   蝋色とは、蝋で磨いたような艶を上げる意味です。
その艶を何によって出すか、の違いだと思います。

蝋色漆は、胴擦り後、生正味漆の極薄い膜を残すことで艶を出す。 朱の蝋色の場合、そのことが一番分かります。 油を利用しはしますが、艶は漆で出します。 固く、強いはずです。
油入り塗り立て漆
で艶が出るとすれば、漆の中の油によって光るのではないでしょうか?
もともとの漆も弱くなっていて、たぶん油の所為で、生正味漆の膜が出来ないのではないでしょうか? 断定は出来ませんが、たぶんそういうことだと思います。  
正統な漆の仕事としての蝋色は、生正味漆の膜を作ることで上げるものだと思います。 胴擦りをきちんとしないと、綺麗な面にはなりません。 (前提として、蝋色研ぎをきれいにし、傷を残さない) 塗り面が乾きすぎると、生正味漆が浸透せず、蝋色が上がりません。 塗りから数日以内に仕上げると、蝋色は上がり易いです。 胴擦りをしたら、連続的に艶出しの作業をすることです。

(2003年)

Q:近代(明治以降)日本における乾漆彫刻の歴史や、特に白嶺と乾漆との関係を示す資料があればご教示下さい。

A:残念ながら、私には分かりません。
私の乾漆の知識は「日本の美術 乾漆仏」(久野健 至文堂)に主に依存しています。 読んでもすぐ頭から抜けて行きますので、少し読み返してみました。
p61に、脱乾漆像から木心乾漆に変わった理由(推定)が書いてあります。

次のページから木心乾漆像の説明になっています。
p85からの阿修羅像を再現された小野寺さんは
・・・ 
インターネットで検索すると、 富山県との関係では、
八尾町の「おわら踊り」
http://www.town.yatsuo.toyama.jp/YATSUO/SIRYOKAN/SIRYOU/13_4.html
松村外次郎が内弟子となったようです。
http://www.town.shogawa.toyama.jp/kyoumuka/bijyutukan/jyosetu/nenpu/nennpu.htm
庄川美術館には、松村の作品は展示されていますが、 吉田白嶺関係の資料があるかどうか分かりません。

*調べたことを少し纏めましたので、どうぞ。
「乾漆彫刻について」(2004.1.2- )

Q:についての事です。まず種類と特性について、それと、流れをよくする配合比など、あと一番基本の、練り方を詳しく教えてください。

A:朱は、私の場合は、日華の硫化水銀朱(辰砂)を使うだけといって良いくらいです。 この前、高岡工芸高校に行ったときは、王冠朱(硫化カドミウム)を使っていました。 他にも朱の粉があるかもしれませんが、分かりません。 王冠朱は、少し練るだけで塗ることが出来る状態になるようでした。 発色のムラも無いようでした。 楽かもしれませんが、ごまかしみたいで、好きにはなれません。 見た目に透き漆:王冠朱を3:1ぐらいを準備し、粉を出来るだけ少ない漆で固め、 箆からトロッと垂れるぐらいまで練り合わせ、残りの漆と混ぜるだけでよいようでした。
水銀朱は、私の場合、
重量比で1:1で作ります。 粉と出来るだけ少ない透き漆で固まりを作ります。 それをポマードの瓶の底とか、数センチ角の棒で作った練り棒などで練りこんでいくわけです。 時々練り棒についた漆を箆で浚え、ガラス板上の漆に混ぜます。 これも、トロッと垂れるまで練り込むことになりますが、1時間ぐらいかかります。

水銀朱(硫化水銀朱)には、重い方から、 本朱、洗い朱(赤口)、洗い朱(淡口)、洗い朱(黄口)があります。   透き漆(朱合い蝋色漆、木地呂漆など、呼び方はいろいろあります):水銀朱の重量比 私は 1:1 展覧会など、発色を良くする為 1:1.2 乃至 1:1.4 (漆は質の良いものを使う) 実用に耐える品は 1:0.8 (発色は良くない) 経験的には、 1:1で良いと思います。 透き漆に関しては、高野漆行の中国産朱合い蝋色漆と日本産木地呂漆ではかなり違います。 重量を測った場合、木地呂漆の方が見た目の量が多いです。 多分ウルシオールが成分の中では、軽い方なのだと思います。 ウルシオールの多い木地呂漆が比重が少ないので、同じ重さになるまで、余計量がいるようです。 重量比というのも、どこか変だと感じる点です。

水銀朱の発色を良くする方法は、ゆっくりと同じペースで乾くようにすることです。 流れを良くする方法も、乾かし方としては、あまり湿度を変化させず、同じペースで乾かすことです。 使う朱漆の乾く湿度を経験によって、ある程度知っていることが必要です・・・付けをとることで知る。   朱を練る漆によっても、流れは違ってきます。 高野漆行の木地呂漆は、中国産の朱合い蝋色漆よりは流れが良いし、上品な艶が出てきます。   古い漆のうち、赤口・本朱は、非常に流れが良いです。 黄口は古くても、流れは良くないようです。 邪道といえるかもしれませんが、自分で発見した方法を書きます。 私の朱色は、いろいろの朱(黄口・淡口・赤口・本朱)を適当に混ぜて、 新しい朱色が出来ないかという事で塗られています。 そのとき、見た目の量を混ぜても、期待した色は出来ません。 重い朱(本朱・赤口など)は、乾くまでの間に沈み、予想より明るくなってしまいます。 黄口などに、2割ぐらいの、古い重い朱(流れがよい)を混ぜると、 発色にはあまり影響なく、流れが良くなる感じがします。 後は自分でやってみて、配合比を知るしかありません。 練って半年ぐらいたつと、乾きの悪くなった朱漆となる感じがします。

Q:リグロインについて教えていただきたいことがあります。 生漆をテレピン油で希釈した場合と、リグロインを使用した場合とでは、生地にむったと記の浸透性は相当違うのですか? リグロインは、テレピン油と比べて揮発性が高いのですか?

A:浸透性に関しては、希釈する濃度に、かなり関係があると思います。 木片の木口から浸透させてみると、どれぐらい中に入っていくか、見えると思います。
リグロインの方が、スーッと入っていく気がします。
その分、中へも深く入っていく気がします。
  揮発性は、冬、ファンヒーターで暖房している場合、違いを感じます。
テレピン油とか灯油を使っても、変な臭いはしてきませんが、
リグロインの場合は、危険なことが起きるような臭いがします。 揮発したものが部屋に広がる所為です。 暫くの間ですが、冬でも、暖房は消して、リグロインを使います。
リグロインの中に含まれる、特に揮発性の高い物質が最初に揮発していくわけですが、
それが特に危険だと思われます。 換気に注意がいるということです。 使用量が少ないので、大袈裟に考えることもないのですが、、、 漆の先生から教えてもらって、使うようになりました。

*リグロインに関してですが、揮発性が強く、浸透性が高い溶剤です。 内部まで漆を届けてくれますし、乾きもよい(湿気の少ない時期に分かります)。 蒸発したあと、後に残るものがほとんど無い。
*新日本石油「試薬リグロイン」  用途:しみ抜き・抽出用溶剤  密度(20℃)0.68-0.75  留分(80―110℃)90vol%未満  ベンゼン0.1vol%未満、トルエン1wt%未満
*タカビシ化学「化学用リグロイン」
 比重0.68-0.75  溜分(75-120℃)85Vol%以上
 用途:しみぬき・油汚れに
生漆の浸透、蒔き地などに使います。

Q:サビがあまりよく乾かないのですが、良い方法などありましたら教えてください。

A:乾漆をしていて、石膏に水分が残っていると、錆は乾きません。 少し乾いた感じがして、下地を重ねても、尚悪いだけです。 その理由は、分かりません。
錆は1週間ほどすると、乾かなくなります。その理由も分かりません。
どちらの場合も、漆が乾かないということになりますから、酸素と結合できない状態だということになります。 多すぎる水分の問題か、後から水分が加わることが問題か、、、とにかく、漆を殺してしまうようです。 水分が蒸発できないということで、何か不都合が起きているのかもしれない。
錆は、重量比で、砥の粉:生漆=2:1が基本です。(砥の粉を練る水分は含まない)
実際使うときは、もう少し漆分が多いほうが良いので、使うときに少し足す。(2:1.1ほどの比にする) 1週間後でも、少し生漆を足せば、また乾いてくれます。
厚く付けすぎると、中まで乾かない。
漆分が強いと、湿気をより必要とする。 などということが考えられます。

*生漆が古くなって、生漆自体が乾かないということもあります。

(2002年)

Q:乾漆について調べていましたら先生のページを見つけてしまいました。なんと丁寧に、制作の手順が出ているではありませんか!
 時間の関係もありますし、形は精巧なものでなくてよいので、手順と材料があれば、まねごと程度ならできると思いまして、材料について教えていただけないかとメールしました。
 奈良県吉野の昆布一夫氏の
美栖紙と先生のページにも出ていましたが、入手方法を伺えたらと思います。また、別の紙でよいのもがあれば教えて下さい

A:材料と言っても、いろいろありますし、入手法も様々です。
漆は金沢の高野漆行(tel076-221-0190 fax076-221-0700)など。
麻布、美濃紙なども手に入ります。
輪島の橋久商店(鳳至町上町88 tel22-0780)では、麻布、青砥、小さく切った砥石、、、
 
美栖紙は、最初Tさんという方に電話番号を教えてもらい、注文しました。どこの誰かという感じの対応でした。それでも一応送ってくれました。 その後、高岡で増村紀一郎先生の研修会があり、 主催したデザイン指導所で注文してもらう事にしました。 奈良県吉野郡吉野町窪垣内295 昆布一夫 tel07463-6-6580  
自分で注文した事はありませんが、麻布が各種揃っているのは、 (有)フジタ総合資材 青森県弘前市大字清野袋1-1-6tel0172-34-8304
 刷毛は ひろしげ(泉清吉さん)
http://homepage1.nifty.com/urushibake/index.html
播与漆行の取扱商品に、美栖紙が載っていますが、、、
http://www.urushi.co.jp/ http://www.urushi.co.jp/index01.html  
紙を何枚貼るかは決まっていません。(増村益城先生は10枚) 中に空気が残り、浮く事が多く、私自身は2、3枚貼るだけです。 できるだけ薄い和紙を小さめに切って貼ります。 美濃紙でも役割を果たすと思います。
柳橋先生に拠れば、石の混じったのは美栖紙ではないそうですが
(美栖紙は、実際は表に貼る和紙らしい)、
下地の役割を果たすとして、増村先生はこの紙を使い始めたらしいです

Q:簡単に手に入る、砥石で、加工しやすく、 値段も安いものは、どこで手に入りますか? ろいろ関係はクリスタル砥石を使いますが、 どうなんでしょう?あと、塗り立て漆の古いやつで、中塗りを重ねても、問題ないのでしょうか?よろしくお願いします

A:簡単に加工できる砥石は 三和するが砥石だったか、正確な名は忘れましたが、 三和の人工砥で、#600、#800です。
#400は硬いので、加工はしにくいですが、地研ぎできます。
私は、金沢の高野漆行で買います。(tel076-221-0190 fax076-221-0700)   研ぎに適しているのは、名倉砥です。輪島では、青砥と呼びます。
輪島の橋久商店(鳳至町上町88 tel0768-22-0780)で買いました。
そこには、キング#1000とか青砥を細く切った物を売っています。 最近は行っていませんが、店で実際に選ぶのがよいです。   実際に漆を職人仕事でしている産地なら、砥石がいろいろあると思います。 インターネットでは調べていませんが、三和の砥石なら出ているのではないでしょうか。   塗り立て漆には、油入りと油無しの2種類があるらしいです。 油無しなら、中塗りに使っても問題ないです。 油入りに関しては、よく分かりません。
手板にでも塗り重ねて、乾くか、食い付きはよいか(テープなどで引っ張ってみる)を
確かめたらどうでしょうか。
私自身は油入りを使った事がありません。

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Q:今回の相談は、棗などの内側に梨地仕上げしたいのですが、詳しく教えていただきますか?ペーパーなどで研げない個所の処理など、詳しくお願いいたします。

A:梨地塗りに関しては、よく分かりません。
梨地漆は、屈折率の関係で透けがよくなるようにした漆だそうです。
梨地のように見えるよう、粗めの粉を蒔く訳ですが、薄く塗れば、平たく粉が落ち着くでしょうし、
厚く塗れば、粉が縦になったり、斜めになったり、横になったりと斑がある模様になるでしょう。 塗りより出ている粉の頭を軽くはつり、梨地漆を塗る事になります。 後は蝋色の工程で仕上げるだけでしょう。   棗に関しては、それぞれの形に合わせた砥石をいろいろ準備する事が前提です。 荒砥、名倉砥など、下地の狂いの大きさに応じて、使い分ける事だと思います。 形が出来て、塗りに入る事になります。 それをどう研ぐかということも、砥石と同じです。 静岡炭で、砥石と同じ形を工夫し、研ぎにくいところを研げばよいと思います。 深い傷を残さないよう、注意しながら、少しずつ研ぐ事だと思います。   研ぎをきちんとする事、塗りを斑無くすること、、、 実際はなかなか難しいのですが、技術的には、それを目指して作業していくしかありません。 静岡炭の場合は、砥石より角を丸めるとか、傷がつきにくくなるよう工夫する事が必要でしょう。 砥石より小さめにする事も必要でしょう。 蝋色の工程は、中研ぎなどの工程より、少し誤魔化す感じで行うと言えるかもしれません。 答えになっていますか?

Q:ようやく僕の方も、季節的にも漆が出来るようになりましたので、早速ご指導お願いしたいのですが、ため塗りと紅ため塗りってありますよね、 それにチャレンジしたいのですが、下色から 教えていただきたいのですが、よろしくお願いいたします。 あと、朱合い漆って、乾燥が遅い方が薄くあがりますよね、そして乾燥が早いと、濃くなりますよね、でもそのうち、色は揃うのでしょうか?だとすれば、期間はどのくらいで揃うのでしょうか?よろしくお願いします。

A:溜め塗りに関しては、深い知識はありませんが、自分の経験を元に書きます。 漆の呼び名は、漆屋さんによりいろいろですが、 基本は、生漆から水分をかなり蒸発させた透き漆を使うことです。 朱合漆(油入り・油無し)とか木地呂漆とか、、、   下に塗るのは、朱が普通です。それが朱溜め塗りとなります。 黄を下に塗れば、黄溜め塗りとなるでしょう。 黒が下で、黒溜め塗りというのもあります。中国の漢代にはあったようです。 木地の上に透き漆を塗って、木地溜め塗りというのもあり、木目を見せます。 目はじき塗りは、やはり溜め塗りの一種と言うのかも知れません。   下に塗るを何にするか、これが悩ましい点です。 下に黄口と赤口を暈かしたように塗り、それに透き漆で上塗りし、その暈かしが透けて見えるようにしたいと考え、 そのようにやってみたのですが、暈かしがはっきり見えてきませんでした。 だから、どんな朱を使っても一緒だ、と言えるのかどうか。 下の朱が明るければ、透き漆の塗り斑が出やすい。 赤口とか本朱の方が、上塗りムラが目立ちにくいとは言えます。   透き漆による上塗りの回数も影響します。 時間が無ければ1回ですが、塗り斑がかなり出ます。
2、3回塗れば、大体平均した艶になります。
奥深くしたい時は、5回ほど塗ることもあるようです。   透き漆の透け具合も、漆によって違いますし、乾き時間によっても違います。 金沢の高野漆行の木地呂漆(日本産の透き漆)は、透けが良く、回数を重ねても、朱の感じが残ります。 そういう漆は、多少乾きが早くても、2、3日で透けてきます。 あまり質のよくない漆だと、乾きが早すぎると、何年経っても、濁ったような黒っぽさがなくなりません。 8時間以上かけて乾かせば、普通は何日かすれば、透けてくるはずです。 もともと透けのよくない漆(例えば、高岡の柳瀬の漆)もあります。 そういうのは、黒っぽい溜め塗りを目指す時に使うようにしています。   答えになったかどうか心配ですが、失敗をしながらやってみることだと思います。

Q:なんだか、札幌も本州なみに、梅雨みたいです。 使ってる漆が、どうも黒味が少ないようなので(塗立て黒)その場合、何か混ぜると、 良いでしょうか?顔料とか?   あと砂田さんは、毎日塗りを重ねると書いてありますが、問題ないんでしょうか? カシュ―だと毎日重ねると、 ダメですよね。

A:黒漆に関してですが、鉄分と反応させた黒は、時間の経過とともに透けてくるようです。 松田権六という漆の大家の本には、カーボン(象牙を焼いて出て来る煤)を混ぜると書いてあった気がします。 油煙と透き漆(木地呂漆)を混ぜて黒漆を作り、売っている黒漆と混ぜる方法もあると思います。 金沢の高野漆行の行雄さん(故人)がその様な方法で、特許を取ろうとしていたと奥さんから聞きました。 ただ黒の粉が何なのか、ハッキリしません−できるだけ粒子が細かい方が良いでしょうが。 油煙は少し粗い気がします−篩にかけて(メッシュは?)細かいのを集めて、使うとか、、、松煙でした。 塗料は厚く塗れば、芯まで乾くのに時間がかかります。 実際、2−3時間で乾いてしまう黒漆は、薄く塗らないと、縮みだらけになります。 ホームページでは正直に書いていませんが、実際は僅かな縮みが毎日出ています。 研ぎ潰せば、ほとんど問題はありませんが。 薄さというのが、なかなか難しい点です。 塗りによって、0.03mmほどの厚さが出来ます。 均一に塗り重ねることが出来れば、塗りによって形が違ってくることはないでしょう。 そうはうまくいきませんから、薄く塗ることで狂いを少なくするのです。 薄くムラなく、刷毛筋も余りつかないように塗ることが出来れば、形は狂わないし、芯まで十分に乾きます。 上塗りはどうしても厚めに塗りますが、それ以外は薄く塗るので、毎日塗り重ねることは出来ます。 隅は、予想以上に溜まっていることがありますので、十分浚えるべきです。 十分に乾かせていけば、塗り重ねは可能です。 薄塗りと加湿が前提条件です。

Q:久しぶりに、漆をしたんですが、湿度72%の温度25度で、 やってみたんですが、極端に、刷毛直りが、悪く、刷毛筋が残ります 不乾を入れてみたんですが、ダメでした。 なにか良いアドバイスお願いします。   粘度が堅いとは思いませんが、樟脳か何かで薄めたほうがいいでしょうか?

A:北海道に梅雨がないという意味は、いわゆる梅雨前線の影響を受けて雨が降るのではないということでしょう。 内地(本州)で豪雨なら、札幌は晴れ渡っているともいえます。 こういう季節に漆を塗るときは、エアコンを使うのが一番楽です。 除湿機も役に立ちます。 ただ北海道では、エアコンをあまり使わないでしょう。   不乾漆の不思議なところは、ずっと使わなかったら、何時の間にか蓋紙辺りが硬化してしまっていることでした。 実際は、徐々に硬化しているのです。 不乾漆を底から混ぜてみると、朱が少し浮かんできます。 つまり、水銀朱を練って半年とか、一年ほど放っておくと、乾きが極端に悪くなりますが、 粉と分離した漆を「不乾漆」として売っているようです。 本当に不乾になる黄口の水銀朱は、粉と漆が分離しないようです。 分離する水銀朱は、完全な不乾漆ではありません。   ウルシオールは不乾性らしいです。 どれぐらいの比率で混ぜるのかハッキリしませんが、 2−3割かなという気がします。 私は金沢の高野漆行で貰いましたが、箕輪漆行でも扱っているようです。   漆の乾きの良い季節は、基本的に漆を塗るのに向いていません。 自然に任せるなら、湿気が少なくなった日を選んで塗るしかないでしょう。 溶剤は、乾きが速い季節には、何の意味もないと思います。   私は今、日本伝統工芸展に向けての乾漆食籠を制作中です。 塗りは2−3時間で乾いてしまいます。 漆の粗渡しをしながら、厚みを平均に均します。 一まとまりに塗る部分に渡し終わったら、そこを仕上げ塗りします。 出来るだけ無駄な均しをしないようにすることだと思います。

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Q:乾漆についてなんですが、砂田さんの影響で興味がでてきました。 そこで、砂田さんも独学でいろいろされたようですので、あえて恥ずかしい事を聞きますが、寒冷紗ではいけないのでしょうか? 麻布ではなく手に入りやすいものでやってみたいです。

A:節上げしていて、深い穴が空いたら、節上げの先にチョット漆をつけて、その穴を埋めます。 ゴミがなかなか取れない時は、節あげの先に漆をほんの少し付けて、節あげの側にも粘りをもたせてみると、うまくいく場合があります。   乾漆に寒冷紗を使うというのは、普通の人ならそれでも良いと言うと思います。 実際使っている人もいます。大抵は、麻布と併用しているのでしょうが、、、   私のホームページが、自分の体験をもとにして出来ているということは、 普通乾漆をやる人から見れば、かなり片寄った方法といえるかもしれません。 内心では、こだわりがあると言いたいのですがね。 麻布も寒冷紗も使ってみて、漆の浸透性を見ると、明らかに寒冷紗に内まで吸い込まれていきます。 普通に考えれば、その方が丈夫になり、良いような感じがしますが、 使う物としては、弾力性がなくなり、かえって脆くなります。 漆だけで作るのではないから、布の持つ弾力性を生かしたいというのが、私の考えです。 布として比較すれば、明らかに麻布の方が強いです。 木地の補強としては、麻布の方が優れています。 ガサガサした感じが、漆と密着がよいとも言えます。 麻布にも色々な種類があり、自由な造形をする乾漆には、 少し目が粗めで、柔らかい布の方が適していると思います。 金沢の高野漆行で買ったり、古い蚊帳を使ったりしています。 弘前に何とか言う麻布を扱っている店もありましたが、、、増村先生の研修会で使うのを 高岡のデザイン指導所で取り寄せてくれました。 先ずは、身近にある布で試してみれば良いと思います。 生漆は、見る見るうちに無くなっていきます。

Q:堅い漆を腰の強いはけで塗ると、刷毛目がめだちますよね 逆に、汁いのを腰のない刷毛で塗ると直りがいいですよね。 でも、寒さで汁口の漆が堅いのを塗ると刷毛目がでますよね、 そのときはやはりあたためるのと同じに、溶剤である程度うすめて、いつもより厚く塗ってもいいのでしょうか?薄めることによって、厚く塗ってやせの問題とかでるのでしょうか?   基本的に、私は、カシュ―もやりますので、薄手の腰の弱い、 毛も長めにして塗るのが好きなので、汁い漆が好きなんです。   夏などは問題ないのですが、冬場の塗りに苦労しますので、 教えてください。   あと、恐縮なんですが、ふしあげ棒の作り方を砂田さんのやり方で教えて欲しいのです。

A:質が変化し、漆自体が粘りを持ってしまったときに、私の場合は、灯油を溶剤として使います。 ですから、質が劣化する前の漆と同じ厚さに、灯油で展ばした漆を塗ります。 余り塗り立てに拘らない所為もあるでしょう。 金沢の坂下先生は、塗りたての得意な方ですが、冬場は電気コンロ(ニクロム線)に少しドンブリがかかるようにおいて、 暖めながら塗ると話しておられました。溶剤は全く使わないということでした。 部屋の温度を上げ、漆を暖めて塗るのが良いのではないでしょうか。   節上げの件ですが、私も余り得意ではありません。 カシュ−なら、厚く塗れ、漆ほど粘り気がありませんから、上げやすいのですが。 使っているのは、竹を削ったものと、鳥の羽の軸を削ったものと、隅出し刷毛(2分とか3分刷毛)です。 蒔絵の人は、蒔絵筆を使うそうです。鳥の羽は、金沢の高野漆行で買いました。坂下先生は鳥の軸を使っています。 画像を送りますので、参考にして下さい・・・
 
刷毛は2分刷毛です。それを基準に、側の竹などの厚みなどを計算してください。
作り方は、少しずつ削るしかありませんが、 最後の仕上げで、使いやすさに大きな差が出るような気がします。 何となく、腰があるようなのが良いとは思いますが、 実際に使ってみて、微調整していくしかないと思います。   ゴミをつけないように塗る事が出来るなら、それに超したことはありません。 ゴミ取り用に、洗った漆をしぼり出した刷毛で、ソッと塗り面を撫でる事でゴミを取り除き、 塗るようにしています。それでもゴミは付きますが、ゴミを上げ続ける手間よりはましと思っています。

Q:乾漆の食籠の作り方を読んで、私もやってみたいというメールが送られてこないのでしょうか。小生は漆芸キットのようなものを開発されてはどうかと思いました。もうあるのかも知れませんがね。ただ漆にかぶれる人がいるでしょうから、誰にでも勧められないかも知れませんが、アレルギーテストのようなもので、かぶれない人を選別してやらせるというのはどうでしょうか。

A:素人が漆に接するようなキットは、幾つかあるようです。何かの本で見た気はしますが、どこだったか、、、
 インターネットでは、
箕輪漆行のページにあります。
 本格的な乾漆の作品の場合は、まじめに漆器の仕事をしている人々がいる地域にある漆屋さんで相談した方が早いと思います。
 作品を作ってみたい人がおられましたら、どういう物が必要か、分からなければご質問ください。
 仕事がないことを心配して下さいまして、どうもありがとうございます。

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(2001年)  

Q:また質問なんですが、たまにしか使わない刷毛で、ゴミがでない方法って、 あるのでしょうか?ちなみに、漆は、タレコシの三回こしなので、原因は刷毛と思われます。
  せっかくの良い刷毛なのに、腕が悪いので、泉さんに悪いです(笑)  

A:私もたまにしか刷毛を使いません。 乾漆の場合、素地を作るのに数ヶ月かかる事が多いのです。 中塗りに入って初めて、漆刷毛を使います。 場所にもよりますが、10回ほど塗り重ねることもあります。 その一ヶ月ほどは、ほぼ毎日塗ります。   久しぶりに刷毛を使い出すと、確かに刷毛の中からゴミが出ます。 種油が変質し、ゴミになったり、塗料分が固まったりしているのだと思います。 新しい種油(私の場合は、ごま油)をたっぷりつけて、何度か洗います。 それでもゴミが出つづけるときは、油をしぼり出し、石鹸を毛先につけ、手のひらで泡立てて水洗いします。 それを3回程すれば、刷毛を切り出したとき洗うのと同じになり、大体ゴミはなくなる気がします。 漆に使う前に、灯油か種油で刷毛を洗い、刷毛の水分を出しておきます。 防ぐ方法は、使わない場合でも、ときどき新しい種油で洗うことです(という本人が、あまりしていないのですが、、、)。  

Q:私はサラリーマンですので、お金がないから(笑)カシューをしているのではなく(負け惜しみ)? カシューはカシューで難しいのが魅力ですね。
  カシュー塗りなら塗りで、上手になりたいです。 刷毛塗りで、はまったときのきれいさは、吹き付けの比じゃないと思います。(なかなかはまりませんが笑)  
  砂田さんの本業は何をされているのですか?  

A:私の本業は何かということですが、生活費を稼ぐという意味では、勤め職人ということになると思います。 高岡漆器という業界は、一部上塗りだけ漆のものがありますが、ほとんどがカシュ−製品です。 そのほとんどが吹き付け塗装で、刷毛で塗った方が便利なところだけ、部分的に刷毛塗りします。 下地、中塗りはウレタン系の塗料で、、、研ぎも空研ぎなど、、、「職人」らしいところは、実際には、もうありません。  

夜と休日に、自宅でするのが、漆の仕事です。 漆をするには、趣味でするか、作家になるかしかありません。 どちらにしても、売れないから、収入はありません。あるのは支出ばかりです。 買ってくれる人がいれば、自宅で漆職人としてやりたいのですが、そういう人はいません。 展覧会の作品作りが、漆の仕事でしていることです

Q:また質問なんですが、この間の話とリンクするのですが、箱ものって一遍に四方塗るんですか? 僕は一面ずつ一日って感じなんですけど。   あと、カシューはサーフェーサーってありますけど、漆はやはり薄く何度も繰り返し塗る方法しかないんでしょうか? そのときの漆は、専用の中塗り漆がやはりいいのでしょうか?それとも、もっと良いのがあるのでしょうか?

A:箱物の塗りに関してですが、普通は、外側全体、内側全体をそれぞれ一度に塗ります。 形の上で一纏まり(の世界)と見なす所を一気に塗るということです。

  唯、角が強く立っているところは、塗料がのり難いので、別々に切って塗ることがあります。
片側から角に掛けて塗り、もう一方の側からクジラ箆ではみ出たのを浚える。
次の時は、前と反対側を塗り、同じようにクジラ箆で浚えます。 すると角には、二回塗料がかかり、はげ難くなります。  

サフェーサーというのは、代用下地のことです。
漆の仕事では、下地の
箆付けに当たります。
漆の仕事で、布を貼らず、下地を付けない方法を取る場合は、Kさんがおっしゃるように、薄く10回ほど塗り重ねるようです。
大場松魚先生の、棚の柱はそうしているようですし、棗を軽く塗り上げる時も塗り重ねるようです(和紙は貼る)。  

漆の分類法は、産地や漆屋さんによっていろいろ違うようです。 中塗り漆がどういう成分か分かりませんが、増量剤を添加しているか、質の悪くなった漆を混ぜていると推定できます。 塗り専門の職人でない限り、大量に漆を使うことはありませんから、塗る漆は黒なら、黒蝋色漆だけでよいと思います。 余って、質が悪くなれば、それを混ぜて、自分で中塗り漆を作ればよいのです。  

Q:箱物の塗りについてなんですが、角が直角なら 一面ずつ塗れるんですが(外側)、丸面などは一っぺんに四方塗ると きれいに塗れません。どのように塗れば良いのでしょうか?

A:箱物ということは、文庫のように角が丸いもののことでしょうか。 それなら、一面を塗り上げ、左右の両側の角(それぞれの面との境)を縦から均すようにすれば良いと思います。 はみ出たら、刷毛の漆を茶碗の縁などで拭い、ソッと均しなおす。 形の上で一つのまとまりのところを、ワンセットと見なして仕上げ、境となるところを両側をつなぐように縦から均す。 複雑な塗りでも、基本は一面をムラなく塗ることです、それをつないでいくと考えればよいと思います。

Q:新年を新しいふすまにしようと思っているんですが、 あれだけの大きいのは大変だとおもいますが、カシュー塗りしたいのですが、 かまちなどの長いものって、どこから、刷毛をスタートするのでしょう? 教えてください。(いっぺんに刷毛をとうせないものの塗り方が知りたいです。

A:カシュ−を刷毛で塗るのは、小さいものなら厚めに塗り、乾きを遅くすればきれいに塗れます。 長いとか、大きいものは、塗っている途中で乾いていくので、基本的には、刷毛では無理です。 吹き付け塗装でするのが普通です。 それでもカシュ−を刷毛で塗るには、溶剤を灯油にして、乾きを遅くするのが第一歩です。 180センチの長さがあるとして、30センチを一つの単位として右端から塗って仕上げていきます(右利きの場合)。 その左の30センチ幅をぬり、その時右側部分にも、仕上げの刷毛を流し込んで、最初の塗りとの境を消します。 一回で消えなければ、もう一度仕上げに左から右へ50から60センチ(右端まで、更に外まででも良い)一気に塗ります。 徐々に30センチ幅を左に移動して、仕上げる面を広げていきます。あまり長く引くと、最初に塗ったところが締まっているので、よくない。 一つの単位としての幅は、乾きが遅い場合はもっと長くても良い。 最後の左端をどう仕上げるかが問題です。 塗りの基本の、粗渡しをムラなくすることで、最後の幅を仕上げる準備をします。 右から左へ刷毛をひく時、左端の外まで刷毛を持っていく。 左から右へ仕上げる時、端の近くに軟着陸する感じで刷毛を接することで、刷毛の段ができないように塗り始め、そのまま右側の塗りあがったところへと塗りつづけて、境を消します。 左端から塗り始めても出来ないことはありませんが、塗り始めが薄くなる傾向があります。 平面ならそれでもいいのですが、棒のように四面があるものは、隣へはみ出ないように注意する必要があります。 要するに少しずつ仕上げていく。境があまりできないように消す。最後の刷毛の打ち込みに注意する。以上です

*カシュ−と漆の違い
 ・カシュ-がどう乾くのか分かりませんが、カシューナッツから出てくる汁自体は乾かないそうです。
  特許の技術で、温度があれば硬化するようになった。
 ・漆は、酸素と重合反応して、硬化するそうですが、温度と湿度が良い条件の時に乾く。
  逆に言えば、乾かない条件のもとで、いろいろな仕事ができる。
 ・食品衛生法上、カシュ-は食器に使えない。
 ・箱の内側は、カシュ-は、時間が経つほど臭くなる。中に紙を置くと、傷んでしまう。
 ・生の漆は、普通に考えれば、臭いとしか言いようがないが、乾けば、臭くなくなる。
  臭いうちは、かぶれるから、近付かない方が良いと教えてくれているとも言える。
  掻いたばかりの漆は、臭くない。
 ・漆は時間の経過とともに、徐々に透けてくる(特に透き漆の場合。朱などの発色がよくなる)。
 ・カシュ-などの塗料は、最初に硬化した時が、最も良い状態である。
 ・漆は紫外線に弱い。
 ・カシュ-は、多少塗りムラがあっても、縮みにくい。
 ・漆は、少しの脂分(手跡など)でも乾かなくなるし、塗り斑、厚すぎなどに縮む。
 ・漆は、ほとんど何とでも混ざり合い、それを使うことができる・・・油、ウレタン、糊、、、
 ・暈し塗りなど手わざを楽しむには、漆が適している・・・カシュ−ならシンナーを利用するのではないか?
 ・カシュ−には、漆のまがい物の働きしかない。

Q:質問なんですが、私はカシューを趣味で塗ってるんですが(本漆も) それでどんぶりの掃除についてなんですが、漆は湯煎で簡単にとれるんですが、カシューはなかなかとれなくて困ってます。 どのようにすれば、使い終わったどんぶりを簡単に取ることが出来るのでしょう、教えてください。

A:カシュ−は、乾きが早いのですぐこびり付いたようになります。 家では漆だけですが、仕事先ではカシュ−が主です。 ラッカーシンナーに浸けておけば、割合楽に取れるようです。 しかし、危険がともなうので、あまり薦められません。 金箆とか切り出し小刀とかで削り、後は#360ほどのペーパーで水研ぎすれば取れます。

*漆は1週間ほど水に浸けておくだけでも、茶碗から剥がれてきます。
*カシュ−を刷毛で塗ると、ドンブリにこびり付いて取れなくなるのと同様、刷毛の中に塗料分が残りやすいといえる。

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