形作り(立ち上がりと高台

立ち上がりの作り方

素地の外形が合ったら、まず端幅を揃え
◎蓋は約1mm幅で内側を揃うようにする。
◎身の端幅は、作品の形によって違ってくる。仕上がった時点で少し緩いかなと感じるほどに蓋が被るのが基準である。
内外への遊びとともに、左右への遊びがあって初めて使いやすいといえる。
花弁の出入りが大きい時は、2mmほどの幅を、溝をあけたガイドを使って下地(刻苧も使う)で作る。そこで出来た段は、少しずつ埋め、平らにしておく。
0.3mmステンレス板(いろいろな幅の溝を作っておく)

端幅が揃ったら、立ち上がりを付けることになる。
幾つかの方法がある・・・星印(☆、★、、、)後にそれぞれの方法を記述している。

石膏目型に貼るなど〕 〔麻布3枚重ね〕 〔麻布1枚〕 〔厚紙を型に〕 〔五箇山和紙を型に

☆必要な大きさを計算して、石膏雌型に貼って作る方法。

★蓋が被りやすいように、立ち上がりにはテーパー(勾配)があるから、少し大きめに作り、作品に合うところを切り取って使う方法。これも石膏雌型に貼って作る。(「道具作り」のページの手書きの図、参照。林先生)

☆薄い板を削って、少しずつ貼っていく方法。

★所々に薄板を貼り、その数センチの間ごとに布を貼っていく方法。

☆型で第40回日本伝統工芸展の中段(「作品」のページ参照)の場合は、立ち上がりと底部分を一体に石膏雌作り、外側部分(朱塗り)を石膏雄型に貼って作り、その二つを組み合わせて作った。

経験的に最も楽な方法は、次のとおりである。上記の方法でも、必ず狂うから、どうしても修正が必要になる。
内側に貼るのに必要な長さに、幅25mm程で、麻布を切る。三枚切り、それを貼り重ねることになるので、中央になる布と両側の布は別の種類にする。柔らかめで、目が粗めのほうが良い(特に両側の布は)。
ガラス板の上に糊漆を箆で渡す。一枚目の布をその上に置き、糊漆を箆で渡す。
二枚目の布を重ねて置き、糊漆を箆で渡す。
三枚目の布を重ねて置き、糊漆を箆で渡す。
そのまま15分ほど放置する。
身の立ち上がりがくっつく所(端の内側10mm〜15mm下あたりまで)にも、薄く糊漆を渡しておく。同じように時間がたつのを待つ。
貼るのに必要な厚さに、糊漆を身の内脇に渡す。ガラス板から三枚重ねの麻布のテープを取り、身の内脇に沿って貼り付けていく(手で貼ることになる)。
洗濯挟みなどで所々支える。
15分程してから、狂いを手で直す。
更に15分程放置してから、狂いを直す。テーパーもつけておく。
その後は、余り修正が出来なくなるから、硬化するまで数日待つ。洗濯挟みは一日後に外しておく。

実際の作業例2002.6.15…上の記述と少し違う。

布1枚で貼り始める作る方法 (2003年)

身…立ち上がりを付ける−目の細かい麻布の両面に糊漆、約30分放置。
 内脇(端付近)の糊漆を渡しておく、貼り付ける前にももう一度渡す。
 目測で1センチ余りが端から上、1センチあまりが貼り付け部分。
 貼り付け部分の布の浮きを直す。
 立ち上がりの
出入りを、鋏で切れ目を入れて、調整する
*立ち上がりを付けるのはまだ時期尚早だったが、仕方がない。

6.25(水)

(朝)〔乾漆M〕身…立ち上がりの端の出入りの狂いに鋏で切れ目を入れ、糊漆をつけ、洗濯バサミで押さえる。
中に空になった漆桶を入れ、裏返し、高台裏に下地。

かなり歪んでいる
身…立ち上がりの狂いの大きいところに切れ目(朝貼ったのを外すor鋏で切る)。手で位置を直す。
 こくそを内側に渡す。

6.26(木)

(朝)〔乾漆M〕身…たちあがりの出入りの狂いに鋏で切れ目を入れ、外側から刻苧でくっ付ける。

〔乾漆M〕身…立ち上がりの内側にこくそ。内に入りすぎているところに竹ひごを当て、調整する。

6.27(金)

(朝)〔乾漆M〕身…立ち上がり空研ぎ、外側の内に入りすぎている部分に刻苧。竹ひごで押さえる。

〔乾漆M〕身…立ち上がりの内側に刻苧(木の粉分が強い。錆も混ぜる)。外側の内に入りすぎているところに刻苧。竹ひご1本。

6.28(土)

(朝)〔乾漆M〕身…立ち上がりを#40で空研ぎ。出ているところを切り取る。
立ち上がり端の高さの高すぎるところを鋏で切る。
付け根のところで切れている部分を刻苧で接着。

(午前)立ち上がりの内側に目の細かい麻布を貼る−下から貼り始める・バイアス方向に。

(午後)身…立ち上がり端から上に布の出ている部分を切り取る。立ち上がりが外に動いた!

6.29(日)

〔乾漆M〕身…立ち上がりの内側(内に入りすぎている部分は除く)に刻苧。

6.30(月)

(朝)〔乾漆M〕身…立ち上がりの出入りの反対側に刻苧。

〔乾漆M〕身…立ち上がりの出入り(狂い)をチェックし、反対側に刻苧。

7.1(火)

(朝)〔乾漆M〕身…立ち上がりの出入り(狂い)の反対側に刻苧。

〔乾漆M〕身…立ち上がり用の定規をアルミ片で作る−上が少し内に入るように。
 定規を引いて、刻苧を立ち上がりの外側に付ける。

7.2(水)

(朝)〔乾漆M〕身…立ち上がりの外側の足りないところに刻苧。

〔乾漆M〕身…立ち上がりの端幅を見て、太いところを切り出しで削る。1.5cm幅ぐらいの薄い麻布を貼る。

7.3(木)

(朝)〔乾漆M〕身…立ち上がりの外側と端に錆下地を引き箆で渡す。

〔乾漆M〕身…立ち上がりの端から外側にかけて薄い和紙を貼る。余った分を内側に貼っておく。
*6.24に付けた立ち上がりにかなり切れ目を入れているので、補強の為−和紙の繊維の方向が横に強いように。
内側の布を貼った段に刻苧。

7.4(金)

(朝)〔乾漆M〕身…立ち上がりの外側と端に錆下地を引き箆で渡す。

身…立ち上がりの端幅を定規で見、太い部分を研ぐ−内or外、どちらへ狂っているか確かめて。
立ち上がりの外側を水研ぎしてから、端幅を錆で作る。

奥出(根本)方式 (2004年)…「奥出寿泉 遺品調査 技術記録」(高岡短大)を元に作ってみる

4.29(木)

〔乾漆F〕*奥出(根本)方式で立ち上がりを作ってみる。
立ち上がりを作るため、
厚紙を貼る。曲線にあわせて、6枚に分ける。

切れ目を入れながら内側に押す―立ち上がり定規で確かめる。
セロテープで形を固定する。

固めの麻布をバイアスに貼る。(失敗の記録の4/23の強かった方)
*麻布1枚を貼り、狂いを切れ目を入れることで調整していた方法を、
厚紙に切れ目を入れることでとして作ってしまっていることになる。
それに麻布を貼ることになるのだから、今までの方法より、はるかに優れている。

4.30(金)

〔乾漆F〕立ち上がりの布を空研ぎ。布目摺り。
布が足りなかった部分に布を貼り足す。

5.1(土)

〔乾漆F〕立ち上がり、空研ぎ。
薄い麻布をバイアスになるように切る(少し幅を広めにする)。通常の比の糊漆で貼る。

5.2(日)

〔乾漆F〕立ち上がり、空研ぎ。
リグロインで薄めた生漆を吸わせる。

5.3(月)

〔乾漆F〕立ち上がりを軽く水研ぎ、錆で布目摺り。

5.9(日)

〔乾漆F〕
蓋と身がきつすぎるので、立ち上がりの擦れているところを空研ぎ。
蓋と身を合わせたまま、研ぎ合わせる。入り隅の山のところは名倉砥で。
ずらしては、研ぎ合わせを繰り返す。身の外脇に少し足りないところがある感じ。

立ち上がりを付けるときに支えとして貼っていた厚紙を取り除く。
糊漆でくっ付いている紙はなかなか取れず、削ったり、空研ぎしたり、、、
一部、立ち上がりが素地から剥がれてしまう。
多少紙は残ったが、中国麻布を12mm+10mm(身側に貼る長さ)幅に切って、
立ち上がりの内側に貼る。2本に切り分けて貼る。
剥がれたところは洗濯バサミで固定。

5.10(月)

〔乾漆F〕(朝)洗濯バサミを外すと、一ヶ所布が浮いていた。切り取り、別の布を貼りなおす(漆分の弱い糊漆)。
(夜)空研ぎ。昨日剥がれた辺りの隙間に下地。内側、布目摺り。

5.11(火)

〔乾漆F〕立ち上がりの内側を空研ぎ。
上が外に出すぎているので、幅10mmほどの麻布を内側に貼る。
*後で立ち上がりの上辺りの外側を削る予定。

5.13(木)

〔乾漆F〕立ち上がりの高さを定規で確かめ、貼った布の出ている余分の部分を切る。
内側の布目摺り。立ち上がり端の上と外にも錆を渡し、箆で浚える。

5.14(金)

〔乾漆F〕立ち上がりの内側に幅22mmほどの麻布を貼る。

5.15(土)

〔乾漆F〕端から出ている布を切り取る。

5.16(日)

〔乾漆F〕こくそで布目摺り。

5.17(月)

〔乾漆F〕こくそを空研ぎ。
立ち上がりの端に残る隙間などにこくそ。

5.18(火)

〔乾漆F〕立ち上がりの形を定規で確かめると、上の方がほとんど外へ出過ぎている。
刃物で切り取る。狂いが少ない時は布砥#40(使い古し)で研ぎ落とす。
立ち上がりが外に出過ぎている部分は、布を切り取ってしまう。
立ち上がりの布が薄くなった内側に麻布を貼る・・・3箇所。

5.19(水)

〔乾漆F〕立ち上がりの形を定規で確かめ直すと、まだ外に出過ぎている所が多かった。
刃物(切り出し、丸ノミ)で削る。また布を切り取ったところもある。
空研ぎで少し滑らかにする。
錆を引箆(定規)で立ち上がりの外と端に引き、形を作りながら整える。
*切れなくなったので、刃物を研ぐ。

5.20(木)

〔乾漆F〕(朝)立ち上がりの内側の布目摺り。
(夜)立ち上がりの外側に錆を引き箆で引く。2回目。

5.21(金)

〔乾漆F〕蓋の端の水平研ぎ・・・これを基準に身の端の水平を決め、立ちあがりを決める。

奥出技術記録に「上下させながら研ぐ」とあるので、端水平研ぎの砥粉(+水)を利用して実行してみる。
どういうことがハッキリしないが、蓋を少しだけ上下させるように動かしてみる。
一辺ずつずらして、上下研ぎ続いて左右回し研ぎをする。
身の向きを180°変え、一辺ずつずらして《
上下研ぎ続いて左右回し研ぎ》を繰り返す。
身の向きをまた変え、同じように・・・
身の向きを変え・・・
*蓋と身の被り方が楽になる。合い口の隙間も合う。

立ち上がりの端幅を錆で揃えるように作る。

5.22(土)

〔乾漆F〕蓋を身に被せ、上下研ぎand左右回し研ぎを昨日同様にする。
蓋の内側に出来た段1辺、身の立ち上がりの外側を砥石で研ぐ。(後で、生漆を吸わせ、拭き取る)
立ち上がりの幅を揃えた段を錆で埋め、幅を揃えるため引き箆を引く。

5.23(日)

〔乾漆F〕(朝)空研ぎ。
(夜)身の立ち上がりの内側の段を埋めながら、引き箆をで端幅も揃える。
*これで立ち上がりを作る作業は完了。手直しは別だが、、、

☆2007.3.24 五箇山和紙を利用する方法

微妙な形に対応する方法として考え付く

3.21(水)

〔乾漆香合〕身…(昼)端の水平研ぎ。内側の空研ぎ。
内側に二つ折りにした厚手の五箇山和紙を糊漆で貼る。
*微妙な曲線に沿うには厚紙は不適当。型の和紙が剥がれない事態も考えられるので、糊漆を使用。
(夜)五箇山和紙を型にして、端の上方向に3段(3周)、中の太さのラミー紐を巻く。(立ち上がり)

3.22(木)

〔乾漆香合〕身…中のラミー紐が太すぎたのか、蓋の被りがキツイ。
和紙を剥がし、内側から高野のカヤ布を貼る。

3.24(土)

〔乾漆香合〕身…ラミー紐を空研ぎすると、何とか蓋が被るようになる。
内脇の空研ぎ(少し乾き悪いような)、立ち上がりのラミー紐に薄く下地付け。

3.25(日)

〔乾漆香合〕蓋と身の擦り合わせ研ぎ。擦り減っている場所を更に砥石で空研ぎ。擦り合わせ研ぎ。
身…内脇に下地付け。端幅定規を引く(幅はまだまだ足りない)。

立ち上がりの整え方

仕上がった時より少し内に、立ち上がりが来るように、素地として整えることになる。
身の外脇に合わせて、立ち上がりの側面から見た形になるような引き箆をアルミ板などで作る。
アルミ引き箆(黄緑を身と仮定すれば、その上に立ち上がりが付く)
かなり予定の位置からずれる筈だから、足りない部分に漆分の少ない木くそ(糊漆に木の粉を多く混ぜる)を付ける。素地のあるべき位置に布が来るよう、こくその上に布を貼る(三枚分)。動きが収まった頃、余分の部分を切り取る(削り取る)。
三枚を一度に貼ったを少し、刃物か空研ぎペーパーで取っておく。
残る段を刻苧で埋めておく。
立ち上がりの内側に幅40mmほどの麻布を貼る。
乾いてから、更に幅60mmほどの布を貼り重ねる。

ここまでは、布を糊漆で貼るだけで、布目を下地で埋める布目摺りはしない。
布を貼った両側に、布目摺りをする。
和紙を、貼った布の上に、貼る。
立ち上がりの側面の形を作る引き箆で下地を付け、必要な形を作り上げる。
内側は、立ち上がりをつけたをできるだけ研ぎ潰しながら、下地を3回程付ける。

◎立ち上がりを付けるとき、最も注意するべきことは、合い口となる端に食み出た糊漆・下地などを完全に攫え取っておくことである。

◎長くなったので、高台の作り方は別に作る。高台のページ

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