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「乾漆」のページで追加した記述だが、中里壽克さんの「中尊寺金色堂と平安時代漆芸技法の研究」に仁和寺の「宝相華迦陵頻伽蒔絵そく(土偏に塞)冊子箱」が、布2枚でできているらしいとある(p514・・・但しX線透視では3、4枚であっても、その判別は難しいともある)。
1平方センチに5:4本ぐらいで織られた、かなり太い糸でできた麻布でできているという。
自分(砂田正博)が持っている一番粗い麻布は8:8ほどのもの(山下さんから頂いたもの)だが、それでやってみようと思う。
仁和寺の箱に関して、蓋が普通に貼ってあるのに、身は意外なほど下手だということを、自分なりに解釈すれば、原型の問題になる。
蓋は雄型に、身は雌型に貼ったのではないか、と推定できる。
発想法は、身全体に被るように蓋を作るデザインの型をどう作るか考えるところにあるだろう。
同じ型を元にするとすれば、雌型に貼れば形(身)は内側にできていき、雄型に布を貼って外側に蓋の形が出来ていく。
しかし、それでは両者の間に遊びがないので、うまくはいかないが、、、
石膏を使ったわけがないから、水粘土で原型を作るべきだろう。
離型には、和紙を使ったと考えるのが普通だろう。
(2001.11.21)
p514下段に「この箱の体の厚さが3ミリ弱である、、、」とあるが、自分でした乾漆素地作りでは、5、6枚貼っても2ミリにもならない。どうも「太い糸」というところに鍵がありそうだ。
身の布の貼り方が下手だというのは、蓋に布を貼った人と別の人の仕事かもしれない、とも言える。
蓋の寸法が、縦33.7×横21.7×高9.2センチとあるから、きわめて大きい。
素地が動かず、狂わないという状態に布2枚で持っていくのは、経験から考えるかぎり、不可能に近い。
兎に角、デザインを決めてかからねばならない。
(2001.11.22)
今日、砺波市の「工芸き・た・じ・ま」(北島典子さん)へ「般若保 金工展」を観にいく。
天気も良かったので、片道5キロほどを自転車で行く。
20数年前、保さんが独自に始めた『吹き分け(吹分)』という技法で作られた作品が並んでいる。
鶴が飛んでいるような吹き分けは驚異的な技術だ。
作品が展示してある台を包んでいる麻布を見て、思わず触ってしまった。
中里さんの本にある麻布と織り方が一致する、1平方センチに4、5本を縦糸・横糸で交差させている布だ。
五郎さんに話を聞くと、手芸店の端切れ布として売っているとのこと。高岡のサティー2Fで2週間前見たそうだ。
R156沿いの戸出に「手芸センター トーカイ」があるのを思い出し、高岡に行く前に行ってみることにした。
端切れはないが、生地ならあると売り場に連れて行ってくれる。ジュート麻1m490円(税別)だというので5m買う。
布の厚みも、厚からず、薄からずという感じで、これなら2枚でも乾漆作品ができるかもしれない。
問題は、どういう作品を作るかというデザインが決まらないところにある。
(2001.11.24)
デザインは決まらないが、作業計画を立てておくべきだろう。
1.木か発泡スチロールを芯にし、水粘土で型を作る。
2.乾いた後、直接麻布を糊漆で貼る。
・乾漆仏では、乾かないうちに布を置いて馴染ませるらしいが、、、(日本の美術「乾漆仏」p92)
・布目摺りはどうするか?刻苧?生漆を染み込ませる?
3.布を二枚貼ってから、刻苧などで目を詰める。
4.麻紐で端付近をを3条に巻く。
5.薄めた生漆を染み込ませて、固める。
6.外側に下地を付ける。
7.生活上得られる範囲での熱処理をする・・・天日ぐらいが限度。
8.素地の外に、粘土を付けて新しい型を作るべきか?狂い防止のため。内型を外す。
9.後は通常の漆の仕事・・・(2001.11.25)
2001.12.9(日)
昨日から、大体、形を絞り込めるようになる。
入り隅にするか、側面を少し膨らんだようにするか、、、
仁和寺の形から大きく離れすぎてはいけないし、多少乾漆らしい姿でないといけない、、、
楕円に近いような四角形を平面図の形にすることにした。
正面図の形を決め、中に入る身の形を図示していく。
仁和寺のと寸法の関係が合わない(蓋と身の関係)が、形が違うから仕方がない。角の形を紙の上で考え直す・・・1/4部分図。それを鋏で切る。
3mm厚のアクリル板に四角形(33cm×21cm)、各辺の中央線を作図しておく。
1/4部分図を当て、各角の形を鉛筆で写す。
電動糸鋸盤で四角形より少し大きめに切る。
糸鋸で作図の少し外側を切る。
鑢を掛けて、作図に近づけていく。
*熱を持ち、アクリル板と糸鋸の刃が、くっ付いてしまうことがあった。
それぞれ、糸鋸の刃を1本ずつ折ってしまう。
2001.12.11(火)
縦・横の中央線の上を、カッターで切り、アクリル板に線をつける。
1/4部分図(紙型)を線に合わせて位置を決め、出ている所をアクリルカッターの背で削る。
*2時間以上削っていても、まだまだ合わない。
2001.12.13(木)
1/4図(紙型)を合わせていると、どうも中央線が垂直に交わっていない感じがした。
少し削り、アクリルの外形を鉛筆でなぞり、紙に写す。
180°回して当てると、中央線の位置が合わない。
現在削った形と正確な基準とをどう合わせれば良いか。
縦・横の中央線を正確に二等分する位置(中心)をまず決める。
そこと円形分度器の中心を合わせ、中央線(不正確な)を目安に、90°毎に印をつける。
それぞれ向かい合った位置にある点を線で結ぶ。その交点と、先ほどの中心は一致する。
線は針のようなものでアクリル板を削るようにして引く。
そこへ生漆を渡し、弁柄朱を広げる。ティッシュで横方向から拭くようにして、線が際立つようにする。
湿り風呂へ入れておく。
2001.12.14(金)
外形を紙に写す・・・基準となる二本の中央線の位置をチェック。
アクリル板を180°回す・・・長い方の線が少しずれている感じ。
短い方の二等分点(中点)に印をつけ、円形分度器を当て、垂線の位置を決めなおす。
赤色のボールペンで垂線を描く(垂直二等分線)・・・ほぼ正確になったようだ。
出ている所をペンでチェックし、アクリルカッターの背で削る。
裏返し、更に180°回し、それぞれ出ている所をチェックし、削る。
新たに外形を紙に写す・・・前回と同じように、出ている所を削る。
もう一度別のところに、外形を写し、出ている所を削る。
*大体合ってきたところで、外側の線の形を見直す。
2001.12.15(土)
外形を紙に写す。
アクリル板を180°回し、出ている所をアクリルカッターの背で削る。
裏返し、更に180°回し、それぞれ出ている所をチェックし、削る。
新たに外形を紙に写す・・・前回と同じように、出ている所を削る。
*これで良いだろうと思っても、後で確かめると、狂っていることがある。
2001.12.16(日)
まず外形を紙に写してかかる・・・回すと、角付近が少し違うところがある。
削り、裏返して、違うところを少々直す。
3mm幅の側面を#360ペーパーで研ぎ、滑らかにしながら、曲線の曲がり具合を見る。
*裏返すと中心線が狂う理由が、側面が斜めになっている所為だと気付く・・・いつも注意しているはずなのに、、、
鑢で、平面に対して垂直になるように気をつけながら、目測で曲線を作っていく。
もう一度、外形を紙に写し、角付近のところを少し直す・・・完成とする。蓋の側面を作る引き箆を作ることになる。
薄い板に、12/9に描いた図を参考にしながら、新たな線を鉛筆で描いてみる。
少し時間を置いて、一部、金尺で垂直の出入りをチェックしながら、線を直す。
糸鋸で切れるところまで切る・・・背が引っかかり7、8cmぐらいまでしか切れない。
残りは丸鑿や彫刻刀で削る・・・#80ペーパーで線をきれいにする。
裏側を斜めに削る・・・完成とする。
2001.12.17(月)
粘土で原型を作るとして、石膏を使わないから、アクリル板は外してしまうことになる。
すると、高さがアクリル板の厚みの3mmだけ低くなってしまう。
そう考えて、引き箆を当ててみると、予定した形にならないことに気付く。
3mm分、予定していた形が消えてしまう。
厚さ3mmの板を引き箆に貼り付けることにした・・・これで解決。発泡スチロールに麻紐を巻きつける・・・離型の為の準備。
2001.12.18(火)
上のほうに板を二枚積み上げる・・・粘土の節約と型を壊しやすくするため。
水粘土を中型に付け始める。
2001.12.19(水)
一面ずつ、外脇を粘土で作っていく。
*石膏で型を取らないとすれば、粘土で完璧な型を作らなければならないことになる。できる?
*厚さ3mmの板が取れてしまったので、ボンドで付け直す。
*濡らしたタオルを掛けて置く。
*昨日ボンドで付け直した位置が少しずれていたので、引き箆の端付近の張りを強くした(引き箆を削る)。
外脇の形を作りながら、甲にも粘土を盛り、甲の形も作っていく。
*甲盛となるべきなのに、中央が低く見えた・・・測って見ると、確かに1mmほど低い。
⇒#80で空研ぎして、形を直す・・・刃物に近付くように、裏の斜めを鋭くする。
大体の形ができた。濡らしたタオルを掛けておく。
*12/17に巻いた麻縄の取り出し口を甲側にしていたが、そこに布を貼ると引っ張ることができない!
引き箆を引いて、粘土原型がアクリル板(定規)に沿って形作られるように、細部の仕上げをする。
*力を入れ過ぎると、アクリル板から粘土がずれたりした。
*二枚貼りに失敗するかもしれないので、石膏で形を取っておく事にした。
この粘土は硬化してしまうから、捨てざるをえないし、、、
錫金貝を甲から外脇の断面の形に切って、三つ割にする準備をする。
ゆるめの石膏をかけ、錫金貝を刺して、三つに分割できるようにする。
スタッフを石膏で貼る。
ゆるめの石膏を手で掛けていく。
2001.12.22(土)
(朝)石膏を三つ割しようと、揺すってみたが、うまくいかない。
錫金貝で切り分けようとする境が、拡がった石膏でくっついているので、叩く。
⇒粘土と接する部分まで壊れてしまう⇒石膏を作り直す(麻布を補強に貼る)。
(昼)金箆で、切り分けられないところを切り分け、三つ割にしようとしたが、粘土とくっついてしまっている。
粘土原型が壊れてしまい、石膏原型も壊れてしまうという、思いもしないことになった。
粘土をはがし、元に戻す。石膏の方は、ボンドでつけてみる。
(夕)割れが走った石膏原型は、直っていなかったので、石膏で接着する。
(夜)石膏原型の、内側にはみ出た石膏を削り取る。
粘土原型を作り直す。
参照:石膏原型の作り方のページ(スタッフではなく、金属線を使うべき)・・・最初の石膏雌型取りのとき。
2001.12.24(月)
室温で乾かしていたが、粘土のひび割れがひどい・・・多少は仕方がない、、、?
麻布を粘土にかぶせ、少し大きめに切る。
布の上から、乾漆刷毛で糊漆を渡す・・・箆で渡すと、布目のところどころに糊漆が入っていなかった。
*粘土原型に糊漆を渡してから、布をかぶせ、また糊漆をかけると、たぶん布と粘土がくっついてしまうだろう。
側面の角で布が重なるように切って、側面を順に貼っていく。
塵居や曲面に、うまく布が馴染んでいかないが、この布は柔らかいとはいえ、伸び縮みしにくいので仕方がない。
*角で布を切りすぎ、隙間が出来たところもある・・・小さい布を貼り足しておく。
石膏原型はズレていて、うまく合わせることが出来なので、石膏で接着した・・・使い物にならないかもしれない。
2001.12.25(火)
*湿った感じ。
*石膏原型は狂っているし、止めることにする。欲張って失敗したといえる。
*身は、蓋の様子を見て、どう作業を進めるか考えることにする。
2001.12.26(水)
端からはみ出ている布を切る。
布の重なり部分は、重なりを取るというより、布の断面を斜めに落とし、段を取る。
全体を軽く空研ぎする・・・かなり凸凹している。
*石膏で型を取り、がたがたになった粘土原型を無理にくっ付けて直した所為だろう。
*乾きが悪いので、ファンヒーターで温度、加湿シートで湿度を与える。
*どれぐらいすれば乾くのかは、予想がつかない・・・何せ布が厚いので。
2001.12.27(木)
*乾きが悪いので、ファンヒーターで温度、加湿シートで湿度を与える。
*こういう仕事は、梅雨時にすれば一番良いのだろうが、その頃は別の仕事で忙しい。身をどのくらいの大きさにするかを、図をもとにして考えた。
粘土原型の、蓋の塵居部分に、身の端が来るとして、後、身の端幅を考慮に入れれば、アクリル平面定規(蓋の平面図)より14ミリ内に身の粘土原型(の端部分)を作ればよいはずである。
引き箆用の板に、身の側面の線を書いて、感じを見た。
2001.12.28(金)
リグロインで薄めた生漆を吸わせる。
*糊漆の乾きが十分でないと、失敗の可能性があるが、、、
2001.12.29(土)
*蓋の生漆は乾いていた・・・湿りを強くしすぎたのか、濡れている部分があった。
身用の引き箆を木で作る・・・糸鋸で切り、空研ぎで線を決め、裏刃を斜めにおとす。
垂直になるように板を、木の粉を混ぜたボンドで貼る・・・14mmアクリル板の内に粘土原型ができる位置に貼る。
2001.12.30(日)
蓋を空研ぎする。粘土原型から浮いているところがかなり目立つ。
少し、布目が気になるので、刻苧で布目摺り。
端付近、甲の角付近など、浮いているところを紐で巻いて押さえる・・・効果は?身の粘土原型を作り始める。
芯に、木片に麻紐を何回か巻き重ねたものをおき、水粘土をつけていく。
*今まで出していた粘土では足りなくなったので、未使用のを取り出すと、硬くなっている。
水分を与えてもあまり効果はなく、結局、粘土を削る道具で少しずつ削り、水分を与えておく。
*粘土と麻布をどう切り放すのか、ここのところがハッキリしない。
いまだに麻布二枚で本当に大丈夫なのか、という不安が付きまとう。
2001.12.31(月)
蓋の乾きは悪い。別のところも浮いている。作り直しになるか?
麻布の粘土側となる面に、薄めた生漆を染み込ませておけば、離型のとき、粘土に水分を与えることができるが、、、
粘土に最初からキチンと布を貼ってしまうと、離型に失敗するのは、目に見えている。
和紙を、僅かに糊を混ぜた水で貼って、離型に使うしかないのだろうか?
*水だけで和紙を貼った時、乾いたら剥がれてきたことがある。